「ビッグデータを効果的に分析できるようにして、お客様の“ネクストベストアクション”に生かしていただけるようにしたい」
与那嶺氏はこの話でまず、IBMが2015年4月に発表した「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)事業に今後4年間で30億ドルを投資する」ことを強調。さらに、ソーシャルデータの活用に向けたTwitterやFacebookとの提携、企業向けデータ分析サービス「Watson Analytics」の展開、ビッグデータ分析を支えるインフラとしてメインフレームが見直されてきていること(2015年1月に新製品「IBM z13」を発表)などを挙げ、IBMがビッグデータ活用に向けた取り組みにいかに注力しているかを訴えた。
その目的として同氏は、「お客様のネクストベストアクションに生かして……」と繰り返し強調していた。ベタな表現ではあるが、繰り返し聞いているうちに、同氏の力説する表情とともに今も印象強く記憶に残っている。
「これからはCAMSSのテクノロジーを産業分野ごとのソリューションに、投資効果が分かるようにして組み込んでいくことが求められる」
与那嶺氏は講演の最後にこう語りながら、11業種を挙げていくつかの活用事例を紹介した。例えば、小売業では「POSによる商品や売り上げのデータだけでなく、ネット販売やポイントカード、ソーシャルなどの情報を一元管理して効果的に分析することにより、売り上げを拡大するためにはどうすればよいかが見えてくる」と説明した。
ただ、同氏はいくつかの事例を説明した後に、「私たちがこれから応えていかなければならないのは、産業分野ごとのそれぞれのお客様に、CAMSSのテクノロジーを活用するにあたって、どれだけの投資をすれば、どれほどの効果が得られるかを分かりやすく説明することだ。そのためにも産業別ソリューションにCAMSSのテクノロジーを一層落とし込んで、お客様に納得してご採用いただけるように尽力していきたい」と語った。
顧客向けのイベントや記者会見で、投資効果に言及するITベンダーの経営トップは意外に少ない。顧客視点に立った会計士らしい発言ともいえよう。
このように、講演では与那嶺氏独特の経営感覚を垣間見ることができたが、長らく低迷し続けていた日本IBMの業績を、強力なリーダーシップで回復させたマーティン・イェッター前社長の存在感に比べると、その空気を醸し出すのはまだまだこれからという印象だ。同社の関係者によると、昨年(2014年)11月にイェッター氏が米国本社の上級副社長に就任することが決まってから、米国本社のジニー・ロメッティCEOに自分を日本IBM社長に選ぶよう直訴したという与那嶺氏。やる気満々の同氏が日本IBMの成長路線を維持・拡大できるか、注目しておきたい。
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