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第12回 この歳で目覚めてしまったラジコンカーの魅力小牟田啓博のD-room

» 2007年09月18日 10時22分 公開
[小牟田啓博,ITmedia]

 こんにちは。小牟田です。暑かった夏も終わり、少しずつ涼しさを取り戻してきていますね。皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 さて今回は、ラジコン(R/C)についてちょっと触れてみたいと思います。

 僕はずっと、ITのモノ作りの世界で生きてきました。技術の進歩の素晴らしさを日々実感しているという話は、今まで何度もお話してきましたよね。

 なにも技術の進歩というのはITの世界に限ったことではありません。最近、僕がそれを実感している分野があります。それがR/Cの世界です。その魅力を僕なりの視点でお話させていただきたいと思います。

仕事の依頼がきっかけで手のひらサイズのR/Cカーを手に入れた

 皆さんの中にも、子どものころR/Cを楽しんだ記憶のある方もおられるでしょうし、今現在R/Cを続けておられる方もいるかもしれません。

 実は僕、この歳になって初めてR/Cの楽しさを思い知っている次第なのです。

 それはR/C関係の仕事のご縁があって、「仕事でR/Cを頼まれたのに、R/Cをやった経験がない」では良いモノ作りができないと感じたことから始まりました。

 実際にR/Cの世界をいろいろ調べてみると、クルマ、飛行機、ヘリコプター、ボートなど実に多くのジャンルがあります。しかも最近の日本の住宅事情を反映してか、室内で楽しめる手軽でコンパクトなR/Cがたくさんあることにまずは驚きました。

 小さなクルマやヘリコプターなどの乗り物に加えて、今は室内を飛び回る昆虫までもがR/Cとして数多く売られているのです。店頭でこれら多くの製品を見ているだけでも、楽しくなってきます。

 室内R/Cのジャンルで今ちょっとしたブームになっているのが、京商から発売されている「ミニッツシリーズ」です。シリーズ内でスケールの差はありますが、30分の1スケールから24分の1スケールまで、どれも手のひらに載せられるほど小さな完成品のリアルR/Cカーなのです。東京の表参道ヒルズ(2006年2月の記事参照)にもショップがあって、店内のミニッツ専用ミニコースで実際にR/Cカーを走らせて楽しむことができます。

 このミニッツ、僕も1セット手に入れてみました。黄色いフェラーリです。

 R/Cカーの楽しさの1つに、オプションとして用意されるさまざまなパーツを交換して楽しめることが挙げられます。そのオプションの中にはボディそのものも含まれていて、シャーシを1つ持っていれば、気に入った別のボディに乗せ換えることが可能です。

 ランボルギーニカウンタックやロータス・ヨーロッパ、ランチア・ストラトスなど、往年のスーパーカーたちも多数ラインアップされていて、選ぶのに迷いが生じます。僕もいくつか気に入ったボディを手に入れて交換して楽しんでいます。

 さらに、オプションパーツにある本物のアルミニウム製ホイールに交換すれば、実車並みにリアリティが増し、グッと引き締まって見えるその姿が結構カッコいいのです。

 僕の場合、走らせるのは素人以下のテクニックですから、たった一度だけサーキットコースを走らせた愛車の黄色いフェラーリは、買ったときからは想像もつかないほど残念な姿になってしまいました。

 でもこのミニッツシリーズ、小さいサイズだからといって決して子ども向けのおもちゃではなく、一般家庭の間取りに合わせ、フローリングをコースとして大人が手軽に楽しむことができる本格的なR/Cカーという、そんなコンセプトの下に開発されたのです。

 ここには小型実装技術や無線技術など、多くの最新テクノロジーが惜しみなく注がれています。

バギーからオンロードへ――宝物になったアルファロメオ・ジュリアスプリント

 一方、田宮模型は小型R/Cカーで、A4サイズに収まるコンパクトな「タムテックギア」というミニバギーのシリーズを展開しています。

 子どものころに親しみ楽しんできた、手軽にどこへでも持ち出せて本格的に楽しむことができるR/Cカーというコンセプトで開発されました。豊富で本格的なオプションパーツが楽しめるようになっています。

 こちらはサイズがA4サイズということもあって、しっかりした質感の中にもかわいらしさを感じさせる存在感があり、後述するメインのスケールシリーズよりオプションパーツの価格がリーズナブルなのも魅力の1つです。

 会社の昼休みに走らせて楽しんだり、自宅前のちょっとしたスペースを利用して面白さを味わってみたり、バギーカーなのでミニッツシリーズとは違った付き合い方のできるR/Cカーです。

 続いて本格的なR/Cカーといえば、10分の1スケールのオンロードカーとオフロードカーが挙げられます。10分の1サイズの中にはモーター駆動の電動タイプとエンジン駆動のタイプとがありますが、メンテナンスが楽で価格もリーズナブル、走る音の静かな電動R/Cカーが広く普及しているようです。

 実際に僕が今一番はまっているのが、10分の1スケールの電動R/Cカーなのです。オンロードとオフロードそれぞれ試して、オンロードカーをまず最初に入手することにしました。

 でもね、まず買う前の段階で何をどう買えばいいのかまったく見当もつきません。雑誌をいくつか買ってみて、いろいろ読んでみましたが専門用語や生まれて初めて見る形状の部品だらけで訳が分からないことばかりです。悩んでいても仕方がないので、自宅から一番近くの昔からあるラジコン屋さんを訪ねてみました。

 「僕は不器用で難しいことは苦手」「でも車種やデザインには目いっぱいこだわってモノ選びがしたい」「仕事関係のことでもあるのでその最低限必要な条件」など、ざっくばらんにお店の人に伝えました。

 するとショップのおじさんはとても親切にすべてを教えてくれて、おまけに有料でしたがシャーシの組み立てやボディの塗装を引き受けてくれることになりました。

これが宝物として一度も走らせていないアルファロメオ・ジュリアスプリント

 でね、ここから僕がR/Cに並々ならぬ縁を感じたエピソードです。

 僕が買ったR/Cカーの入門書の中で、塗装の先生として登場していたのが、この近所のラジコン屋さんのおじさんだったのです。「え! あのおじさん、そんなにスゲー人だったの!?」ってなもんです。

 実際にオーダーして、数日が経って納品された僕のR/Cアルファロメオ・ジュリアスプリントを見て、その完成度の高さに大満足。おじさんとも一気に仲良しになりました。でも、このアルファロメオはもったいなくって一度も走らせていません。

ますますヒートアップして自分自身で組み立てることを決意!

 オフロードカーについてですが、2WD(後輪駆動)と4WD(四輪駆動)両方を試してみました。

 こちらも縁の深いエピソードがあって、僕の義理の兄貴が昔からR/Cで相当ブイブイ言わせた人だったらしいのです。北海道出身のその兄貴が中学生や高校生のころ、全道選手権で上位に食い込むほどのR/C飛行機の使い手だったと聞きました。

 であればと、こんな縁に恵まれるってすごいと都合よく解釈した僕は、一緒に例のラジコンショップに行ってもらい、2WDバギーを1台分組んでもらうことにしました。

夢中になって走らせているショッキングピンクのこだわりのバギーカー

 このオフロードカーは実際に走らせることを目的にしていますから、豊富に用意されているオプションパーツも本気モードでじっくり検討しました。するとどうでしょう。ブルーにアルマイトされたアルミダンパーや、赤や黄色のサスペンションスプリング、組み立てをするビスまでもが鮮やかなブルーのアルミパーツがたくさんあるじゃないですか!

 これには驚きましたね。実際にパーツを見てみると、最初に買ったR/Cカー雑誌に載っていた意味の分からない部品たちが、とたんに魅力的に感じられたからです。

 うーん、R/Cカーファンの人たちはこういった部分の虜になっているんだなぁと、妙に関心しながら、結局、ブルーが美しいアルミダンパーを一緒に買って組みました。

 実際に組み上って走らせてみると、子どものころに憧れた思いが一気に蘇ってきました。当時は高価で縁のなかったR/Cカー。僕の深層心理の中で小さなコンプレックスとなっていたことが、コントローラのスロットルを空けた瞬間に吹き飛んでいきました。

 でも、相変わらずテクニックが皆無なので、きれいに塗装されたショッキングピンクのボディは傷だらけになってしまいましたけどね。それから、すぐに4WDバギーカーもその違いを確めるために購入。夢中になって走らせています。

 2WDはハンドリングレスポンスが非常によく、クイックな走りが楽しめます。一方の4WDはダートをパワフルに駆け回り、2WDと比較して豪快な走り方をします。2WDも4WDも、どちらも大会競技がありますから、それは好みで選んでみていいのかもしれませんね。

 どちらかといえばオフロードよりもオンロードが好きな僕としては、やっぱり最高に好きなツーリングカーを作ってみた方がよいのではないか……。そんな思いから、田宮模型製のオンロードツーリングカーを、自分のこの手で組み立ててみることを決意しました。

 オプションパーツもたくさん用意されていて、チューンアップや調整など自分なりのカスタマイズできる、幅の広い仕様の「TA05」というベースモデルを選んでみました。

 するとどうでしょう、今までのように完成品を買ってくる、あるいは他人に組み立ててもらっていた状況からは想像もできないほどの魅力を味わいました。

 それは、まず走って曲がるという動きを支えている基本的な構造を知ることができるということ。それから、自分が組み立てるという手間を掛けることで愛着をR/Cカーに注ぎ込むことができたからです。

 これはぜひ皆さんにも実際に体験していただきたいですね。予算の許す限り、オプションパーツで武装してあげたい気持ちになってくるんですよ、不思議と。

 フッ素コートのオイルダンパーキットやアルミパーツ、チタンビスセット、チューンアップモーター、パワーアップしたバッテリー、グリップタイプの違うタイヤやデザインの違うホイール、さらにはボディデザインに至るまで、妥協を許さないこだわりのポイントがいくつもあります。

サーキットも本格志向で世界ランキグ8000位以内を狙う!?

 こうして目いっぱい思いを込めて作り上げた、世界で自分だけの1台。せっかくだからどこかの専用サーキットで走らせてみたくなりました。サーキットの中でも、一流のロケーションで実現してみたい。そこで僕が選んだ最初のサーキットが、全日本選手権や世界選手権大会も開催されたことのある茨城県つくば市の谷田部アリーナでした。

 この谷田部アリーナは、世界でも有数のR/Cカーの使い手さんたちが訪れる名所で、取材や新製品リポートのロケ地にもちょくちょく選ばれる場所です。そんなメジャー環境にも関わらず、超スーパービギナーでおまけに生まれて初めてのR/Cサーキット経験をする僕ではありますが、親切に快く受け入れてくれました。

僕が生まれて初めて組み立てたR/Cツーリングカーのワンショット

 もちろんロケーションが最高だといってもテクニックは最低ですから、上手く走るわけではないので周りの上級者の方々に相当迷惑をかけてしまいながらも気分は勝手に最高潮でした。

 「こんな僕でも、世界ランキングで8000位には入ってるんじゃないのかな?」みたいな勘違いを抱かせてくれる素晴らしい環境でした。ちなみに画像は谷田部アリーナで僕が生まれて初めて組んだR/Cツーリングカーのワンショットです。

 今回はR/Cカーの魅力をお話しました。始めてみる前と今と大きく変わったと思うことは、僕の考えていた以上にR/CがR/Cとして進化しているということでした。それはどういうことかというと、R/Cカーの構造も技術もデザインも、そのすべてが正当進化をしている。R/Cスケールだからこそ、R/Cならではの歴史と発展を重ねてきているのだということを非常に強く実感しました。

 僕はまだまだ電動R/Cカーをちょっとだけ体験したに過ぎませんが、もっともっとR/Cカーの魅力を感じていきたいですし、次はエンジンカーにもチャレンジしてみたいと考えています。いずれ機会があれば、飛行機やヘリコプターなどの空を飛ぶR/Cも試してみたいと思っています。

 日本ではレジャーやホビーの市場は、まだまだ未開拓の分野です。米国や欧州ではR/Cはずっと身近なホビーとして普及していて、ちょっとしたブルジョワな遊びでもあるようです。

 今はPCやゲーム機が非常に普及していることもあって、バーチャルな遊びが大きなウエートを占めていいますが、こんな時代だからこそ、自分の手でモノを作り上げたり走らせたり、チューンアップやカスタマイズを楽しんでほしい。そんな思い思いの付き合い方ができる本物のホビーとして、ぜひ一度、R/Cの世界に踏み込んでみることをお勧めします。

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PROFILE 小牟田啓博(こむたよしひろ)

1991年カシオ計算機デザインセンター入社。2001年KDDIに移籍し、「au design project」を立ち上げ、デザインディレクションを通じて同社の携帯電話事業に貢献。2006年幅広い領域に対するデザイン・ブランドコンサルティングの実現を目指してKom&Co.を設立。日々の出来事をつづったブログ小牟田啓博の「日々是好日」も公開中。国立京都工芸繊維大学特任准教授。


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