東芝が12月10日に発売した「CELL REGZA」は、かなり非常識な薄型テレビだ。「Cell Broadband Engine」を頭脳とし、3Tバイトものストレージに地デジ8チャンネルを1日ぶんまるごと録画する。新しいLEDバックライトを用いた画面は500万:1のコントラスト比を実現し、ボディー全体にアルミニウムをまとった。実売想定価格約100万円というのもうなずける仕様だが、常識的なおこづかいでは手が出せない。
一見普通に見えるのに、実は非常識な部分もある。「CEATEC JAPAN 2009」のリポートでも触れたが、CELL REGZAのスピーカーはそれまでとは異なる方法で理想を追い求めた結果。幅1.3メートルの細長いアルミキャビネットに7つのユニットを収め、マルチアンプシステムで駆動する。しかも、HDMIリンク機能付きのAVアンプと組み合わせると、自動的にセンタースピーカーとして動作するという、従来にない機能も備えた。
今回は、ほぼ製品版の「CELL REGZA」にヤマハのAVアンプとスピーカーシステムを組み合わせて試聴(→「CELL REGZA」はマルチチャンネルもよく似合う)するとともに、REGZAシリーズのキーマンである東芝デジタルメディアネットワーク社の本村参事、そしてスピーカーの開発を担当した東芝デジタルメディアエンジニアリングの桑原光孝氏に、改めて開発の経緯を聞いた。
レビュー:この冬最大の話題作「CELL REGZA」で観るBD「スラムドッグ$ミリオネア」の喧騒と光彩
閻魔帳:CEATECに見えた、“非日用品”テレビを目指す2つの潮流
インタビュー:圧倒的な頭脳に見合う“音”とは? 「Cell REGZA」のスピーカー
詳報:圧倒的な“頭脳”で何をする? 「Cell REGZA」詳報
ニュース:圧倒的な“頭脳”を持つテレビ「Cell REGZA」登場
――改めて、CELL REGZAのスピーカー開発に桑原さんを指名した経緯を教えてください
本村氏:東芝は「バズーカ」の時代からテレビの音にも力を入れてきましたが、どうしても脇役になっていたのは事実です。そして薄型テレビの時代になってから、スピーカーは“脇役に徹していた”と言ってもいい。“インビジブルスピーカー”という、完全に物理の法則に従っていないものも作っています。ですから音に関しては、『リベンジしたい』と思っていました。
究極の理想であるCell TVを作るにあたり、テレビの常識にとらわれない人が必要だと考えました。もちろん、テレビの開発チームにもオーディオ担当者はたくさんいますが、どうしてもテレビの常識から抜け出すことが難しい。でも、それでは“テレビの非常識”が作れません。
社内の各部署で「オーディオに詳しい人を知らないか?」と聞いて回ったところ、誰に聞いても桑原の名前が挙がりました。ご存じの通り、彼はAV評論家の方々と真正面からオーディオ談義ができる人です。もちろんDVDレコーダー開発のキーマンですから、借りるのは難しいことも分かっていたのですが、「面白いことがあるんだけど、遊ばない?」と本人を誘って、ちょっとだけ貸してもらいました。
桑原氏:参加するときに受けたお話は、「音の良いテレビをどうしても出したい」ということでした。制約は割と少なかったのですが、それでも100万円のスピーカーを作るのとは違いますから、あるバランスの中でネタ出し(構想を練った)しました。
まず、インビジブルスピーカーはあり得ない。外に出しましょう、と。でも、実際に音のイメージができたのはCELL REGZAの画を見てから。画を基準にして音作りを進めました。
――音を重視した場合、アンダースピーカーというスタイルには違和感を感じます
桑原氏:本来、スピーカーは左右に置くのがいいのは当然です。実際、私が加わったときにアンダースピーカーのデザインモックアップが完成していたのですが、「サイドスピーカーにしたい」と言ってサイドスピーカーのモックアップも作ってもらったんです。当初はサイド、アンダーの2つを並行して進めていました。
しかし、デザイナーの1人が『サイドスピーカーは昔からある。アンダースピーカーで新しいものが見せたい』と強い意志を持っていたので、それなら“アンダースピーカーならではのメリット”を探してみよう、と考えました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR