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「これ、フツーのヘッドフォンですよ」、「DTS HEADPHONE:X」が結構すごい(2/2 ページ)

» 2013年02月01日 18時39分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 同社では、DTS HEADPHONE:Xの詳細は明らかにしていないが、お得意のポストプロセッシング技術の成果であることは確かだ。しかも、「現在は最大11.1chとしているが、技術的にはもっと増やすこともできる」という。さらに仮想スピーカーまでの距離感もシミュレート可能。今回のデモ環境では、本物のスピーカーの位置に合わせて音源に調整を加えたという。

 そう、先にスピーカーの音を聞かせたのも、外の音が聞こえる開放型ヘッドフォンを使ったのも、すべて「あれ? スピーカーから音が出ちゃってるよ」と体験者に誤解させ、事実を知ったときの驚きを引き出す演出だった。まんまと引っかかってしまったらしい。

 デモの演出はともかく、ヘッドフォンで体験する11.1chは非常に興味深いものだった。普段、ヘッドフォンやイヤフォンで音楽を聴くと、音像は頭の中に定位して聞こえるのが普通だ(脳内定位)。しかしDTS HEADPHONE:Xでは、スピーカーの位置を錯覚させるほど離れた場所に定位する。技術発表時の資料に「サウンドを“外面化”する」とあって首をかしげた記憶もあるが、体験して意味が分かった。余談になるが、ヘッドフォンを使わない人の中には「脳内定位が苦手」という人もいるので、この技術は2chオーディオにも応用できるかもしれない。

まずはVoD、ゲームに

 DTSでは今後、2つの市場に向けてDTS HEADPHONE:Xを訴求していく。1つは動画のネットワーク配信サービスで、テレビ向けのほか、スマートフォンやタブレット向け動画配信も視野に入れている。「Home theater in your Pocket」(HTiP)というコンセプト通り、実現すれば手元のスマートフォンとヘッドフォンだけでシアター並みのサラウンドを楽しめるようになるかもしれない。

 ただし、この場合は出口となるデバイス(STB、スマホなど)にポストプロセッシング技術を導入するほか、コンテンツ側にも事前処理が必要になるという。同社では、「オーサリングについては、DTS-HD Master Audio Suite(DTSが販売しているエンコーダー/オーサリングソフト)のプラグイン的な方法で提供したい」と話している。

 一方、DTSではゲーム機もターゲットにしている。こちらはデバイスの持つ高い処理能力を生かし、コンテンツの前処理なしでサラウンド化が可能になるという。既にモバイル機器のチップメーカーやゲームメーカーとの交渉は始まっており、CESでもクアルコムのブースで「DTS HEADPHONE:X」のデモが行われたという(7.1ch対応版)。なお、具体的な対応製品の発売時期については未定だが、DTSでは「年内をターゲットにしている」と話していた。

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