AWSジャパンの2020年のパートナー戦略で2つ目のインダストリーは、2019年に引き続き「金融」「製造」「公共」の3分野に注力する。ここでは金融分野の話を取り上げる。
日本の金融機関でのAWS活用は、図5のようにここ数年で広がってきている。こうした動きについて渡邉氏は「金融分野への浸透は、特に長年にわたってお客さまと苦楽を共にされてきたパートナーの皆さまにAWSを認めていただいた証しだと受け止めている」と語った。
さらに金融分野ではAI(人工知能)やデータアナリティクス、ブロックチェーンといった最新技術のユースケースが広がってきていることから、この分野でのDXにも一層注力していく構えだ。
3つ目のクラウドエンジニア育成では、AWS認定取得数が2017年から2019年にかけて3.9倍に増加した。ただ、渡邉氏は「今の需要に対応するには、まだまだ足りない」という。同氏がさらに危惧するのは、今後のDXの進展に向けて一段と深刻になりそうなアプリケーションエンジニアの不足だ。「DXにおいてビジネスモデル変革のカギを握るのはアプリケーションだ。そのエンジニアが不足するとDXは進まない。この問題を、パートナーとともに解消できるように努めたい」と同氏は厳しい表情で語った。
4つ目のクラウドコミュニティーの強化について渡邉氏は次のように語った。
「クラウドビジネスにおけるパートナー関係は、単に販売を目的にしているのではない。多くのテクノロジーパートナーがテクノロジーをAWSに載せ、多くのインテグレーターがそれらを組み合わせてお客さまへ提供することで、より深いコミュニティーが形成されていく。AWSはそうしたコミュニティー作りに引き続き、必要な投資をしていく」(渡邉氏)
ちなみに、図6が分野別の主要なテクノロジーパートナーの一覧である。
また、クラウドコミュニティーでは「SaaS on AWS」にも注力していく。AWS自体はSaaSを手掛けないが、AWS上でのSaaSベンダーによるソリューションの展開はどんどん広げていきたい考えだ。この動きは、今後のAWSの勢いにつながる重要なポイントになりそうだ。
5つ目の地域でのパートナー活躍の拡大については、先述したように現在38都道府県までカバーしている。残りは秋田、岩手、福井、山梨、奈良、鳥取、長崎、熊本、宮崎の9県。これまでも各地域で実施してきた各種イベントやセミナーを一段と拡充して、近いうちに全国をカバーしたい考えだという。
これまでAWSジャパンの2020年のパートナー戦略のポイントを記してきたが、それを通して同社のクラウドビジネスの深化ぶりをうかがい知れたのではないだろうか。クラウドサービス市場で先行するAWSのビジネスの深化が、競合ベンダーのビジネスにも刺激を与え、市場全体として活性化することになる。こうした動きはユーザーにとって大いにメリットのあることだ。その意味でもAWSの新たな動きには引き続き、注目していきたい。
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