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この冬最大の話題作「CELL REGZA」で観るBD「スラムドッグ$ミリオネア」の喧騒と光彩山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.40(2/2 ページ)

» 2009年11月18日 12時28分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 ディスプレイ下に配置された、アルミの引き抜き材を用いた堅牢なエンクロージャー。ここにフォスター製8センチパルプコーンのダブル・ウーファーと3センチソフトドーム・ツィーターの2Wayシステムをステレオ配置し、急峻な遮断特性を持つデジタル・チャンネルデバイダーで帯域分割し、マルチアンプ駆動するという本格設計。確かにその音は、じつにクリーンで伸びやかなもの。アンダースピーカー・タイプと思えない音の広がりも出色だ。

photophoto ウーファーとツィーターを合わせて7ユニット搭載したCELL REGZAのスピーカー。ツィーターは、30ミリ径テトロン素材のソフトドームタイプ

 興味深いのは、外部スピーカーを用いて本格的な5.1chシステムを構成するときに、AVセンターのライン出力をつないで、このREGZAスピーカーをセンター用として使えること。その場合、左右のトゥイーターへの信号は遮断され、エンクロージャー中央のトゥイーターが生かされる設定になる。つまりクアトロ(4基)ウーファー構成の本格センタースピーカーが誕生するわけだ。テレビのスピーカーをマルチchシステムのセンター用として活用するという画期的な提案は、ぼくの知る限りバング&オルフセンの「ベオビジョン」以来である。

 実際にペアで20万円から100万円というハイファイ用スピーカーを各種組み合わせて3.0ch試聴を行なってみたが、そんな高級スピーカーとの組合せでもほとんど違和感を抱かせない素晴らしい音を聴かせてくれ、改めてREGZAスピーカーの実力の高さを実感したのだった。L/R 用スピーカーとのヴォイシング(音色合わせ)には本機に内蔵されたデジタル・イコライザーが有効。100 万円前後の超高級スピーカーとの組合せでは、3.3kHzを少し持ち上げるとスムースに音色がつながった。

 100万円という想定価格に相応しい意匠の充実ぶりにも触れておきたい。スタンドの脚部を含め徹頭徹尾直線で構成されたフラットでスクエアなアピアランス。そんなミニマム・デザインでは、使われる素材の質が厳しく問われるが、55X1ではベゼルにヘアラインが描き込まれたアルマイト処理のアルミが採用され、高級感あふれるたたずまいを獲得している。

 東芝のテレビでキャビネットに高価なリアル・メタルが採用されたのは初めてのこと。よく見ると、このベゼルは面取りされており、入射光を外へと逃がす工夫が盛り込まれているのが分かる。まさに飽きのこない、長年付き合えあるギミックのない仕上げといえるだろう。

photo BD「スラムドッグ$ミリオネア」は、4935円で販売中。発売元はメディアファクトリー。(C)2008 Celador Films and Channnel 4 Television Corporation

 さて、そんなCELL REGZAでぜひ観てみたい映画BDがある。今年のアカデミー賞授賞式で作品賞・監督賞をはじめ8部門でオスカーを獲得した「スラムドッグ$ミリオネア」である。

 個人的には今年出会った新作映画のなかで、もっとも面白かったのがこの作品。なるほど、さく裂するこの映画のパワーにハリウッド業界人が圧倒されたのも無理はない。インドの大都市ムンバイの、汚辱に塗れたゴミためのようなスラムで、すばしっこく生き抜く2人の少年と1人の少女。英国人監督ダニー・ボイルは、生ぬるい感傷や同情を寄せることすらためらわせる彼らのたくましい生命力を躍動感溢れるカメラワークで力強く活写する。

 インド庶民がハードな日常をほんのひととき忘れるための夢装置「クイズ・ミリオネア」で、難問を次々にクリアして大衆を熱狂させるジャマール少年。スラム育ちの無学の彼がなぜ正解を平然と言い当てられるのか、映画はカットバックの手法で彼が歩んできたタフな道のりを丹念に、リズミカルに描いていく。そして、映画史上最高に美しいキス・シーンと思えるエンディングで映画は大団円を迎える。

 舞台となるスラムはまさにゴミためのような不潔さだが、原色を随所に散りばめ、激しい陽光が降り注ぐムンバイならではの「混沌の美」として描かれる。そして、55X1ならではの輝くような白と深く沈む黒の表現力が、ムンバイのダイナミズムを鮮烈に表現するのである。

 ドルビーTrue HD5.1ch収録の音響もすさまじく、ムンバイの喧騒を見事に表現したSEとインディアン・ポップの香気漂うビッグ・ビートの気持ちよさ。これはぜひセンタースピーカー・モードを用いて外部スピーカーと組み合わせ、本格的なサラウンドシステムで楽しみたい。

 画質・音質というテレビの基本性能を追求しながら、圧倒的な録画能力と快適な操作性を実現したCELL REGZA。2009年のAVシーンを華やかに飾る超弩級モデルとして注目したい。

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