第5回 各社カラバリ華盛り――ボディーカラーの選び方・楽しみ方が変わる小牟田啓博のD-room

» 2006年11月28日 10時17分 公開
[小牟田啓博,ITmedia]

 10月24日、ついに日本のケータイ業界で、番号ポータビリティ(MNP)制度が開始され、この時期に合わせて各社はケータイ史上最大級と思える端末ラインアップを投入しました。

 選ぶ側としてはとても楽しい気分にさせてもらえますね。レストランで食事をするのと同じように、たくさんのメニューの中からお気に入りの1台を選ぶのって、めちゃめちゃ楽しいと思いませんか!?

百数十のカラバリの中から自分の好きなモデルを選ぶ時代

 9月28日にソフトバンクの孫社長が「業界最大の品揃え」として13機種54色のニューモデルを発表しました。さらに同社は11月20日に2機種を加え、端末ラインアップは15機種65色と発表するなど、カラーバリエーション(カラバリ)競争の様相を呈してきたように感じられます。

 秋モデルとしてNTTドコモが702ixシリーズの6機種19色、冬モデルとして903iシリーズを含む14機種43色を、auは「W44S」を含め13機種40色ものラインアップを発表しています。

 ものすごいですよね! 百数十のカラバリの中から自分の好きなモデルを選べる。もちろん、シルバーやホワイト、ブラックなどの定番カラーなどは重複しているので、実際には単純合計できるわけではありませんが、いずれにせよ驚きの数だと思うのです。

 そこで今回はボディーカラー、すなわち“カラバリ”を中心に話を進めたいと思います。まずは、携帯端末市場のカラバリの変遷について少し触れておくことにしましょう。

 その昔(昔と言っても通信端末の技術革新は早いので、ここ数年での流れの話です)、電波を受け取らなければならないという製品の特性上、それから市場が今のようなコンシューマー向けではなく、ビジネス市場がメインだったことなどもあり、筐体のボディーカラーと言ったら黒か、黒を中心としたグレーといったものが殆どでした。

 端末カラーをメインに考える時代はそれよりもずっと後のことで、当時は電波性能と本体の小型化競争が中心でした。

 デザイナーとしては、フォルムに加えてカラーの特徴で差別化を狙いたいわけですが、黒系統の色しか使えないという反動から、先進技術が惜しみなく投入される携帯端末には、シルバーなどの金属質を表現したクールなイメージを出していきたいと思ったものです。

 しかし、シルバーというのはアルミの粉体が混入されており、そのアルミが電波を妨害してしまう。そこで、アルミに変わる金属質の表現物質としてパール(雲母)が選ばれた時期がありました。これが黒一色だった携帯端末がメタリックという表現を手に入れた瞬間です。今から8年ほど前のことでしょうか。

 次第にアンテナ技術も筐体技術も、それから塗装技術も著しい進歩を遂げて、ネックだったアルミを混入しても問題のないレベルに到達し、シルバーでも微妙に色合いを変えるなど、デザイン性を持たせることができるようになりました。

 一方、黒やシルバーといった高級路線のデザインが展開されていたケータイ市場に対し、PHS市場ではよりコンシューマーに向けた製品が展開されていきます。カラーバリエーションの展開という面ではむしろこちらの方が先行していた感がありました。当時のDDIポケット、NTTパーソナル、アステルといった端末がそれに当たります。

 カラーだけでなく、フォルムもオリジナリティーのある製品がいくつか登場してきたのも、PHSならではのものだったと記憶しています。

業界に衝撃を与えた真っ赤なボディーのP503i

 さて、話はケータイ市場に戻ります。携帯電話機はシルバーを手に入れつつも、製造メーカー各社は薄型化、小型化競争を展開していきます。

 当時、携帯端末と言えばストレート型が大多数でしたが、見る見るうちにコンパクトになり、あっという間に端末本体が100グラムを切ってしまうのです。日本の技術は、本当に素晴らしい。技術者は今のケータイ技術革新を支える立役者だと思います。そんな中、NECだけはノートパソコンの技術からか折りたたみ型をポリシーとして継続して開発、投入していました。

 ケータイがどんどん小さくなっていくのと平行して、持ち運ぶスタイルの進化と、それから市場がビジネスからコンシューマーへ広がって、女性がケータイを使いこなしてくるようになると、この折りたたみ型が主流になっていきます。

 そして女性がどんどんケータイのデザインに意見を持つようになり、ボディーカラーの重要性が日増しに強くなっていきました。

 少し前置きが長くなりましたが、電波性能追求の時代から小型化競争といった技術主導の流れに加え、「デザイン」が端末選びに加わってきます。例えばドコモの真っ赤な「P503i」は、デザインと塗装の業界に衝撃を与えましたし、J-フォンのケンウッド製「DP-134」のスカイブルーは、いわゆる「藤原紀香モデル」とも呼ばれ、ケータイを身近でおしゃれなものにしたインパクトのあるモデルでした。

 auではソニー・エリクソン・モバイル製「C1002S」のオレンジがオリジナリティーを発して、話題をさらっていくことになります。その後も続々とライムグリーンやアズールブルー、イエローやピンク、スカイブルーなど、個性的なボディーカラーが登場していきました。

 このようにいろいろなカラーが登場し、これを支える塗装技術が大きく進歩することで多種多様なカラバリを可能にしてきたのです。

 赤の発色のさせ方を一つ取っても、単に塗料の調合というだけでなく、多彩な技術や条件の組み合わせによって実現出来る、とてもさまざまな方法があります。その時々によって、それらの条件の一番良いものを選択することを重ね合わせて、ようやくデザイナーの意図する赤を導きだすわけです。

 さらに、同じ赤という範疇には無限ともいえるほどの赤があり、最後の詰めの段階には、プロでしか見分けのつかないレベルにまで練り込まれた微妙な赤が追求されていきます。

 また光源が蛍光灯か白熱灯か、あるいは自然光かによって色は違った見え方をしますし、同じ一日でも朝と夕方とでは色が違って見える。また同じ時間に同じ光で見ても違った角度から見ると別の色に感じるなど、カラーというのは非常にデリケートで難しいものなのです。

カラー選びが加わって端末を持つ喜びを与えてくれる

 こうした色を作る過程で、デザイナーと技術者、製造の現場の方々など、何度も何度も綿密な打ち合わせと調整が繰り返され、その繰り返しによってひとつのカラーが出来上がります。そして、こうした個々の積み重ねが、現在のカラバリを豊富なものにしてきたのです。

 ケータイを構成しているデザイン的要素として塗装を中心にお話しましたが、塗装以外にも成型方法や印刷方法など、部品の用途に合わせた無数の材料で組み立てられています。

 通常は樹脂成型品が主に筐体素材として使われます。しかし、時としてマグネシウムなどの金属成型が使われることもありますし、最近の例では、ドコモのシャープ製端末「DOLCE SL」のように、人工レザーを用いた端末も登場してくるなど、新しい技術や素材も積極的に活用されてくるようになりました。

 こうした技術とデザインによって、端末が持つことの喜びを与えてくれるようになってきました。使う人やその人の使う用途によって、あるいは使うシーンによってTPO的なアクセサリーとして扱う人も出てくるなど、思い思いにケータイと付き合う時代になってきたのではないかなと思います。

 ボディーカラーによって、オフィスデスクに溶け込むデザインなのか、バーカウンターに似合うデザインなのかが違ってきますね。すると使う人が自分のライフスタイルの中で何に注目しているのかによって、選ぶカラーは自ずと違ってきます。

 「こんなシーンのこんな気分のときに使うケータイ」、そんな思いに応えるようにカラバリは豊富に存在しています。

 最近買った冬物のジャケットやコートとコーディネイトしたり、お気に入りのステーショナリーやバッグとコーディネートしてみるのも良いでしょう。

 男性であれば履き慣れた靴と合わせてみたり、腕時計やベルトとコーディネートしてカラーを選ぶことを楽しんでも面白いかもしれません。そのときに、具体的に自分の使うシーンをイメージすると、カラー選びがぐっと面白くなるはずです。

 今年のクリスマス、彼と待ち合わせ。自分は早めに約束の場所で寒さも気にせず彼を待つ。彼からたびたび届く“いま何処にいるよ”メールを見ながら。この日のために選んだコートとマフラーに合わせて、今年はケータイをブラウンに替えてみた……とかね。

 さぁ、みなさんはどんなボディーカラーを自分にプレゼントしてあげますか?

PROFILE 小牟田啓博(こむたよしひろ)

1991年カシオ計算機デザインセンター入社。2001年KDDIに移籍し、「au design project」を立ち上げ、デザインディレクションを通じて同社の携帯電話事業に貢献。2006年幅広い領域に対するデザイン・ブランドコンサルティングの実現を目指してKom&Co.を設立。日々の出来事をつづったブログ小牟田啓博の「日々是好日」も公開中。国立京都工芸繊維大学特任准教授。


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