拡張現実(Augmented Reality、AR)とは、コンピュータなどのテクノロジを駆使し、実世界の見え方を補完する技術を指す。どのような形で実現されるかの定義はないが、人間の五感を通じて存在を感じたモノに関する情報を提供したり、あるいは五感に伝える情報を強化したり、といった「現実+α」という方向性は共通している。
ARの概念自体は映画やアニメのほうが先行しており、NHK教育テレビで放映されたアニメ作品「電脳コイル」で使われた「電脳メガネ」は、ARの未来形の1つといえる。かけると周囲のものすべてが怖ろしげに見えるドラえもんの道具「きもだめしメガネ」も、一種のARといえるだろう。
フィクションの世界では「メガネ」の形態で登場することが多いAR技術だが、現段階では、スマートフォンの力を借りて実装が進められるケースが多い。
例の1つが、公開される以前から話題となったiPhoneアプリ「セカイカメラ」。iPhone内蔵のカメラでなにかを映すと、ネットワーク経由で検索された関連情報が吹き出し(タグ)として表示されるなど、現実世界にはないコンテンツを重ねて表示する機能が特徴だ。街中でiPhoneをかざせば、内蔵のGPSで現在位置を測定し、その付近にある位置情報に関連付けられたコンテンツ(エアタグ)を表示する。iPhoneとAndroid端末向けのアプリ「Layar」も、カメラで映した画像を識別し施設情報など関連コンテンツを重ねて表示するなど、方向性は共通している。
一方ではまったく異なるタイプのARも登場している。2008年に発売された「電脳フィギュア ARis」は、Webカメラの前に立方体「電脳キューブ」を置くと、PC画面上に3Dの電脳メイドが現れ、スティック「電脳スティック」をその直方体に近づけると画面上の電脳メイドが反応する。また、立方体をWebカメラへ近づけると、見え方も変わるなど、これまでとは異なる“画面の中との距離感”を提供する。現実を拡張するといっても、五感を備える人間のこと、アプローチはいろいろあって当然だ。
スマートフォンが先導する形で実装が進むAR技術だが、高度な画像処理が可能な小型チップが多数存在するいま、今後デジモノ家電における採用が進むと考えられる。例えば、コンパクトデジタルカメラでは当たり前となりつつあるシーン/顔認識機能を応用し、被写体となる動植物や建造物の関連情報をメタデータとしてJPEGファイルに記録できたとしたら……デジモノ家電におけるAR時代は、ひょっとしたらすぐそこかもしれない。
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