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堕ちたIPモバイル電話――JMネットの“闇”(3/3 ページ)

» 2004年01月23日 13時46分 公開
[杉浦正武,ITmedia]
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 アペルは、試みにホーダイクンを購入したという。その外見は、アペルロムと寸分違わぬものだったようだ。

 「正面にあるロゴの部分だけは、強力な粘着テープでシールが張られていた。はがすと、“appel”の文字を消した形跡があった」。ところが、その端末を利用して通話すると「アペル通信でおつなぎします……」という音声が、はっきり聞こえたという。

 こうしているうちにも、ユーザーから「この事実を知っているか」との問い合わせがアペル側に殺到した。あまりにひどいため、前述のようにサイトにただし書きを掲載することになったのだという。

Photo アペルのトップページ。「弊社アペルロムは決して『定額料』『使い放題』で利用できる商品ではございません」

 なお、ジャパンメディアネットワークは10月14日付けで、TTMコミュニケーション株式会社とのOEM関係を合意解約している。

「IPモバイル電話」ではなくなった?

 その後も、MobdeMは迷走を続ける。前述のホーダイクンとは異なる、新たな専用アダプタも登場したが、それはフラップの「ぴっとデバイス」と同一製品だという話もあった。

 「同じだ、と断定していいと思う。あれはほかではない」(フラップ広報)。

 ちなみに、このあたりからMobdeM(あるいは、それに類する製品)の性質が、単なる割安通話を実現するための「自動ダイヤラ」に変質した観がある。当初の発表どおり、PDCの通話をIPパケットで伝送する……という製品は、あきらめてしまったようにしか見えない。

 その後もサービス開始を延期したり、一時的に開始したり、やはり中止したりしていたが、冒頭のとおり2004年1月19日をもって、ジャパンメディアネットワークは自己破産した。

Photo 写真は、WIRELESS JAPAN 2003で参考出品されていた端末(クリックで拡大)

 ジャパンメディアネットワークが、真に画期的な技術を開発していたのか、そして定額制・かけ放題の“IPモバイル電話”の提供を本当に目指していたのか。同社の関係者に連絡をとれなくなった今となっては、確認するすべはない。

 ただ、同社の運営体制、メディアへの不誠実な対応は、さまざまな疑惑・憶測を生んだ。同社がそうした疑惑を払拭するだけの説明も、またユーザーを納得させるだけの実績も作れずに、事業を終わらせたことだけは間違いない事実だろう。

 取材を通して常に感じたのは、「定額通話」「IPモバイル電話」に対するユーザーの期待の高さである。だが2004年1月、それは最悪のかたちで裏切られた。

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