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» 2010年02月15日 11時00分 公開

永山昌克インタビュー連載:大都会にも大自然にも似合う“男のカメラ”――「EXILIM G EX-G1」開発者に聞く (2/3)

[永山昌克,ITmedia]

GブランドとEXILIMブランドの融合

――カシオの耐衝撃ブランド「G」といえば、腕時計「G-SHOCK」と携帯電話「G'z One」が広く知られてます。これらの製品とEX-G1との間に、デザインやコンセプトの面で、関連性や共通点はあるのでしょうか?

長山氏: メディアなどのさまざまな場所で、EX-G1を「G-SHOCKカメラ」という言い方で取り上げられるケースがありますが、それは非常にありがたいことです。G-SHOCKブランドは当社の財産だと思っていますから。海外では、カシオという社名は知らなくても、G-SHOCKは知っているという人がいるくらいです。

 そんなG-SHOCKブランドを意識しつつ、敬意をはらいながらEX-G1の開発を進めました。もちろん、G-SHOCKという時計のデザインをそのままカメラに落とし込んだわけではありません。時計や携帯電話とは異なる、カメラはカメラとしての耐衝撃性能があり、その中でブランドのスパイスやニュアンスをどう表現するか、という作業でした。

 ただ、デザインをする上での、ものづくりの意識としては、時計の場合もカメラの場合も、耐衝撃という機能を達成するための形状やデザインは必然的に表れてきます。例えばG-SHOCKのごつい形には、どの方向から落としても耐えられるという意味があります。EX-G1の場合も、左右非対称のデザインや、ボタンの配置や形状などはすべて、利用シーンを想定して必然的に出てきたものです。

――EX-G1のデザインの狙いは?

橋本氏: 開発にあたって、まず2つのプロポーザルモデルを作りました。タイプAは「Modern(モダン)/Tough(タフ)」というキーワードを持つデザインです。タフという言葉は昔からある頑丈なイメージですが、そこに近代的な表現として、すべてをカプセルでくるむようなイメージを追加しました。モチーフとしては、車のエンジンやSUV、工具のインパクトドライバーなど、耐衝撃性を連想するような強さを持ったものが挙げられます。

photo 2008年ごろに提案された2つのモックアップ。左が「Modern/Tough」というキーワードのタイプAで、右が「Sleek/Mechanical」というキーワードのタイプB。このうちBが、EX-G1の原形となった

 タイプBは「Sleek(スリーク)/Mechanical(メカニカル)」というキーワードのデザインです。メカニカルとは、例えばダイヤル部分のように何を動かすための操作にかかわる部分です。そのメカニカルな構造を持ちながら、単に無骨に仕上げるのではなく、つるっとした印象のスリークという言葉を組み合わせ、見る角度によって表情が変化する、美しくて強い要素を持ったデザインを狙いました。そして、さまざまな議論と検討を重ねた結果、タイプBを原案として、今回のEX-G1へと昇華させた、という経緯になります。

必然性から生まれた左右非対称デザイン

――開発の流れとしては、まずデザインを決定し、そこから機能などの仕様を決めていったということでしょうか?

橋本氏: はい。当初のモックアップは、さらに一回り小さく薄いものでした。その絞り込んだ造形の中に、各種のデバイスをどうレイアウトするか、非常に苦心しました。スペックだけを重視して各デバイスを効率よく収めると、形はふつうの四角形になってしまいます。しかしEX-G1は、“造形を導く”ようなデザインを意識して生まれた形です。カメラという道具では、とっさに訪れるシャッターチャンスをとらえようとしたときに、確実に必要な機能が必要な場所に、あるべき形で存在するはずです。そんな手が求める造形を構築し、その造形にこだわりました。

photo 2007年ごろに、スリムな防水モデルとして提案されたモックアップ

――カードスロット開閉用のダイヤルや、シャッターボタンの周辺の形状など各部のデザインがユニークですね。

橋本氏: カードスロット部のスクリューロックは、グローブをした手や、泥や水が付いた手、かじかんだ手など、どんな状態でも確実に回せるように考えた形状です。また、シャッターボタンの周りに設けた溝のようなデザインは、落下時のガードの働きを持つと同時に、グローブをした状態でも、すぐにシャッターの位置を認識できるように配慮した造形です。

photo 製品版のEX-G1。堅牢なデザインのスクリューロックや、グローブをはめたままでも位置が分かるシャッターボタン、上下左右で形や高さが異なるカーソルキーなどに注目

 細かい点では、液晶を下に向けてカメラを地面に置いた際、砂などが液晶面に直接触れないように、液晶の周辺にはそりあがった部分を設けたり、目を閉じてカーソルキーを操作した場合でも、キーの四方向で均等なクリック感を実現できるような形状にする、といった工夫もしています。さらに付属品として、2タイプのプロテクターを同梱しました。このプロテクターは耐衝撃のスペックアップを図れるほか、幅広のストラップを装着可能になります。

photo 標準の状態(左)と、付属のプロテクターを取り付けた状態(中央、右)

――バッテリスロットの開閉がかたい点が気になりました。

橋本氏: 落下した際の瞬間荷重がものすごく大きいため、それに耐える高硬度のダイキャスト製のふたを採用しています。非常に気密性が高いため、開けにくい状況ですが、専用のオープナーを標準付属しました。

photo EX-G1に付属するストラップと、電池カバーを開けるためのオープナー

――レンズバリアを装備するのは不可能でしたか?

橋本氏: 検討はしましたが、泥だらけになった際に、カバーに砂がひっかかる問題があるため、割り切って省略しました。また、着脱式のレンズキャップを付けるアイデアもありしましたが、過酷な状況での使用シーンを考えると、キャップの着脱という行為がスマートとはいえないため、見送りました。その代わりに、表面のガラスには特殊なコーティングを施し、キズが付きにくい硬質な状態に仕上げています。

――黒と赤の2色のカラーバリエーションの狙いは?

橋本氏: 黒のモデルは、イメージとしては鋳物のような固い堅牢性のある質感を狙っています。ステンレス外装の上に、強靱(きょうじん)な黒い皮膜を持つ焼付け塗装を行い、その中にはガラスの粒子を入れ、角度を傾けると表情が出るような工夫をしています。

 同じく赤のモデルも、鮮やかな色でありながら、角度によって色の深みが変化して見えるように仕上げました。この赤は、落としてもはがれないようにパネルにしっかりとくい付き、十分な表面硬度を確保できるように、3コートの焼付け塗装を行っています。これらは、職人の方たちとディスカッションを重ねながら、色彩と質感に徹底してこだわって作り込んだ部分です。

photo ぼう大な時間をかけてトライ&エラーを繰り返し、スタッフ全員の力で製品化することができました。デザイナー冥利に尽きます(橋本氏)

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