データドリブン経営基盤の構築、アルペングループが語る「内製化を失敗させない」3つのポイントの意味

EC市場の拡大やD2Cビジネスに代表される取引先メーカー自身の独自販売チャネル開発が盛り上がる中、IT資源にも相応の投資をしてきたリテール企業はどんなDXを進めるべきだろうか。1000万SKU、500万顧客の情報を抱え、レガシーシステムと「Excel集計」業務からの脱却に挑むアルペングループが今本気で向き合うDXの状況を聞いた。

» 2021年04月08日 13時00分 公開
[指田昌夫ITmedia]

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 DXの本質は、デジタルによって事業環境の変化への対応力を高め、迅速な経営を実現することだ。そのためにはシステム開発体制にも迅速さが求められる。スポーツ用品店チェーンのアルペンは、システムの自社開発を前提に大胆な内製化に踏み出している。ITmedia主催のオンラインイベント「ITmedia DX Summit Vol.7」に、同社戦略企画本部 情報システム部長の蒲山雅文氏が登壇した。レガシーシステムや「Excel集計」業務からの脱却に挑むアルペングループが今本気で向き合うDXの状況を聞いた。

ECの拡大、D2Cを狙うメーカーと関係性の変化……小売り業界の変化に挑む

アルペン 戦略企画本部 情報システム部長 蒲山雅文氏

 アルペンは1972年に愛知県名古屋市でスキー用品店として創業した。2022年で創業50年を迎える。スポーツ用品チェーンの「アルペン」「スポーツデポ」、ゴルフ用品の「GOLF5」などを運営し、コロナ禍でも業績は順調に推移する。昨今はアウトドア専門の業態やプライベートブランド衣料にも力を入れる。また、楽天の提携などの施策が奏功しEC業態も年150%の成長を続けるなど、デジタル分野にも積極的に取り組む。

 蒲山氏が率いる情報システム部は、同社で経営戦略、ECを統括する専務の下、システム構築や運用に加えてDX領域の構想から開発・運用までを一手に担う。従来、店舗運営が中心だった同社の人事モデルは「20代で店舗を経験して本社に異動する人事が一般的で、新卒採用から長い期間をかけてITの専門性を培ってきた従業員は存在しない」という。実際に、蒲山氏自身はIT企業の出身だが、情報システム部に在籍する13人の部員のほとんどは店舗を経験して本社勤務となった従業員だ。

 店舗中心の事業運営の状況に変化が見られるようになったのはこの数年のことだ。数年前のECの台頭が「コロナ禍の影響で、すさまじい勢いで加速している」と蒲山氏は語る。

 「少子高齢化も相まって市場が大きく変化している。ポートフォリオを見直すか、新たな市場に乗り出すかの選択を迫られている。物流費、人件費は年々増加傾向にあり、自動化、効率化を続けていかなければいけない」

 ECの台頭により顧客の購買行動も日々変化している。マーケティングもそれに対応して複雑化し、データ分析の高度化も求められている。さらに用品や衣料品のメーカーはD2C(Direct to Consumer)に動き出していることから、卸し先の選定を進める状況にある。メーカーから選ばれる卸し先になるには、相応の努力とパートナーシップ強化に努める必要もうある。

 「当社に限らず小売業にとってのITないしデジタルは、従来の『事業を支える存在』から『事業の成否を決める要素』そのものに位置付けが変わった。それに合わせて情報システム部門にかかるプレッシャーは、この1年で非常に大きくなった」と蒲山氏は語る。

今回は大きく触れないが同社もこの1年ほどの間に、フロント側もバックエンド側もさまざまな施策を打ち出している。これらの施策を支える基盤作りが蒲山氏らのミッションだ

巨大データを扱うレガシーシステムが全ての中心にいる

 現在同社が取り組むデジタル施策の中心は、自社が保有するデータ利用、分析の強化だ。

 同社がデータ活用の取り組みを進める背景には、他の小売業と同様に、ECの台頭による実店舗の売り上げ減少がある。同社の場合も全国400店舗で1000万のSKU(個別商品)を常時取り扱う。売り上げ明細は年間1億枚にも達する。「このボリュームをパッケージ製品で回そうとしても厳しい。そのため高速で安定性のある専用システム、いわゆるレガシーに頼らざるを得ない状況が続いている」(蒲山氏)

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