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» 2015年05月22日 08時00分 公開

情報共有で医療が変わる、“1患者1カルテ”を目指す静岡県の挑戦 (2/3)

[池田憲弘,ITmedia]

医療現場にITシステムが浸透するためには?

 「国が推進していることもあり、包括的な地域医療ネットワークを始めるケースが増えています。しかし、その多くはシステムを使いこなせていないのが現状です」と森氏は語る。実際、ふじのくにねっとも導入当初は利用者が増えずに苦戦したという。

 「危機意識が低い人たちに必要性を理解してもらうことも大変でしたが、医師が導入したいと思っても、運用を行う事務方が及び腰になってしまうことや、費用を負担する事務方や県に導入効果をどう説明するかといったことも障壁になっていました」(森氏)

 そこで導入から約1年が経った2012年9月、ふじのくにねっとのシステムを構築した富士通と協力し、理想像や課題の可視化、業務効率化といった改善活動を始めた。手始めにアンケートを行うと、サービス自体の認知度や、基本機能(メールやメモなど)の認知度が低いことが分かった。「参加者の満足度は高いことから、効果の整理や普及が必要だと気付きました。多くの施設が漫然とした期待を抱いているものの、効果を実感できていなかったわけです」と森氏は振り返る。

 その後、システム全体の運用を見直すことで、普及活動への作業時間を確保。システム利用のメリットを体系化し、診療所に向けて、参照可能な情報や利用可能な機能、事例などをまとめた「地域医療連携ニュース」を作成した。こうした利用推進活動を繰り返すことで、2012年9月時点では4000人程度だった患者の参加者は、2014年9月には1万5000人弱まで増えた。

photo 最初に「ふじのくにねっと」における課題を整理した
photo 利用価値をアピールするため、メリットを体系化してまとめた

情報共有が進むと医療はどう変わる?

 利用者が増えるとともに、大病院と地域の診療所、薬局との連携も進んでいった。患者の情報を両社で共有することで、診療所でも治療計画や病状について再度、患者に詳細な説明ができるようになった。特に大病院を退院後に各地の診療所で通院するといったケースに有効だったという。

 「病院で一度説明されただけでは、聞き逃してしまったり、状況を把握しきれなかったりと十分な理解が得られなかったという患者さんも多いため、診療所で再び確認するというステップは意外と大事なのです。患者さんの家族を含めて安心感や信頼感が向上し、満足度が向上しました。診療所の先生としても、病院の最新の医療に触れることでスキルアップにつながっているようです」(森氏)

 現在、森氏と富士通が手掛けているのは、病院同士の情報共有によるワークフローの改善だ。救急患者を例にとると、迅速に一時的な処置を行う病院、その後に専門的な治療を行う大病院、入院治療が終了した後にリハビリを行う施設と3つの施設を動くことになる。そこで、患者の情報を1カ所に集めて随時アップデートしていくことで、スムーズな転院や早期治療を実現するというものだ。

 「病床の利用率や回転率を上げることができ、病院間で連携したトータルなリハビリ計画を立てることもできます。今は脳卒中の患者を想定したプロセス改善に取り組んでいるところです」(森氏)

photo 病院同士が情報共有で連携することで、救急医療がスムーズに行えるようになる。現在はIT活用を前提としたプロセスを組み、検証しているところだ

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