
勤務時間や休暇の管理を効率化したいけれど、システム導入にかける予算は限られています。そんなときに選択肢として検討されるのが「自作する」方法です。「安価」にできそうですが、どんな方法で実現できるのでしょうか。また、それで本当に大丈夫なのでしょうか。
この記事では、Excelやノーコードツールなどを使った勤怠管理システムの自作方法を解説しつつ、自作システムで気をつけるべき落とし穴と課題、クラウド型システムとの比較も交えて、中小企業にとって現実的な選択肢をわかりやすくご紹介します。
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目次
結論:勤怠管理システムの自作は可能 ただし……
勤怠管理システムを自社で作ることは、決して不可能なことではありません。まずはExcelやGoogleスプレッドシートを活用する方法があります。関数やマクロを組み合わせるだけで、出退勤時刻の記録や労働時間の自動計算といった基本機能を備えられます。
さらに、近年はノーコード開発ツールなど用いて、プログラミング知識がなくても簡易的な社内システムを作ることも可能になっています。こうした手法は、市販システムの初期費用や月額利用料を抑えたい場合に有効で、社内に一定のITスキルを持つ担当者がいれば導入コストを大きく削減できます。
ただし自作には課題も伴います。システム開発後もバグ修正や機能追加、法令改正への対応など、継続的な保守運用が欠かせません。また、複数の管理者で運用できる体制や、システム知識を持った人材の確保も求められるため、経費削減の一方で担当者の負担増加につながりやすい点は注意が必要です。
勤怠管理システムに必要な基本機能
勤怠管理システムを導入あるいは自作する際には、法令遵守と業務効率化の両面から次の機能が不可欠です。
- 出退勤の打刻機能
- 休憩・残業・休暇の管理機能
- 勤怠データの集計・出力機能(CSV対応など)
- 打刻ミスなどのエラーチェック機能
- 承認・修正のワークフロー機能
出退勤時刻を正確に記録する打刻機能は根幹です。ICカードやスマホ、指紋・顔認証など多様な手段に対応しているとよいでしょう。休憩時間や残業、深夜労働、休日出勤といった各種労働時間を自動集計し、有給休暇や特別休暇の残日数まで管理できる機能も必須です。
さらに、集計結果をCSV形式などで出力し、給与計算システムや人事システムと連携する仕組みがあると、データ一元管理が可能になります。
打刻漏れや二重打刻などの異常値を検出し、本人や管理者にアラートを送る機能も、ミス防止やコンプライアンス維持の観点から重要です。
また、打刻修正や残業・休暇申請をシステム上で上長が承認できるワークフローがあると、紙のやり取りが不要になり、業務効率も向上します。
勤怠管理システムの自作方法と手順
次に、自作を進める際の具体的なステップをご紹介します。

1. 自社の勤務形態を整理する
まずは自社の働き方を洗い出します。正社員の固定時間勤務や時差勤務、フレックス制の利用者、裁量労働制の専門職、パートタイマーやアルバイトといった雇用形態を含め、すべての勤務形態をリスト化しましょう。シフト勤務の場合は月単位か週単位か、夜勤や早番・遅番のパターンも確認し、ルールを明確にします。
さらにリモートワークや出張を伴う勤務については、休憩の扱いや移動時間のカウント方法などを決めておくことも大切です。休日や有給、代休、慶弔休暇などの付与条件や残日数管理方法も整理し、就業規則と照合したうえで曖昧な点がないようにしましょう。
2. ExcelやGoogleスプレッドシートで管理シート、入力シートを作成する
整理した勤務形態をもとに、シートを設計します。出退勤時刻と休憩時間を入力すれば、SUM関数やIF関数、TIME関数を駆使して実労働時間や法定内外残業、深夜労働時間を自動算出できます。TEXT関数や条件付き書式で曜日や祝日を自動表示させることで、視覚的にも分かりやすい表が完成します。
マクロ(VBAやGoogle Apps Script)を組むと、残業時間が一定時間を超えた際にポップアップでアラートを出すなど、管理者のチェックを補助する仕組みも実装可能です。手入力やマクロ編集のミス、ファイル破損リスクを常に念頭に置き、定期的なバックアップや権限管理を徹底しましょう。
3. ノーコードツールで自作する
より本格的なインタフェースやデータ管理を導入したい場合は、ノーコード開発ツールを併用する手段もあります。多くのツールでは、フォーム作成からデータベース設計・登録、条件付き集計、CSV出力などまでの機能をドラッグ&ドロップ程度の容易な操作感で設計できます。レイアウトの変更や項目追加も管理画面から簡単に行え、複数人によるリアルタイム編集にも対応できるでしょう。
その一方で、ノーコードツールだけでは複雑な計算ロジックや独自の要件までを含めて、すべてをカバーするのは難しいシーンがあることも大いに予想されます。場合によってはプラグインやローコード開発、あるいは技術部門やプログラマーへ依頼するスクラッチ開発による補完が必要となります。初期設定ではデータベース項目設計やユーザー権限設計に時間を要するため、慎重な準備を心がけましょう。
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4. セキュリティ対策も忘れずに
勤怠データは個人情報を含みます。アクセス制限とログ管理を徹底しましょう。
例えば、一般従業員は自分のデータのみ閲覧・申請できるよう制限し、部門長や人事担当者には適切な閲覧・承認権限を与えます。ファイル単位のパスワード設定だけでなく、多要素認証や定期的なパスワード変更、暗号化なども検討しましょう。バックアップ運用と復旧手順もマニュアル化し、万が一のデータ損失に備えます。
そして、「誰が」「いつ」「何を変更したか」が分かる監査ログ機能を用意することで、不正や改ざんを抑止し、事後追跡を可能にします。
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自作勤怠管理システムの課題と注意点
自作にはメリットがある一方で、運用を長期的に続けるうえで次のような課題が生じやすいことも理解しておきましょう。
- 法改正への対応が都度必須
- 運用・メンテナンスが属人化しやすい
- 不正や改ざんのリスクがある
法改正への対応が都度必須
労働基準法をはじめとする関連法令は頻繁に改正されます。企業として、残業時間上限規制の導入、有給休暇取得義務化、割増賃金率変更など、システムの計算ロジックやアラート閾値を法令に合わせて修正し続けなければなりません。厚生労働省の発表や専門家の解説を定期的に確認し、就業規則改定とシステム反映を遅滞なく行う体制が求められます。
メンテナンスが属人化しやすい
Excelマクロや独自スクリプトで構築したシステムは、設計思想や修正方法が「作成者だけにしか分からない」となるブラックボックス化/属人化のリスクがあります。その担当者の異動や退職時に引き継ぎされずトラブル発生に陥れば、勤怠記録と連動した給与計算、給与支払いに影響が及びます。ドキュメントや操作マニュアルを網羅的に整備し、定期的にレビューすることで属人化を防ぐといった運用時の対策も忘れずに準備しておきましょう。
不正や改ざんのリスクがある
自己申告型で入力するスタイルは設計や操作性をシンプルにできる半面、虚偽申告や二重打刻のような誤認や不正も発生しやすくなります。
例えば、タイムカードやPCログと連携した打刻、GPSによる位置情報記録、生体認証の導入など、客観的な証拠も残す仕組みがあると信頼性が向上します。加えて、アクセス権限の厳格化と編集ログ記録を組み込むことで、不正行為の抑止と追跡を可能にします。
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勤怠管理にはクラウド型システムの導入が安心で簡単
自社で一からシステムを構築する手段は、初期費こそ抑えられますが、運用コストは別と考える方がよいでしょう。特に運用において、自社担当者・チームの工数や知識面での負担が大きくなりがちです。
そうした負担やトラブルに悩まされるのが不安ならば、はじめから専用機能を備えたクラウド/SaaS型の勤怠管理システムで検討することをおすすめします。
クラウド型の勤怠管理システムは、法改正に合わせた更新をベンダー側が行うため、自社で逐次対応せずに済みます。スマートフォンやタブレットからの打刻対応、GPSによる位置情報記録、ICカードや生体認証連携など、多様な打刻方法に標準で対応しています。オンラインマニュアルや専門スタッフによるサポート窓口が整備されており、IT専門人材が少ない企業でもスムーズに導入・運用が可能です。料金は従業員数に応じた月額制が中心で、大規模な初期投資が不要な点も中小企業にとって魅力的です。
この1ページで解決勤怠管理システムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントは? おすすめ54製品をタイプ別に比較
法改正自動更新機能を備える勤怠管理システム16選
勤怠管理の法令は頻繁に改正されるため、手動アップデートでは対応漏れやミスのリスクが高まります。そこで、自動更新機能を備えたクラウド型システムなら、常に最新の法令に沿った運用を手間なく実現できます。またスマートフォンからのモバイル打刻があれば、外出先やテレワーク中でもリアルタイムに勤怠を記録でき、GPS機能を利用することで不正や改ざんのリスクも防げます。ここでは、法改正に伴う自動更新機能を備えている勤怠管理システムをご紹介します。(製品名 abcあいうえお順/2025年6月時点)
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