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初のロボット掃除機なのにスゴイ完成度――パナソニック「ルーロ」誕生秘話滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/2 ページ)

» 2015年03月24日 22時14分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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 センターブラシとサイドブラシを近くに配置できるのも三角形の有利なポイントだ。「サイドブラシでかき集めたゴミが、センターブラシに直接入るので、ゴミを取り逃しにくいことや、センターブラシ自体が三角形の一辺に近い部分に配置できるため、一般的な円形のロボット掃除機と比べて、長めに設計できたことも大きなポイントです」。

手前が製品版のサイドブラシ、奥は試作機のサイドブラシだ

 サイドブラシの各付け根に凹みをつけることで、ゴミを広いながらも、軽めの障害物などは動かさない工夫がなされているほか、センターブラシもV字パターンにするなど、掃除機メーカーとしての細かな配慮がなされているのも特徴だ。

センターブラシにはV字パターン

 「V字パターンを採用することで、集めたゴミが自然と中心に集まるように工夫しましたが、掃除機メーカーのこだわりはそれだけではありません」。パナソニックの掃除機の強さは、キャニスター掃除機などで培われた高い技術にあり、さらには総合家電メーカーとしての底力にある。なかでもセンサー技術というのは、他メーカーの追随を許さないほど精度が高い。その代表格がハウスダスト発見センサーだろう。

 「吸込口内部に高感度赤外線センサーを搭載し、20マイクロメートルの微細なゴミまで検知する『ハウスダスト発見センサー』を採用しました。これはキャニスター掃除機などで採用しているものと同じ精度のものですが、ロボット掃除機に配置するのに、形状は専用に設計をし直しています。これにより、ゴミの量などを判断しながら、吸引力を制御するモーターの回転数や動作速度、パターンなどを連動して5段階で細かく制御でき、バッテリー消費を抑えることにもつながっています」。

さまざまなセンサーを搭載した

 とはいえ、こういった掃除の集塵技術や精度が高くても、ロボット掃除機というのは、結局ゴミのある場所にまでしっかり行かなければ意味がない。つまり、優秀なロボット掃除機は動作こそがもっとも大切だといっても過言ではない。実際、これまでのロボット掃除機のユーザーからも、部屋の隅が掃除できないと同時に、肝心の場所を掃除してくれないという不満の声があがっている。そのあたりについても、ルーロはこれまでのロボット掃除機をしっかりと研究し、弱点を解消している。それがラウンド走行とランダム走行を組み合わせた動作パターンを採用した点だ。

壁を傷つけないように進み、隅を認識すると動作がゆっくりになる

 「ロボット掃除機のユーザーの意見を聞いても、もっとも心配をする声が“部屋の隅までちゃんと掃除してくれるのか?”という点でした。だからこそ、ルーロは、充電器からまずスタートすると、前方の赤外線センサーと超音波センサーで、壁際との距離などを正確に測って、部屋の壁を認識。壁際から隅、さらに壁際を進むラウンド走行を最初に行うことから始めます。壁際を進む時にはギリギリまで近づくけど、むやみに当たらないという配慮をしながら、壁を傷つけないように進み、隅を認識すると、動作がゆっくりになり、念入りにブラシを回しながら掃除をします」。

 その後、ランダム走行へと切り替わり、掃除をした部屋の隅を中心としたエリアを徹底的に掃除した後、次の壁を見つけてはどんどん広範囲を掃除していく。これにより最大60分連続稼動した後、充電器へと自動的に戻る。

 一方、これだけではまだ足りないという意見もある。例えば、人間の生活する部屋というのは、実は汚れるところが決まっている。部屋のなかでも人がよくいる場所は汚れるし、狭く入り組んだ場所やテーブルや家具の下などにはホコリやチリが溜まりやすいが、そういうところに限って、意外とロボット掃除機が行ってくれなかったり、苦手とすること場合も多い。パナソニックのルーロはどうか?

 「そのあたりもユーザーの声で聞かれたことですが、パナソニックはエリアメモリー機能で対処することにしました」。

付属のリモコン

 エリアメモリー機能とは、リモコンで予め充電器から掃除してほしい場所までのルートを覚え込ませ、その機能を使えば、必ずその位置まで進み、あたりを入念に掃除をしてから、通常走行に入るというものだ。

低い段差なら乗り越えつつ掃除する

 「こちらはリモコンに2カ所まで記憶させることができます。仕組みについては、別にその場所をマッピングしてピンポイントで記憶するのではありません。ジャイロセンサーや距離計を駆使して、あくまでも充電器から縦にどのぐらいの距離を動いたか、その後横に、さらに縦横どのぐらい動いたかを順番に記憶させることで、最終的にその通りに動くことで、いつでもその地点に辿り着けるという方法を採用しています。なので、充電器を動かしてしまった時は、再度記憶させ直す必要があります」。

 掃除機メーカーとしてのプライドとこだわりを貫き、入念に開発に時間をかけた結果、これまでのロボット掃除機の弱点をすべて解消することに成功したパナソニックの「ルーロ」。三角形という形を採用したのも、他のメーカーと差別化を目的にするとか奇をてらったのではなく、掃除能力を高めるための必然の形だということが理解してもらえたはずだ。

 「ロボット掃除機は、キャニスターの掃除機と違って吸引力の弱さは否定できません。だからといって、人間が掃除するよりもゴミが取れませんでは、認められませんからね。掃除機と名乗る以上、人間が掃除するのと同じ、もしくはそれ以上にしっかりと掃除できてこそ、初めてロボット掃除機の価値があると思うので、ぜひこれまでロボット掃除機を使ったことがない人はもちろん、これまで使ってみて、ロボット掃除機にやや懐疑的なイメージを持つ人にも試してほしいです。きっとそのイメージは覆されるはずですから」。

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