麻倉氏:デジタル放送が当たり前になり、テレビは単にハイビジョンに対応していれば売れる時代が終わりました。さらに機能性が求められています。世界的に見ると、ネットコンテンツを視聴できる“スマートテレビ”という動きもありますが、それだけでは以前からある“インターネットテレビ”と変わりませんよね。とくに日本市場は放送というジャンルが強いので、それをうまく生かせるスマートテレビじゃないとうまくいきません。
今年登場した東芝の「TimeOn」(タイムオン)は、全録をベースにしたクラウドサービスです。たくさんある放送コンテンツの中からテレビがユーザーの嗜好にあったものをレコメンドするというものです。さらに番組単位でなく、番組のコーナー単位で見せてくれます。例えば「ももいろクローバーZ」が好きなら、歌番組だけでなく、ニュースの話題として放送されたときも教えてくれます。これは、テレビの革命といってもいいくらいのインパクトがあります。
もっとも、番組を推薦するのではなく、コーナー単位のつまみ食いを可能になるのですから、テレビ局からみるととんでもない話かもしれません。実際、某テレビ局の担当者が落胆していたので、私は「それだけではない」と教えてあげました。ユーザーが知らない番組も推薦してくれるのですから、番組を発見してもらうための大きな武器になる。そう言うと、彼はよろこんで手帳にメモしていました。
「全録」というと、それだけでテレビ局は毛嫌いする傾向がありますが、きちんと説明してあげると局側にも十分なメリットがあることが分かります。今は個人の自由な時間を、スマートフォンやPC(=ネット)とテレビが取り合っている時代です。テレビ局は、より多くの番組を視聴者に知ってもらうことが重要でしょう。
ユーザーから見ても、タイムシフトや全録に続き、TimeOnはテレビをより自分に近づけるための武器になります。日本型スマートテレビの形として今後の展開にも注目していきましょう。元祖スパイダーもいよいよ民生用の登場らしいです。
麻倉氏:第7位は、JVCの4Kプロジェクター「DLA-X95R」です。2011年にソニーとビクターが初の4K対応プロジェクターを出し、今年は第2世代となりますが、ソニーはプロジェクターの新製品がありませんでした。ですから唯一のアップデートされた4Kプロジェクターということになります。
私がDLA-X95Rを推薦する理由は、画期的な画質調整機能です。プロジェクターが4Kになっても、まだコンテンツは2Kのアップコンバートがメインで、4KマスターのBlu-ray Disc作品などから超解像技術でうまく4Kらしさを引き出すことがポイントです。ただ、昨年の製品では、すべてがシャキッとしてしまうことが気になりました。例えば映画で、わざとボカしている背景にもピントが合ってしまうこともあります。これではディレクターズ・インテンション(制作者の意図)から外れてしまいますね。
今年の製品でJVCはそれを大胆に改善しました。入力信号を分析し、ボケてるところにはあまり超解像をかけないという選択的な動作をします。これによってディレクターズインテンションを壊さず、2Kコンテンツを4Kにうまく入れ込むことができました。コンテンツを考えてコントロールすることは、とても重要です。そこにJVCが気がついたことにより、4Kと超解像が第2世代らしい“大人の超解像”になったのです。実際の映像を見ても、表現力はかなり向上したと思います。
――後編では6位からカウントダウンしていきます。
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