試聴に使ったCDソフトはベット・ミドラーの「イッツ・ザ・ガールズ」だ。米国のポップスが最も輝いていた1960年代のヒット曲を中心に集めたカバー・アルバムだが、オリジナルのテイストを大切にしたアレンジととびっきり音の良い仕上がりがうれしい。プロデューサーはベット・ミドラーと長く仕事を続けてきたアレンジも手掛けるマーク・シャイマン、レコーディング・エンジニアはエド・チェルネイ、そしてマスタリングはダグラス・サックスという強力な布陣である。
今回はそのアルバムの中からエリー・グリンウィッチが作曲し、ロネッツが歌って大ヒットした「ビー・マイ・ベイビー」を聴いてみた。オリジナル曲はフィル・スペクターによるウォール・オブ・サウンドと呼ばれる一世を風靡(ふうび)したスケール感あふれる作りだが、ベット・ミドラーは土台のしっかりした厚みを感じさせるバックの演奏に彼女の歌声が彩を添える。
ヤマハのコンビはそうした色合いを上手に伝えるが、CDプレーヤーの情報量は平均的なので、ややおとなしい感じだ。しかしながらこのスピーカーはくせがなく素直な音を奏でるので、この組み合わせでも安心して音楽に身を委ねることができる。一般的にコンパクトなスピーカーはどこか無理をした感じが残るものだが、そうした振る舞いがないのもこのモデルの魅力を高めているといってもいいだろう。低音域に関してはさすがにサイズに見合った表現力といえなくもないが、不足した印象はなく耐入力が高いこともあってかなりの音圧にも平然と応える。また高域に向かってきつさがないのもこのモデルの優れた部分であり、結果として音楽のジャンルをえり好みしない仕上がりになっているように感じた。
CDプレーヤーやアンプ入れ替えて試聴してみたが、グレードを高めるとアップしただけの反応を示す点でも十分な基礎体力が備わっていることをうかがわせる。ニアフィールドで使ってもいいが、ある程度ボリュームのある部屋でも反応の良いサウンドを再現する使い勝手に優れたスピーカーなので、機会があればぜひ一度聴いてみていただきたい。
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