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» 2019年02月08日 07時00分 公開

CIOへの道【フジテックCIO 友岡氏×クックパッド情シス部長 中野氏スペシャル対談】:“企業の死”につながる「意思決定の遅れ」、改善のカギはIT部門が握っている? (1/3)

目の前の課題を叩き続けた結果、本質的ではないシステムを構築してしまって業務の複雑化が進んでしまった――。こうした課題と無縁のIT部門を作るにはどうしたらいいのか。

[後藤祥子,ITmedia]

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この対談は

クラウド、モバイル、IoT、AIなどの目覚ましい進化によって、今やビジネスは「ITなしには成り立たない」世界へと変わりつつあります。こうした時代には、「経営上の課題をITでどう解決するか」が分かるリーダーの存在が不可欠ですが、ITとビジネスの両方を熟知し、リーダーシップを発揮できる人材はまだ少ないのが現状です。

今、ITとビジネスをつなぐ役割を果たし、成功しているリーダーは、どんなキャリアをたどったのか、どのような心構えで職務を遂行しているのか、どんなことを信条として生きてきたのか――。この連載では、CIO(最高情報責任者)を目指す情報システム部長と識者の対談を通じて、ITとビジネスをつなぐリーダーになるための道を探ります。


フジテック 常務執行役員 情報システム部長 友岡賢二氏プロフィール

1989年松下電器産業(現パナソニック)入社。独英米に計12年間駐在。ファーストリテイリング業務情報システム部の部長を経て、2014年フジテックに入社。一貫して日本企業のグローバル化を支えるIT構築に従事。


クックパッド コーポレートエンジニアリング部 部長 兼 AnityA 代表取締役 中野仁氏プロフィール

国内・外資ベンダーのエンジニアを経て事業会社の情報システム部門へ転職。メーカー、Webサービス企業でシステム部門の立ち上げやシステム刷新に関わる。2015年から海外を含む基幹システムを刷新する「5並列プロジェクト」を率い、1年半でシステム基盤を構築し直すプロジェクトを敢行した。2018年、AnityAを立ち上げ代表取締役に就任。システム企画、導入についてのコンサルティングを中心に活動している。システムに限らない企業の本質的な変化を実現することが信条。


 「日本にCIOという職業を確立させる、それが私のミッション」――。その言葉通り、日本全国津々浦々の“お座敷”で講演を行い、CIOの必要性を説いているのがフジテックのCIO、友岡賢二氏だ。CIOが果たすべき役割とは何か、選ばれるためにはどんな経験や考え方が必要なのか――。

 前回のテーマ「グローバルで勝つためのデータ活用」に続いて、今回は「意思決定のスピードを上げる方法」というテーマで話が進んだ。

フジテック CIOの友岡賢二氏(画像=右)とクックパッド情シス部長の中野仁氏(画像=左)

「意思決定の遅れ」が“企業の死”につながる時代に

中野氏 私は4年前にメーカーからWebサービスの世界に移ってきたのですが、一番驚いたのが、あらゆる面で「スピードが違う」ことだったんですね。トライアンドエラーのスピードも、サービス展開までのスピードも全然違う。

 もちろんスピードが速いことと、その方向性が正しいかどうかは別なのですが……。あさっての方向に爆走したり、施策の手数だけ多くて散らかし放題、というオチになったりもする。でも、Webサービスは「物事を決めて動かすまでのリードタイム」がとにかく速い。メーカーと比べると体感で3分の1くらいですかね。

 「Webサービスがこのスピードで動けるのは、どうしてなのか」と考えたんですよ。大きな理由の一つは、「モノの生産や物流がない」からだろうと。生産や物流があると、戦略を立てて計画して、その通りにきちんと動かしていかないと、製品をリリースできなかったり、事故が起こったりします。モノを扱い、動かすのは本当に大変なことです。

 一方、Webサービスは、失敗や軽い事故は“前提”として考える面がある。その情報を元にPDCAを回してサービスの質を上げ、いかに素早くマーケットを占有するかが戦略的にとても重要です。そんなWebサービスの世界で戦っていくことになった今、意思決定のスピードを上げるためのシステムや組織体をどう作っていけばいいのかを日々、考えています。

友岡氏 フジテックは、エレベーター、エスカレーターの製造、販売、保守を手掛けています。特徴は製品ライフサイクルが長く、一度設置すると保守を続けながら20年ぐらい使うような製品です。新製品も、今まで世の中に全くなかったような製品を毎年リリースする、といったようなスタイルでなく、細かな改善を重ねながら数年のサイクルで新機種をリリースしています。

Photo フジテックのキャッチフレーズ「セカエレ」

 同じ製造業でも、前職のファーストリテイリングはファッション業界だから、製品のライフサイクルがとても速いんです。春夏、秋冬といったシーズンごとに変わるトレンド。「2週間で商品を出して売り切る」ことさえあるアパレルの世界は、スピードが問われる部分が大きいですね。

 そう考えると、やっぱり製品のライフサイクルによって企業のスピード感は異なり、意思決定のサイクルもそこに大きく依存するんだと思うんですよね。

中野氏 メーカーの場合は、企画し、製造して販売する――というサイクルが明確です。まず計画があり、スケジュールの中でそれぞれの部門が動いていく。Webサービスの世界では、もはや、「さまざまなプロセスが同時に進むのが当たり前になっている」ところがあって、明確に分けられないんですよね。ミクロレベルの工程はあるのだけど、あちこちで並列に動く感じ。ウオーターフォールとアジャイルのような違いがある。

友岡氏 Webサービスは、「開発途中のものを公開して、市場の反応を見る」ことができますよね。リアルなものづくりだと、そこがなかなか難しい。

中野氏 確かにWebサービスは、開発途上のプロダクトをβ版としてお客さんに出すようなことが、普通にできるんですよね。

Photo フジテック CIOの友岡賢二氏

友岡氏 だから市場とのコミュニケーションをすごく密にできる。そのへんのありようは製造業とは全然違いますね。

 しかもWebサービスは、1人のひらめきによって、わずか数人のチームで数日でサービスができてしまって、なおかつ、それがたちどころに世界中に受け入れられて、あっという間にスケールする。ネット型ビジネスの最大の魅力は、やはりそこですよね。ものづくりでは、なかなかスケールできないです。

 それが面白さであり難しさでもある。結局、失敗するリスクがあるようなときには、メーカーってやっぱり、失敗はできないんですよね。だから「石橋をたたいて渡るような」動きにならざるを得ない。

 どれだけ早く、失敗も含めて商品を出せるか――というところですよね。そこのプロセスをいかに早く回せるかが重要で、「そのために必要な情報って何だろうか」と、いつも考えています。必要な情報は業態によって異なるわけですが、それぞれのビジネスの形態に合ったBIの在り方ってどういうことなんだろうかと。

 BIの議論は結局、情報とその活用を巡る議論なので、どういった情報をどのタイミングで誰に届けるのかっていうことをデザインすることになる。それはやっぱり現場の商売を観察しながら、現場の人が気にしていない情報についても、「本当はこのタイミングでこの情報を気にしなくちゃいけないよね」というふうに、プロセス全体を俯瞰してデザインしてあげないと、なかなかうまくいかないと思いますね。

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