今もっとも話題のカメラといえば、リコー「GXR」が筆頭にあがる。コンパクトデジカメでありながらレンズ交換に対応。いや、レンズだけでなく撮像素子と画像処理エンジンも一緒にユニット交換できる、斬新なアイデアのカメラである。
システムの第1弾として、2つのユニットがボディと同時に発売になる。ひとつは、50ミリ相当の単焦点レンズにAPS-Cサイズのセンサーを組み合わせたユニット「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」。もうひとつは、3倍ズームレンズに1/1.7型センサーを組み合わせたユニット「RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC」だ。いっぽうボディ側には、液晶モニタやSDカードスロット、バッテリなどを装備する。このボディと1つのユニットを合体させることで、1台のカメラとして成立する。
それにしても、どうしてレンズ交換式ではなくユニット交換式なのか。ユニット交換にはどんなメリットがあるのか。GXRの商品企画担当者に話を聞いてみよう。登場いただくのは、リコー パーソナルマルチメディアカンパニー 企画室 商品企画グループ 技術主任 福井良氏だ。
――ユニット交換の発想の原点は?
福井氏: 当社のこれまでの製品には、単焦点レンズを搭載し画質にこだわった「GRシリーズ」や、拡張性を追求した「GXシリーズ」などがあります。GRシリーズのユーザーからは、もっと大きな撮像素子を採用できないのか、28ミリ相当以外のレンズはできないのか、といった意見をいただいていました。またGXシリーズのユーザーからは――例えばレンズ交換のような――更なる拡張性を求める声がありました。
しかし、仮に大型のセンサーや別のレンズをGRに採用すると、あのコンパクトサイズには収まらず、われわれが考えるGRではなくなってしまいます。そこで、GXシリーズの拡張性を徹底して突きつめた形として、ユニット交換というアイデアが生まれました。これまでは一眼レフでしかできないと思われていたことと、コンパクトデジカメでしかできなかったことを融合させ、ユニット交換によってコンパクトデジカメの世界から外へ踏み出していく狙いがあります。
――レンズ交換という発想にはならなかったのですか?
福井氏: 企画当初にさまざまな検討がありましたが、その中で「リコーへの期待って何だろうか」と考えました。当社は、一部のユーザーから「いい意味でヘンタイ的な、変わった思想のカメラを出すメーカー」と言われることがあります。そんな会社が、普通のレンズ交換式カメラを出して果たして面白いのか、それがユーザーの期待に応えることになるのかと。
同時に、レンズ交換式が本当にベストな形なのか、という疑問もありました。フィルムの時代はそうだったかもしれません。しかしデジタルの場合、レンズだけが画質を決めるわけではありません。レンズと撮像素子、画像処理エンジンの3つが重要です。しかも、当社にはレンズの資産がありません。だからこそ、すでに市場にあるレンズにとらわれず自由な発想をすることが、結果的にユーザーの期待につながると考えたのです。
――ユニット交換のメリットは?
福井氏: 1つ目は、画像を作ることにかかわる、レンズと撮像素子、画像処理エンジンの3つを一体化して、それぞれのベストなマッチングを作り込んだ状態で提供できることです。GXRの画質に対する完成度は非常に高いと思っています。
2つ目は、レンズだけでなく撮像素子も交換することで、撮影のシーンや対象によって、撮像素子の特性に応じた最適な使い分けができることです。例えば、被写界深度が浅くなる大きな撮像素子では、ポートレートなどの背景をぼかした表現ができ、被写界深度が深くなる小さな撮像素子では、街並みのスナップなどを機動力を生かして撮る際に有利になります。
さらに3つ目のメリットは、カメラユニット以外の拡張性です。これまでは撮影することがカメラの目的でしたが、GXRのユニット交換では、たとえばプリンタやプロジェクターなどの出力機器、データ保存用のストレージに変身できるなど、今までにない展開が考えられます。
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