潮風公園に建立された実物大ガンダムの威光のたまものか、あるいはガマ星雲あたりからやってきた侵略宇宙人の策略か――。最近、何十年かぶりに“ガンプラ”を手にして、その進化に驚く大人たちが増えている。
1個300円の真っ白いガンダムは30年も前のお話(正確にいうとガンプラはテレビ放映の翌年に発売されたので29年前)。現代のガンプラはランナーに付いた状態で既に色分けされ、シンナーくさい接着剤を使わずに組み立てることができる。しかも、昔は不可能に思えた“アニメと同じポージング”を可能にする可動個所と可動範囲の広さ。アニメの名シーンを再現するため、パーツの一部を切り取るなんて苦労はもういらない。
およそ30年――かつてのガンプラ少年たちが立派なオジサンへと成長する間に、プラモデル作りの現場では一体何があったのか。ガンプラの聖地、静岡市にある「バンダイホビーセンター」をたずね、そのヒミツを探った。
バンダイホビーセンターは、プラモデルの企画開発から生産、相談センターまでを集約した同社ホビー事業部の中核的な存在だ。ほぼ無人の工場は24時間稼働し、1年間にプラモデルおよそ1500万個を生産する。現在でもその8割がガンダム関連というから、“ガンプラ工場”、“ガンプラの聖地”といった通称はダテではない。

壁面には巨大なソーラーシステムミラー(本当は太陽光発電システム)。年間5万6000キロワットを発電し、375トンものCO2削減を可能にした。さらに工場には雨水や地下水を利用するための貯水タンクと浄化システムを備え、年間2000トンの水を節約できる。アニメシリーズでは“死の商人”っぷりを発揮したアナハイム・エレクトロニクスだが、たぶん今ならチーム・マイナス6%に参加できる不定期の工場見学(予約制)やパブリック・ビューイングが行われることもあり、工場の中はガンダムの世界観を大切にしている。有名なところでは、工場内の多色成型機がガンダムと同じトリコロールカラーで塗装され、そのまわりをザクの顔をした自動搬送機が走り回るといった具合。ほかにも、工場を見学するために設けられたガラス窓周辺や工場内を仕切る扉が、どこかの艦内で見たようなデザインになっていたり、話をしてくれるスタッフの制服が地球連邦軍仕様だったりもする。足元にハロが転がってきても不思議ではないレベルのファンサービス精神に、思わず敬礼してしまいそう。

工場にある多色成型機はガンダムと同じトリコロールカラー。そのまわりをザク顔の自動搬送機が動き回る。ちなみに、このガンプラを作る多色成型機もガンプラになっている。(編注:自動搬送機の写真は2006年に撮影したもの)(c)創通・サンライズ

工場内3カ所に艦内っぽい扉。ちゃんと2段階で開き、エリア警戒レベルの表示もある。ちなみに3カ所のうちの1カ所は男子トイレの中にあり、警戒レベルは「0」(誰でも入れる)。でも、セイラさんには遠慮してほしいCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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