出口氏が「もう1つのポイント」として挙げたのは、DACが持つデジタルフィルターを使わないこと。「AK32のハイサンプリング処理がいわゆるデジタルフィルターの役割を持っている。通常はDACに入ってるが、独自のAL32でデノンらしいアナログの音を出す」という。平山氏も「もともとDCD-SX1の性能をデスクトップに落とし込んだのがDA-300USBで、“街に持ち出す”のがDA-10。ADVANCED AL32 PROCESSINGありきで音を作ってきた」と話す。それは同社のHi-Fiオーディオ製品の1つであることの証拠でもあるという。
出口氏によると、AL32の効果は“音の立ち上げ時”に分かるという。S/Nが良く、音量も滑らかに上がっていく。16bitと32bitという分解能の違いが“階調性”として感じられるためで、「本当に自然な音が再現できていると思う」。一方、高速処理を行うAL32のプロセッサは電力消費が大きく、ポータブルに導入するために消費電力を抑える工夫を盛り込んだ。例えばDSD再生時には働かないAL32への電源供給をストップするという。
DACにはバーブラウンの「PCM1795」を採用しているが、上記の通りデジタルフィルターなどは使用しないため、純粋にD/A変換を行うだけだ。SX1開発時に「パワフルで音が出しやすかった」ため、継続して採用したという。
このほかにも、低ひずみのオペアンプとディスクリート電流バッファー回路を搭載したヘッドフォンアンプ回路や、44.1kHz系および48kHz系の2種類を独立した発振器で供給できるデュアルクロック、さらにDACに一番精度の高いクロックを供給するための基板デザイン“DACマスター・クロック・デザイン”など、語る部分は多い。
質疑応答で音の感想を求められた野村ケンジ氏は、「最初にチェロの音(DSD 5.6MHz)を聴いたら広がり感が良かった。すごくストレートな音だけど、弦の響きは少し見えづらい」と率直なコメント。さらに得意のアニメソングについては、「ChouChoさん(の曲)が生っぽくて良かった。バンド演奏の空気感が出ていた」という。「原音再生という、デノン本来のイメージ。ただ、発売までにもう1段階、2段階(チューニングを)進めると聞いているので期待したい」(野村氏)。
これを受けて平山氏は、「AL32の開発時から、“空間表現能力”を意識していて、ヘッドフォンアンプでもその音がほしいと意識してきた。発売までに、さらにブラッシュアップしたい」とコメント。一方の出口氏も「発売までの2カ月で追い込みを書けるので期待してほしい。デノンのHi-Fiだと感じてもらえるようにがんばります」と話していた。
「DA-10」は10月中旬に発売予定。価格はオープンプライスだが、店頭では4万5000円前後になる見込みだ。
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