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4K×2K始動、CEATEC会場のファーストインプレッション野村ケンジのぶらんにゅ〜AV Review

» 2011年10月06日 13時00分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
「CEATEC JAPAN 2011」は幕張メッセで開催中

 映像が、また新たなる進化を迎えようとしている。フルHD時代になったのがついこの間のようにも思えるかもしれないが、もはや次の波がすぐそこまで近づいているのだ。なかでも最大の注目株といえるのが、4K×2Kである。

 アメリカでは単純に「4K」とも呼ばれるこの4K×2Kは、3940×2160(デジタルシネマ標準規格のDCIで定めらた4096×2160というものもある)ピクセルという、フルHDの4倍もの高解像度を誇る映像を持ち合わせている。インタフェースのほうは、2009年に定められたHDMIのver.1.4で規格化されており、一部のAVアンプやHDMIケーブルなどで対応がスタートしている。

 とはいえ、まだまだ一部の製品カテゴリーが「先を見越して」対応をうたっているだけで、実際のスタートまではまだまだ先の話だろうと考えられていた。しかし今回のCEATECにおいて、ディスプレイやフロントプロジェクターなど、AVシステムの要となるカテゴリーから、製品のアナウンスが行われたのである。これによって、がぜん4K×2Kは現実味を帯びてきた。会場では、シャープ、ソニー、東芝の3社が4K×2Kのテクノロジーを披露しているが、そのうちソニーと東芝に関しては、具体的な発売時期も紹介された。早ければ年末には4K×2Kのディスプレイを家庭で利用できるのだ。

 コンテンツの供給がどんな手段によって行われていくかという問題もあるため、いま「4K×2K時代到来」といい切るのは気が早いと思うが、4K×2K時代が“来つつある”ことは確実だ。数年後、60インチクラスの大画面テレビが軒並み4K×2K対応になっていることは容易に想像できる。

 さらにコンテンツに関しても、業務用のビデオカメラや映画館の上映システムがすでに4K×2Kへとステップアップしつつあるため、先の供給メディアの問題(本命は配信となるだろう)さえうまくクリアすれば、SDからフルHDへ移行したときよりもスムーズに行われる可能性だってある。しばらくはフルHD映像のアップコンで4K×2Kの実力を確認するになるが、そう遠くない未来に、4K×2Kネイティブの美しくリアルな映像を、大画面で堪能できるようにはず。そんな明るい未来を、今年のCEATEC JAPANでは垣間見ることができた。

 さて、ここからは具体的な4K2K対応3製品の概要と、会場で確認したそれらの実力のほどを紹介していこう。

東芝 REGZA「55X3」

 コンシューマー向けとしては世界初の4K×2K対応液晶テレビとなる東芝「55X3」は、3840×2160ピクセルという解像度を誇り、裸眼立体視の「グラスレス3D」も実現しているハイスペックモデルだ。

 4Kパネルの実力を最大限に発揮するため、その内部にはさまざまな工夫が凝らされている。まずバックライトは、直下型のLEDを採用し、縦12、横20の合計240ブロックに分割。映像エンジン「レグザエンジンCEVO Duo」との組み合わせできめ細やかに明るさを制御している。いっぽうで動画性能に関しては、前後のフレームから予測した補間映像を挿入し毎秒120コマで表示しつつ、12分割のバックライトスキャンを活用することで、毎秒240コマ相当の動画応答性を実現する「アクティブスキャン240」を搭載。これらにより、4Kならではの精細でリアルな映像を引き出しているという。

 一方の「グラスレス3D」は、レンチキュラーシート方式を採用する。こちらは昨年20V型モデルで披露したものの進化版だが、液晶パネルの前面に配置されたレンチキュラーシートにより9方向へ映像を送り出し、その視差で立体映像を作り上げる。これにより、3Dグラスなしでも3D映像を楽しめるようになったほか、2Dと3D表示の切り替えが簡単に行えるようになった。また視聴位置に合わせた調整も可能となっている。3D再生時の解像度は1280×720ピクセルとなる。

東芝「55X3」

 CEATECの東芝ブースには複数の「55X3」が置かれ、比較的良好な環境でのデモンストレーションが行われていた。その映像は、まさに新体験。55インチながら、近くで見てもドットを識別するのが難しいくらい解像度は細やかで、映像のリアリティーが格段に上がっている。これに比べると、あんなに精細と感じていたフルHD映像が、ねむく、ぼんやりした映像に思えてしまうから不思議だ。

 いっぽう、「55X3」本来の実力がより発揮されるであろうフルHDから4K2Kへのアップコンバート映像もなかなかのものだった。フルHDではぼんやりとしていた遠景の山々の様子が一変、葉の一枚一枚まで識別できそうなくらい、精細感が向上した。それでいてエッジが立ちすぎず、あくまでも自然な風合いに表現されているから素晴らしい。4倍もの画像情報になったことをものともせず、これまでと同様に東芝らしさを発揮している点は、さすがといえるだろう。発売は12月中を予定している。

ソニー「VPL-VW1000ES」

ソニーブース

 ソニーからは、コンシューマー向けプロジェクターとして世界初となる、「VPL-VW1000ES」が発表された。SXRDというパネルの名称は変わらないものの、その内容は大幅に進化。サイズをフルHDの0.61型から0.74型に拡大し、画素ピッチも従来の7マイクロメートルから4マイクロメートルへと微細化することで、4K×2Kを実現している。またソニーらしいポイントといえるのが、4K2KでもQFHD(Quad Full High Definition)とも呼ばれる3840×2160ピクセルだけではなく、DCIの4096×2160ピクセルにも対応していることだ。業務用デジタルビデオカメラや劇場用プロジェクターを手がけるソニーならではのスペックだが、これにより「映画館そのまま」の映像が楽しめる期待が持てる。

 なめらかで奥行き感、臨場感のある高精細映像を実現する学習型の映像エンジン「データベース型超解像LSI」や、周辺部の光量落ちや投射距離の違いによる変化を最小限に抑えた「ARC-Fレンズ」など、4K2Kにふさわしいスープアップが随所に行われているが、同時にRGB各色にそれぞれSXRDパネルを配する3板式の採用をはじめ、デジタルシネマ映画館と同等の広色域を実現するカラーフィルター、諧調表現を最適化する信号処理「アドバンストアイリス3」による最大100万:1というコントラスト比の実現など、あらゆるパートで基本体力の向上が押し進められている。

「VPL-VW1000ES」

 その進化のほどは、わずかな時間(10分に満たない)の試聴でも充分に感じ取ることができた。4K×2K映像はそのものがフルHDに対して高いリアリティーを持つが、VPL-VW1000ESに関してはこれまでのプロシェクターと桁違いの鮮鋭感を持ち合わせている。SXRDはもともと画素同士の隙間がほとんどなかったが、それに4K×2Kの解像度が加わることで、境界線はドット表示というよりも、すっと線を描いたかのような表現になった。さらに風景などを見ると、近くは精細に、そして遠方はほどよいボケ感を感じる、撮影したカメラの特徴がそのまま伝わってくるかのよう。この表現の豊かさこそ、VPL-VW1000ESならではの素晴らしさといえるだろう。発売は12月を予定。

シャープ 「ICC 4K 液晶テレビ」

 こちらはまだ具体的な製品ではなく、あくまでも技術としての発表だったが、早ければ2012年の半ばに発売が予定されているのが、シャープの「ICC 4K 液晶テレビ」だ。

 こちらは4K2KパネルにI3(アイキューブド)研究所の信号処理技術「ICC」を組み合わせ、優れた質感をもつ映像表現を追求したもので、60インチ以上の画面サイズを想定しているという。

「ICC 4K 液晶テレビ」の展示

 論より証拠、実際の映像を見てみると、とにかく輝度の高さが素晴らしい。これまでの映像では、ものの光り輝く表現がどうしてもパネルの明るさ頼り(液晶の場合はパネルの透過率に加えてバックライトの明るさ)になる傾向があり、多くの製品で、いまひとつピークが伸びきらない傾向があった。それがこの「ICC 4K 液晶テレビ」では、明らかに「まぶしさ」まで表現し切れているのだ。これにはかなりのインパクトを感じた。まぶしいものがまぶしく表現されるため、リアリティーは格段に向上する。製品化を、大いに期待したい。

 一方シャープでは、「ICC 4K 液晶テレビ」に加えてNHKと共同開発した8K×4Kディスプレイも展示されていた。4K×2Kのさらに4倍という画素数は、もう既存のディスプレイとはカテゴリーが異なるのでは、といいたくなるくらい、リアルな画像を再現してくれる。こちらもぜひいちど体験しておくべき未来像の1つだ。

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