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“何を重視するか”で決まるAVC録画世代のレコーダー選びBD/DVDレコーダー特集(3/3 ページ)

» 2008年12月20日 00時19分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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基本スペックは並んだが、使い勝手は異なる

 冒頭でも触れたとおりMPEG-4/AVC対応が進んだことでレコーダーとしての基本スペックはメーカー間の差異が縮まった。ただし使い勝手となると、従来通りメーカーそれぞれのポリシーが色濃く出てくる。

 現在はダブルチューナー、2番組同時録画が主流だが、シングルチューナーにほぼ近い操作性で分かりやすさを狙っているのがシャープとその共同開発のパイオニア製品。2つ目のチューナーと録画ユニットは録画専用に割り振っており、あえてほかの活用をしていない。基本的には予約録画が重複した場合に裏録(2番組目の同時録画)の選択が可能になるだけで、使い勝手としては基本的にシングルチューナー機そのものだ。

photophoto パイオニア「BDR-WD900」では、電子番組表で決定ボタンを押すだけで単発の録画予約が完了する(左)。録画予約が重複している場合には画面が切り替わり、その場で「裏録」が選択できる(右)

 ただし、裏録専用の電子番組表を呼び出すといったことも可能で、毎週録画の番組は全て裏録にすることで単発録画との重複を避けるといった使い方ができる。シングルチューナー機からの買い替えであれば、もっとも混乱が少ない製品ともいえる。

 またシャープ製品は12月8日付けでアップデートを開始しており、裏録中のダビングやBDビデオ再生などが可能になるなど、マルチタスク性の向上を果たした。パイオニア製品も追ってアップデートが行われると予想される。

 パナソニック、ビクター、三菱電機製品は、録画予約中心に2つの録画ユニットを意識させるタイプだ。ただし明示的に使い分けるのではなく、2番組同時録画が不可能な組み合わせで録画予約を行おうとすると警告が表示される程度。2つのチューナーは視聴にも活用が可能で、1番組録画中であれば録画中以外のチャンネルの視聴もできる。できるだけシングルチューナー機の使い勝手に近づけつつ、ダブルチューナー機のメリットも生かしたタイプといえる。またこの3社の製品は高速ダビング中であれば1番組は予約録画も実行できるなど、マルチタスク性も高い。

photo 東芝「RD-X8」では、電子番組表からの録画予約で予約が重なった場合に確認画面を表示する。修正画面に移動して録画ユニットを変更することも可能

 2つの録画ユニットを明示的に使い分けする必要があるのがソニーと東芝製品。録画予約時にはどちらの録画ユニットを使うかを明示的に指定するタイプだ。現状ではどの製品も2番組同時録画では片方がTS録画である必要があり、この点を理解していないと混乱しやすい。

 ただし、シャープ製品など同様に、毎週録画と単発録画の住み分けにも応用が利くメリットもある。例えばデジタル放送の録画が中心であれば、2番組同時録画の制限が少ないTS録画を中心に利用すれば混乱しにくい。またソニー製品は録画に関してのみ2つのチューナー(と録画ユニット)を意識すれば良く、東芝製品では録画予約時に録画時間の重複をその場で録画ユニットを切り替えることで回避するといった機能も備えている。仕組みさえ理解できていれば便利といえるのだ。

「何を重視するか」で選ぶ機種が決まる

 最新モデルではほぼ全メーカーの製品がフルHD解像度でのMPEG-4/AVC録画に対応し、レコーダーとしての基本機能という点では同じスタートラインにたったともいえる。その画質に関しては各製品のレビューでも触れているが、製品ごとに傾向の違いはあるものの一定水準はクリアしており、よほど何かにこだわらない限り、製品購入を決定付ける理由にはなりにくい。既に触れたとおり、どうしても録画画質にこだわるならTS録画を利用すればいい。最終的な出力品質の話になると、選択肢はA/D、D/Aコンバーターやアナログ段、電源ユニットなどにぜいたくなパーツを使用した各社のトップモデルとなり、広義的な意味でのレコーダー選びとは乖離(かいり)してしまうので、あえて重視しない点はご容赦いただきたい。

 重要になりつつあるのは、付加機能を含めてユーザーが“何を重視するか”という点だ。例えば忙しくて時短再生にこだわるなら番組本編のみの再生やハイライト再生を備える三菱電機製品が良いだろうし、自動録画ならソニーか東芝製品が選択肢になる。ネットワーク機能の充実という点ではパナソニック製品が使い勝手まで含めて一歩抜きん出た感がある。シンプルな使い勝手を求めるならシャープ、パイオニア製品といった選び方もある。BDドライブの搭載モデルがない東芝製品は選択肢としては難しい部分があるものの、強力な予約録画、編集機能はまだまだ魅力的だ。

 ソニー製品の「CREAS」(クリアス)もレコーダーとしては面白いアプローチだ。BDやDVD、録画番組の再生などすべての映像に対して14ビット処理を行い、テレビ側のHDMI入力の仕様に合わせて8/10/12ビットへ変換することでより解像感が高く滑らかな諧調表現を実現する。レコーダーとテレビの両方で規格が合わないと機能しない高画質化技術(DeepColorなど)とは一線を画す機能といえる。初期のHDMI端子付きテレビを使用してる人にも魅力的な付加機能だ。

 もちろん手持ちのテレビとメーカーを合わせてHDMI連携(各社のHDMIリンク機能)でより便利に、というのもアリだが、それは純然たるレコーダー選びからはまた離れてしまう部分なので、今回はあえて評価していない。

 注目株としてピックアップするとすれば、やはり定評のあったMPEG-4/AVC録画の画質をさらに改善し、自動チャプターも一気に2番組同時録画に対応、従来から一転してネットワーク機能の充実を図った意欲的なパナソニック製品だろう。画面デザインなど一部に不満は感じるが、「録って見る」を中心とするなら時短再生機能に秀でた三菱電機の新製品「DVR-BZ110」も挙げられる。

 2台目需要という点まで考えると、リーズナブルに購入できるシングルチューナー機を2機種も投入してきたソニーに注目したい。見て消す番組は手持ちのDVDレコーダーなどで行い、BDメディアに残したい番組だけを録画するためのシングルチューナー機を追加導入するという選択肢もあるだろう。

 いずれにせよ、各社がMPEG-4/AVC録画をサポートしたことで、レコーダーは選択肢が増え“充実の時期”を迎えたことに間違いはなさそうだ。

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