麻倉氏:これまでも何度か取り上げてきたシャープの“ICC 4Kテレビ”が、ついに「ICC PURIOS」(アイシーシー・ピュリオス)というブランド名で製品化されます(型番はLC-60HQ10)。これまで、試作機が注目集めたものは最終製品で“いまひとつ”というケースも多かったのですが、今回は製品版でさらにすごい映像を見せてくれました。
改めて説明しますと、ICC(Integrated Cognitive Creation:統合脳内クリエーション)は、人の視覚が光の反射で風景や物体を認知する仕組みを応用し、入力された映像信号を再構成する“光クリエーション技術”です。編集や圧縮というプロセスを経た信号を、「カメラを通さず、その場で見ているような情報」に変えてくれます。粗い映像を見ると、人間は脳内で補間しようとして疲れてしまいます。それが生じない自然な情報を持つ映像を作ってくれるというイメージです。
今回の評価ポイントは、画質もさることながら、近藤さん(アイキューブド研究所の近藤哲二郎代表)の厳しい要求に応えたシャープ技術陣です。RGBの直下型バックライトを採用していますが、ローカルディミングではなくユニフォミティー(輝度均一性)の方面に活用し、これまでの水準をはるかに超えたものを作りました。これは、垂直統合型の良い面といえます。
事前に心配していたのは、映画の画質がどうなるのかという点でした。制作者がわざとボカしている部分まで精細に映してしまってはいけませんが、「ICC PURIOS」では、「映画モード」にてICCの効果をコントロールしています。また「精細感」と「コアリング」というパラメーターを設け、ユーザーも調整できるようにするなど、うまく切り分けることができました。
価格は262万5000円とかなり高いのですが、ここを出発点にして、いかにコストダウンしていくかが今後の課題でしょう。いずれにしても、「テレビがここまでの表現力を持てた」という画期的な製品です。
――最後に2012年の総括をお願いします。
麻倉氏:2012年はテレビの販売不振などもあって家電業界には逆風が吹きましたが、4Kテレビや「ざんまいプレイ」のような提案も目立ちました。さらにWAVによるハイレゾ楽曲配信など、映像と音の両方で革新的な動きがあったと思います。前編で触れましたが、今年は“種まき”の年だったといえます。これらが2013年にどのような展開を迎えるのか、大いに期待したいですね。
2012年 麻倉怜士のデジタルトップ10 | |
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第1位 | シャープ「ICC PURIOS」 |
第2位 | BD「アラビアのロレンス」 |
第3位 | ハイレゾ音源配信 |
第4位 | ライカ「X2」 |
第5位 | ソニー「BDZ-EX3000」 |
第6位 | ELAC「400LINE」 |
第7位 | JVC「DLA-X95R」 |
第8位 | 東芝“レグザ”「Z7シリーズ」&クラウドサービス「TimeOn」 |
第9位 | リンの「CLIMAX DSM」+AVアンプ |
第10位 | デノン「AVR-4520」 |
番外1 | ディスクメディアの復権(BDオーディオ、100% Pure LP) |
番外2 | BD「魔女の宅急便」 |
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