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» 2007年05月29日 20時14分 公開

第9回 カラフルでかわいい! 子供向け、ティーン向けケータイ小牟田啓博のD-room

数々の端末を世に送り出してきたデザインプロデューサーの小牟田啓博氏が、日常で感じたこと、経験したことを書き綴る「小牟田啓博のD-room」。よりカラフルでかわいらしい端末として各社から登場している子供向けケータイ、ティーン向けケータイ。開発の苦労が多いこれらのケータイには、開発人の熱いメッセージが込められている。

[小牟田啓博,ITmedia]

 少し間が空きましたね。皆さんお久しぶりです。お元気ですか? さて、久々にケータイの話題に戻ってみようと思います。

 今回は子供向けケータイやティーン向けケータイについて、ちょっと的を絞って僕なりの考え方をお話ししてみたいと考えています。

子供に向けているはず……なのに意外と本当に子供が喜ぶモノは少ない?

 世の中には、子供向けの商品がたくさんありますよね。女性向け商品の開発には女性が商品企画に関わっていたり、女性を集めてグループインタビューをしたり、というのは今や常識なのですが、子供向け商品に関して子供が直接、商品開発に携わることはほとんどありません。

 すると、肝心のターゲットである子供の意見を反映しつつも、結局は大人が商品を開発する。ここに難しさがあるわけです。下手をすると子供に向けているはずなのに、子供は見向きもしない商品を作ってしまう。世の中、そんな笑えない冗談みたいな商品が多いのも事実です。

 家電製品のキッズ向けという商品で、やはり記憶に深く残っているのはソニーの「My first SONY」シリーズでしょう。当時、高級で最先端を行くソニー製品を物心付くころから子供たちに使ってもらいファンとして取り込んでしまおう、といった企画の子供に向けたプロダクトシリーズでした。

 実際にビジネスで成功したかどうかは僕には定かではありませんが、モノ作り業界に投げかけた波紋はとても大きかったと思います。それに次いで、各社から同様のコンセプト製品がいろいろ展開されていきました。

 三洋電機の「ROBO」シリーズは、僕は個人的にデザインが好きでした。このROBOシリーズ、子供向けというよりはファンなテイストが好きな若者向け的なコンセプトに近かったのではないかと勝手に想像しています。

 モバイル分野のキッズ向け商品というと、僕も関わったことのある子供電子手帳などもそうではないでしょうか。当時(今から10年くらい前)、女の子を中心としてクリスマスプレゼントやお年玉で欲しい商品ナンバーワンの座を、数年間連続でキープしていたのがこの子供電子手帳でした。

 僕がカシオ計算機デザインセンター在籍当時のこと。ビジネス向けの電子手帳で世界でもトップクラスのシェアを誇っていたカシオが、子供向けの電子手帳をいち早く売り出し、大成功していたことを思い出します。

 このとき痛感したのは、ターゲットである子供たちの意向をしっかりと受け止めて、できるだけそれを採用し再現する事が子供たちの満足感を得るということ。それも商品としてハイレベルにバランスしている必要があります。

 当時まだ子供向け電子手帳が存在していないときに、子供電子手帳を手にするのは、いわゆるイノベーター層(革新的採用者)に相当したのかもしれません。

 企画サイドはそんなイノベーター層から保守層まで、広くあまねく消費者を獲得しようと考えるわけです。それを肌で感じて詰めを展開したのは、僕を含めたデザインサイドの存在が非常に大きかった。なぜならそれは、彼女たち、子供といえども女性というのはカラーにとてもこだわりを持っていることが分かったからです。

佐藤可士和さんや柴田文江さんら一流デザイナーによる端末デザイン

 ここからが本題です。先ほどカラーという話をしましたが、今回のテーマである子供向けケータイやティーン向けケータイに関しても、各社からとてもきれいなカラーリングのモデルを多数展開していますよね。

 なかでも佐藤可士和さんによるトータルコーディネートモデル、NTTドコモのキッズケータイ「SA800i」は、端末のデザインやカラーだけでなく、サービスのロゴまで一貫してデザインされていて印象的です。

 ケータイデザインのプロである小牟田としては、当初のカラー3色に対して、新色の2色「チェリー」と「ライム」が追加されたことにより、キッズケータイの世界観がしっかり伝わったと感じています。

 一方のauは、子供向けとは違うティーン層に向けた「Sweets」を展開しています。このSweetsは柴田文江さんデザインによるもので、柴田さんらしい温かみがあって柔らかなフォルムを造形に取り入れ、女の子向けらしい元気でハイセンスなカラーとSweetsのネーミングが示すとおり、まるでスィーツを思わせる甘い質感が特徴的です。

 このSweetsシリーズは、「Sweets」「Sweets pure」「Sweets cute」と、今年で3代目の製品が登場してきています。一貫して同じ柴田文江さんがデザインを続けていることも、ブランディングの観点からも、しっかりした取り組みが伝わってきますね。

 ただ、1作目のSweetsから2作目のSweets pureに進化した時点では、進化感が見て取れた気がするのですが、3作目のSweets cuteでは若干一作目に戻ってしまった感があるのが気がかりです。でもそこはさすが柴田さん、しっかりと質感やカラーリングのクオリティが進化していると思います。

 加えてauではこのSweetsシリーズに対して、子供向けの「ジュニアケータイ」シリーズも展開しています。「A5520SA」「A5520SA II」「A5525SA」がそれに当たります。

 A5520SAとA5520SA IIはベースモデルがあって、そのモデルのボディカラーと画面のデザイン変更で対応したっぽさが見受けられました。でも、A5525SAではSweetsシリーズの柴田文江さんがデザインを手がけたことで、子供に相応しい完成度の高いプロダクトに仕上がり、キッズケータイ市場の本格化を印象付けています。

 ただ1つ気になった点は、26ミリという本体の厚さが、子供の手にはちょっと大き過ぎるという印象を受けたことです。巧みな造形処理で仕上げられていますので、フォルムの美しさはパーフェクトに近い。だけどちょっと大きい。これがどう評価されるかですね。

 さらにソフトバンクモバイルからは、「コドモバイル」と称して「812T」が展開されています。子供向けポータルの「Yahoo!きっず」の対応や「防犯ランプ」が特徴的で、どちらかといえばサービス面の訴求と子供のセキュリティに重きが置かれていて、デザインという面から見れば僕としてはそれほど特長的な部分は見当たりません。

 その他、ウィルコムからはバンダイの「キッズケータイpapipo!」が展開されています。ケータイということよりも玩具的な距離感を打ち出した感のある製品に仕上がっていますよね。

 サードパーティ製ということから言っても難しさはあるのかもしれませんが、やはりケータイとしてサービスと連携した製品である以上は、ある程度のクオリティは必要なのかな、といった印象を受けました。

コンセプトは子供向けでも親が購入し、親が契約するというプロダクト

 個別にざっと子供向けケータイ、ティーン向けケータイについてお話ししてきました。

 ターゲットである子供に対して大人が開発する。そしてさらに、子供が使うケータイは大部分の場合は親が契約をする。そんな難しさを抱え込んだ子供向けケータイではありますが、親が子供に積極的に持たせたいというケースもあれば、子供が望んで持ちたいと思う場合もある。また、やむを得ず持たなくてはならないというケースもあるかもしれません。

 そこにはコミュニケーションを楽しみたい、楽しませたい、という思いがあったり、子供の防犯といった安全面から持たせようという親御さんの思いもあろうかと思います。

 いずれにせよ、ユーザーは子供であり、でも買ったり契約したりするのは親である場合がほとんどでしょう。契約行為が発生してサービスを受けるというケータイの性質上、単純に売り切り商品と違った開発や運用の難しさが多々あるのです。

 そのあたりについては、特に今回は触れませんでした。単純にデザインやプロダクトといった面から見た僕の感想です。最後になりましたが、そのあたりはぜひ理解してくださいね。

 子供だって、一般的な大人用ケータイを手にすることも考えられますし、反対に今回紹介した子供向けケータイやティーン向けケータイを大人が使ってみるというのも面白いでしょう。

 どうしても大人が開発して大人が買い与える以上は、クオリティのしっかりした製品を提供するべきだと思います。また、そうしてあげたいですよね、プロダクトだけではなく、サービス面やその世界観まで一貫して、ハイレベルなものを通じて子供たちにきちんと夢を与えてあげたいものです。

 ケータイのデザインに関する選択肢が増えることは、僕はとても良いことだと思いますし、とても楽しいことだと思っています。プロダクトというのは、日々がその進化論の真っただ中にいるのですから。

PROFILE 小牟田啓博(こむたよしひろ)

1991年カシオ計算機デザインセンター入社。2001年KDDIに移籍し、「au design project」を立ち上げ、デザインディレクションを通じて同社の携帯電話事業に貢献。2006年幅広い領域に対するデザイン・ブランドコンサルティングの実現を目指してKom&Co.を設立。日々の出来事をつづったブログ小牟田啓博の「日々是好日」も公開中。国立京都工芸繊維大学特任准教授。


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