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» 2007年07月03日 10時15分 公開

第10回 2007年夏モデルで感じた「このプロダクトのここが気になる!」小牟田啓博のD-room

数々の端末を世に送り出してきたデザインプロデューサーの小牟田啓博氏が、日常で感じたこと、経験したことを書き綴る「小牟田啓博のD-room」。携帯キャリア各社から続々と発表された夏モデルが、店頭に並び始めている。個性的で特長のあるモデルをプロダクト・デザインの観点で見ると、気になる点がたくさんあるという。

[小牟田啓博,ITmedia]

 こんにちは。小牟田です。梅雨のうっとうしい時期になってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 先日、携帯キャリア各社から夏モデルが続々と発表になりましたね。今回はその“夏モデル”について、デザイン・プロダクトの視点から、また、小牟田なりのアングルで幾つか気になるモデルをピックアップしてみたいと思います。

キャリア各社によって夏モデルのライアップ傾向の差が表れている

 個別モデルの紹介に入る前に、全体的な傾向について少し触れてみましょう。

 KDDI(au)から登場するソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの「ウォークマンケータイ W52S」や、ソフトバンクモバイルから登場したシャープの「アクオスケータイ 912SH」に見られるように、各メーカーのブランド名モデルが登場してきている点が挙げられます。

 今回はauから、初めてカシオ計算機の「EXILIMケータイ W53CA」が登場しました。

 ソフトバンクモバイルから「FULLFACE 913SH」や「fanfun 815T」といった、キャリア独自のブランド展開も「au design project」以降の注目したい動きです。

 一方、各社それぞれの打ち出し方で見てみると、「DoCoMo2.0」はメジャータレントが複数登場するリッチなプロモーション展開によって、相当な追撃と、その意志表示なのだろうと感じとれます。実際に僕も、ものすごく興味を持って今後の動向を見てみたいと思っているところです。またauでは、42ものファッションブランドとコラボレーションしたケータイ周辺グッズ展開を打ち出しています。

 ケータイは、今や単なる機器という位置付けではなくなってきているという点に、auが着目していることの1つの表れだと思います。加えて防水ケータイの投入も、日常生活の中でのケータイの位置付けを考慮した新しい取り組みだと言えるでしょう。

 ソフトバンクは「Style」というキーワードで、チタンやステンレスなどの素材を積極的に採用してきました。薄型と上質を両立したモデルの登場に象徴されるように、3Gケータイ時代の今、本体サイズの大型化に対するユーザーの不満の声に対して本気で取り組んでいるという点が注目できるのではないかと思います。

 この春登場した「PANTONE 812SH」に象徴される豊富なカラーバリエーションの展開もソフトバンクケータイの特徴の1つで、これもユーザーの思いに応えるカラー選択の楽しさを存分に味わってほしいという意図が感じ取れるうれしい事例です。

豊富なカラバリの裏に割り切りやメッセージ性の強さを感じるソフトバンク

 さて、いよいよここからは各モデルについて、僕なりにプロダクトを深堀してみようと思います。

 まずは、ソフトバンクから登場したFULLFACE 913SH。なぜこのモデルを筆頭に挙げたかと言えば、プロダクトの観点からすると、その外観からは想像しにくい技ありの取り組みが施されたモデルだからです。

 通常のショップ店頭では、豊富なカラーバリエーションをうたっています。実際に夏らしい元気でビビッドなカラーを取りそろえてあるこのモデル。実は本体をスライドさせずに閉じた状態で店頭に並べると、正面から見た場合にせっかくの豊富なカラーバリエーションが見えません。

 ディスプレイ側は各カラーとも同じブラックのフェイスをしていて、普通のスライドモデルのような画面下部分にボタンをレイアウトしていないからです。本体を手にとってスライドさせて、初めてダブルキー面が顔を出し、操作側のきれいなボディカラーを見られるようになっています。

 これは、ワンセグやWebサイトなどを大画面でしっかり楽しめるように注力されていて、ハードとしてのカラーバリエーションよりも、画面を楽しむことを優先した配慮がされたからでしょう。度胸がいいというのか、ある種の割り切りと言ってよく、商品企画のメッセージ性の強さにこそ注目すべきポイントがあるのではないかと、僕は考えています。

 同じくソフトバンクの中で、東芝の薄型3Gケータイにも注目しています。これはおそらく中身の主だった部分は共有していると思われますが、チタンを採用した軽量スリムボディモデル「814T」、ステンレスを採用した回転2軸機構モデル「912T」、それと先に触れたfanfun 815Tと、三者三様の展開も注目です。

 非常に薄くコンパクトに仕上がっていて、それぞれのデザインがしっかり上質にまとまっていることも注目したいポイントです。さらにfanfun 815Tでは、300ものコーディネートパネルの展開が予定されているそうです。

 この300という数字、よく考えてみてください。300種類ですよ!? この突拍子もないバリエーション数は、今後どんなモノが展開されてくるのか僕も注目したいと思っています。

防水機能からカラーリングまでデザイナーと設計者の見事な連携プレーが映えるau

 auはというと、やっぱりEXILIMケータイ W53CA。auラインアップの中でも顧客満足度ナンバー1を誇るメーカーとしてのモノ作りは、このモデルでもしっかり受け継いでいそうですね。

 もともとカシオ計算機製ケータイはカメラの操作性に定評がある上に、今回EXILIMの名を冠してきたという部分に、この製品に込めるauとカシオの意気込みを感じ取ることができるでしょう。

 カシオ製ケータイとしての、ベーシックだけどもしっかりとした上質なデザイン。それに加えてカメラ部分のEXILIMたる緻密なデザインが同居しているあたりは、実機をじっくり手にとって確めてみたいと期待しています。

 そして同じくカシオ製の「W52CA」や三洋電機製の「W53SA」の防水機能にも着目してみたいと思います。そもそも防水機能って、通信する機能とは別の次元で満足させてほしい機能の1つですよね。

 でも、実際には高密度設計のみが優先されてきた結果、かつての「G'zOne」シリーズのような独特のテイストを持つモデルのみが存在していたという事実です。

 この防水機能というのは、今や腕時計では当たり前の機能になっていて、当たり前だからこそ主役であるユーザーが思い思いのシーンでプロダクトを使うことができる。そんな当たり前といえば当たり前のことも、意外と実現するには技術的なハードルは高いものなのです。

 僕もそのあたりの難しさをとても良く知っているだけに、この防水機能の実現は見事だと言いたいですね。

 それから同じくauのケータイでは、夏らしいスカイブルーを背景にしたCMでとても映えているオレンジ色のモデルがあります。そう、「W52H」に注目です。

 日立のワンセグケータイでは、一貫してディスプレイ側筐体の成型方法に常に新しいトライをしてきているのですが、今回もクリアとソリッドカラーの二色成型技術が表示部に採用されています。

 このモデルの見せ場は、ディスプレイ部分の二色成型部品ではなく、オモテ側のパネルが非常にきれいに仕上がっているところにあります。CMで見るのはフレスコオレンジと呼ばれるマットなオレンジ色です。

 でね、このオレンジ色がめちゃめちゃ美しい! スカイブルーやマリンブルーなど、夏のカラーに大きなアクセントとなりそうなこのオレンジ色は、なんとも元気な気分にさせてくれます。このビビッドなオレンジに合わせてある内面のウォームグレーとの相性もとても良く、非常に上質な仕上がりとなっています。

 このあたりの完成度は、デザイナーと設計者の見事な連携プレーだと言えるでしょう。ただ一点、本体サイズがわりと厚めなのにシートキーという部分は惜しいかなぁ、といったところでしょうか。

ステファノ・ジョバンノーニ氏デザインのN904iにはウサギのキャラが……

 最後にNTTドコモです。デザインという観点からすると「N904i」に着目したいと思います。

 実はこのケータイ、毎年イタリアはミラノで開催される世界最大のデザインイベント「ミラノサローネ」で展示されたモデルです。イタリアの著名なデザイナー、ステファノ・ジョバンノーニ氏のデザインによるもの。

 本体デザインではジョバンノーニ氏らしさはあまり見当たらないものの、インタフェースデザインの部分ではところどころに彼のユーモアのあるデザインが見て取ることができます。

 世界的に有名なキッチンウェアブランド「ALESSI」で見られる「Magic Bunny」と呼ばれるウサギのキャラクターがちょこちょこ登場してきます。このウサギはメインメニュー画面にも登場し、メニューの各項目がニンジンでデザインされていたりと、彼らしいとてもセンスのあるユーモアでまとめられています。

 僕はこのデザインをミラノの会場でNECのデザイナーから紹介されたときに初めて見たのですが、なかなかかわいらしく仕上がっていると関心しました。

 ざっと個別のモデルについて僕なりにお話してきました。いかがでしたでしょうか。

 ここで挙げたモデル以外にも、もちろん魅力的な端末が盛りだくさんの各社の夏モデル商戦。非常に盛り上がってくれるといいなと僕は思っています。

 端末以外にも、各キャリアはいろいろなサービス面もPRもしていますしね。

 いずれにせよ各社それぞれが、デザインに大きなウエイトを置いていることが分かります。携帯電話市場に関わらず、どんな市場においても機能競争やサイズ競争・価格競争がひと段落して市場が飽和し始めると、その先は間違いなくデザインの時代に突入します。

 僕はそのきっかけを作る仕事をしてきたわけですが、デザインが市場をリードして、それと同時に技術や新しいアイデアが惜しげもなく投入され、これから競争は激化するだろうと思われます。

 ですが、我々消費者側としては楽しく選べる選択肢が増えるわけで、これはとてもいいことだと思うのです。

 さぁみなさんは、一体どんなモデルを選びますか? それではまた、次回お会いしましょう。

関連キーワード

W52S | W52SH | W53CA | 913SH | 815T | 812SH | 814T | 912T | W52CA | W53SA | W52H | N904i | AQUOSケータイ | G'zOne | DoCoMo2.0


PROFILE 小牟田啓博(こむたよしひろ)

1991年カシオ計算機デザインセンター入社。2001年KDDIに移籍し、「au design project」を立ち上げ、デザインディレクションを通じて同社の携帯電話事業に貢献。2006年幅広い領域に対するデザイン・ブランドコンサルティングの実現を目指してKom&Co.を設立。日々の出来事をつづったブログ小牟田啓博の「日々是好日」も公開中。国立京都工芸繊維大学特任准教授。


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