iPodやiPhoneなどApple製品でおなじみの「Dockコネクタ」。USB経由で充電するとき、あるいはスピーカーユニットなどに接続するときのコネクタとして、多くの機器が対応している。店頭で対応機器を見かけることも多く、1つの市場を形成していると言ってもいいだろう。
このコネクタは、ピンの総数が30、ラインイン/アウト(アナログ)が左右チャンネルそれぞれにあり、コンポジットおよびS-Videoビデオ出力、そしてUSBデータの経路が用意されていることがDock対応機器から判断できる。
ただし、DockはAppleがライセンスを管理するプロプライエタリ(独占的)な技術だ。標準化団体により規格化されていないため、製品がDock互換をうたうにはAppleの認証を獲得しなければならない。現実として認証を経ていないモグリの製品も流通しているが、iPodに安心して接続できるDock対応デバイスは、「Made for iPod」のロゴが表示されているものだけだ。
ちなみに、類似のライセンスとしてiPhoneとの互換性を保証する「Works with iPhone」も存在する。ライセンスが分かれているのは、iPhoneはiPodと給電の基準が異なるためと考えられる。iPhoneで確実に動作するDock対応機器が必要な場合は、ロゴを確認しよう。
Dock最大の特徴は、その高い互換性にある。Universal Dock規格に対応した機器であれば、デバイスの形状の違いは「Dockアダプタ」により解消されるため、利用者はDock対応製品を安心して使い続けることができる。
Made for iPodロゴの取得は、周辺機器メーカーにコスト負担が生じるが、見返りもある。Dockコネクタを装備してさえおけば、従来の機器だけでなく将来発売されるMade for iPodな機器にも自動的に対応するからだ。ハードウェアの仕様や扱いやすさよりも、iPodのメーカーであるAppleが完全に掌握している規格であることこそが、Dockというコネクタが普及した最大の理由だろう。
Made for iPodは一種のエコシステムとして機能しているが、永遠に続くとも考えにくい。EUが携帯電話の充電器をMicro USBで統一する(→欧州委員会、携帯の充電器をMicro USBで統一へ――Nokia、Appleほか10社が合意)という動きはその1つ。充電器に関する合意ではあるが、Dockという自社規格を持つAppleも合意している。
Dockという規格そのものも、業界団体などで標準化されていないだけに、Appleが突然捨て去る可能性もなくはない。いかんせんAppleの規格であり、そうした意味ではUSBなど、標準化された規格と分けて考えておくべきだろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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