大容量のデータを高速で転送・通信する近未来のニーズを担う近接無線伝送技術「TransferJet」のデモ展示が、CEATEC JAPAN 2009の複数ブースで行われている。
TransferJetは、ソニーが開発した4.48GHz帯無線を用いる近接無線伝送技術。非接触ICカード(FeliCaなど)のように機器どうしを2〜3センチ以内に近づける(あるいは“タッチ”する)──操作で、高速かつ(複雑な設定なしに接続できるため)容易、(近距離でのみ通信するため)安全に通信できる特徴を持つ。通信速度は物理層で最大560Mbps、実効速度で375Mbpsを実現する。
試作機とともに積極的にデモンストレーションを展開するのは、ソニーと東芝。それぞれTransferJetコンソーシアムのプロモーター会員であり、PCや家庭用AV機器、携帯電話を中心に、自社の豊富な製品群を軸にした利用シーンの提案と利便性のアピールを行っている。
東芝は、AVノートPC「Qosmio G50」シリーズ、Windows Mobile搭載スマートフォン「T-01A」、ハイビジョンテレビ「REGZA」シリーズの3製品を用い、Transfer JetとDLNAを組み合わせた家庭向けコンテンツシェアリングのシーンを描く。携帯端末とノートPCはTransfer Jet、ノートPCとテレビはLAN(DLNA)を用いて家庭内のデータをそれぞれの機器で共有できるイメージだ。
ソニーは、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケションズ製端末「Cyber-shotケータイ S001」にTransferJetモジュールを内蔵した試作機で、人と人、人と店などが“触れ合い”ながら利用するシーンを目指したデモを行う。現在、携帯電話に備えるFeliCaやQRコード認識機能で情報を取得できるサービスはいろいろ存在するが、非接触ICサービスと変わらない使い勝手で、よりリッチなデータを即座に取得できるとなると「今後、今まで思いつかなかった新しいサービスが続々生まれてくる可能性も高い」と期待を込める。
なお、TransferJetはFeliCaとも共存可能だ。FeliCaと使い方は似ているがそれに置き換えるものとは想定しておらず、どちらかというと赤外線通信機能の代替となりえるだろう。ちなみにソニーが今回展示した試作機はTransferJetチップを納めたカバーが少し盛り上がっているが、「あくまで既存の端末に機能を追加したため。携帯メーカーの技術があれば違和感なく内蔵できるであろう──ほどのモジュール小型化は可能で、技術的にはほぼできあがっている」とのことだ。
TransferJetの当面の目標は、早期の規格策定と内蔵機器の実製品化だ。TransferJetコンソーシアムのプロモーター会員には、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルなどの携帯電話事業者や、ニコンやオリンパスイメージングなどのカメラメーカーなども含まれる。携帯電話やPC、AV機器、デジタルカメラ・ビデオカメラ、ポータブルメディアプレーヤーなど、“あれば、かなり便利になりそうだ”と思える製品群、思い描けてしまうのではないだろうか。「2010年の早期に、国内で搭載製品を出したいと思う」(説明員)。
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