資生堂サイトの「ワタシプラス」、3カ月でクラウドを“プラス”した理由

200万人超の会員と1700万超のLINE公式アカウント友だちに向けたサービスの安定性向上を目的に、ハイブリッドクラウド構成へ移行した。

» 2015年04月28日 15時46分 公開
[ITmedia]
資生堂が運用する「ワタシプラス」

 資生堂が2012年から運営する美容サイト「ワタシプラス」が2015年3月にハイブリッドクラウドへ移行した。2014年11月現在で会員が200万人、LINE公式アカウント友だちが1700万人を突破し、サービス提供の安定性向上が課題になったという。ハイブリッドクラウド化は3カ月で実現している。

 「ワタシプラス」は、ソーシャルメディアも活用する同社のデジタルマーケティングにとって重要なサービス。電子商取引(EC)や店舗検索、顧客からの化粧品や美容に関する質問や悩みに「ビューティーコンサルタント」が答えるWebカウンセリングなどの機能を提供してきた。

 同社では「ワタシプラス」を自社設備で運用してきたが、利用者の増加やキャンペーン時における急激なアクセス増への対応が課題だった。特に、LINEを利用したキャンペーンでは人気の企画ほどアクセスの変動が大きく、ITインフラのリソース不足やサービスの不安定な状態が誘発されやすくなっていたという。自社設備を増強しても対応が間に合わず、ITインフラの増強を野村総合研究所(NRI)と検討してきた。

 同社は既存の運用体制をなるべく変更せずにリソースを増強できる方法を希望し、NRIはAmazon Web Services(AWS)を利用したハイブリッドクラウドを提案。既存の自社環境をバックエンド側として、フロントエンド側にAWSの環境を構成するようにした。2カ月の検証で可用性や性能などを評価し、約3カ月でアプリケーションの移植やテストを含む構築作業を完了した。

新たに構築したハイブリッドクラウドの構成イメージ(AWSより)

 新たな環境は従来の10倍以上のアクセスを処理でき、トータルレスポンスが1秒近く改善された。Webアプリケーションファイアウォール機能やセキュリティ診断テストなども活用して安全性の確保にも努めている。AWSのデータセンターを利用することで可用性や、災害時の事業継続性も高めた。

 導入効果ではサーバ機器やデータセンターのスペースといったインフラ調達などに要する期間が想定(自社調達)より3カ月以上短く、初期コストの軽減につながった。アクセスの変化に応じたリソースの増減作業も、自社環境より容易で短時間に行え、運用の効率化やサービス水準の向上に貢献しているという。

 資生堂ではバックエンド側システムもAWS環境に移行するか検討していくとしている。

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