単に人が集まっただけの状態では単なる“グループ”であり、チームとは言えません。人が集まって、チームとしてパフォーマンスを上げるまでには段階があると言われています。心理学者のタックマンが提唱した「タックマンモデル」では、人が集まってからチームとして期待通りの行動をするプロセスを5段階で示しています。
リーダーとしては、チームを「Performing」にするのが理想です。そうなるには、ただ時間を重ねればよいわけではありません。リーダーの仕事は、現時点でのチームの状況を見極め、チームを「Performing」へと導くことにあるのです。
先に挙げた例は、いざこざや対立まで進んでいないので、1段階目の「Forming」にいると言えるでしょう。一見、一体感があるように見えますが、意見を戦わせないため、目標に対してより良いものを生み出そうというマインドが共有されていません。成果を出すためには、チームのメンバーに対して何らかの働きかけをして、2段階目の「Storming」に進ませる必要があります。
方法としては「チームの方向性を示すこと」や「メンバー間を知り合わせる場を設けること」が挙げられます。改めてキックオフミーティング(プロジェクトやチームの目指すところを宣言し、共有するためのミーティング)を行うのも効果的でしょう。
オススメの方法は、メンバー間を知り合わせる時間を取ることです。通りいっぺんの自己紹介ではなく、メンバー間で積極的にコミュニケーションができるような工夫をしましょう。キックオフミーティング中に短時間で簡単に交流できるワークなどが効果的です。ワークショップの前座で行うアイスブレークをイメージしてください。
口という漢字に2画追加すると、漢字ができます(例:田、叶など)。全部で26種類あるため、2チームに分かれて2分程度で漢字を書き出す。チーム対抗で漢字を出していって、多いチームが勝ち。「1人だとせいぜい5個程度しかでないが、チームになるとこれだけ多くの数が出る」というように、チーム活動と関連付けて締めるとおさまりがよいです。
このように、短い時間で共通の目的を達成して、笑い合えるものがオススメです(参考記事:ページ下部の「マシュマロチャレンジ」や「タワービルディング」もその一例です)。会話が盛り上がれば、そのままランチや飲み会へと展開するのもよいでしょう。
チームの方向性が共有され、メンバーの人となりが分かって初めて、第2段階の「Storming」へと移ることができます。同じ目標に向かって進む体制になることで、初めて「チームになった」と言えるのです。リーダーとしてはメンバー間の葛藤を処理する難しさは出てきますが、成果を出すためには必要なプロセスだと思って歓迎し、次の段階へと進めましょう。
それでは、メンバー間の葛藤が起きたときにリーダーはどうすればいいのか。これについては、次回で触れていきますのでお楽しみに。
Q:チームメンバーの仲は良いのですが、何だか成果が上がりません。
A:仲が良いように見えるのは、単に遠慮し合っているだけかもしれません。目標に向かってお互いが意見を言い合えるように、メンバー間の知り合わせる時間を取りましょう。いざこざや対立などが発生する可能性もありますが、それも成果を出すには必要なプロセスです。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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