フォーカスはさらに高速になった。
AF-Aで被写体が動いていると判断されたときや、AF-Cにセットしたときは、小さなAFエリア枠がちょこまかと動き回ってくれて、どこにフォーカスを合わせてるかがよくわかる上に演出的にもいい。これはα6000ゆずりだ。
で、以前α6000を使って不満だったのがフォーカス周りの操作系だ。
AFが高速で、AF機能が多彩で、AFモードをたくさん持っている……のはいいが、その切り替えが面倒だったのである。機能は多くてもとっさに必要なものを呼び出せないと意味がない。
マルチAF時に、カメラが狙ったところに合わせてくれない、となったらさっと一点AFに切り替えたい。あるいはボタン1つでAFロックしたい。あるいはさっとMFにしたい。
AFターゲットを動かせるフレキシブルスポットAFは便利だが、AFスポットを移動したいときボタンを何回か押さねばならずとっさに動かせない。
タッチパネルではないので、撮りたいものを触ればOkというわけにもいかない。
こうした点が改善された。
まず「AUTO」や「マルチAF」にしている場合、どうしてもカメラ側の捉えた被写体と撮りたいものが一致しないことがある。そういうときは中央ボタンを押す。すると中央一点AFになるので、そこで目的に被写体を捉えればいいのである。
中央ボタンを押したままシャッターを切らなきゃいけないが、これは便利。
フレキシブルスポットAFや拡張フレキシブルスポットAF(名前が長すぎ)の場合、以前はいちいちAF枠を移動するモードに切り替えなきゃいけなかったが、これも中央ボタンを1度押すと十字キーがAF枠移動になり、もう1度押すと戻る(十字キーがファンクションになる)ので、さっとAF枠を任意の位置に動かせる。
これは素晴らしい。というかもっと前から欲しかった。また、あらたにα7系で採用されているAF/MFとAEロックを切り替えるレバーも付いた。
レバーをAF/MF側にするとボタンを押している間だけMFになるので、AFで狙ったところに合ってくれないと思ったら、この機能を使って臨時MFで合わせちゃえばいいのだ(ただし、ボタンから指を離すと戻っちゃう)。
レバーをAE側にするとボタンでAEロックが可能だが、設定で「AFオン」にすることもできる。いわゆる「親指AF」が可能になるのだ。親指で押したままシャッターを切らなきゃいけないが、慣れると便利だ。
いくらAF機能が豊富でも使いたいときに使えなければ意味がないわけで、そこが改善されたのは嬉しいのである。個人的には、拡張フレキシブルスポットAF+ロックオンがなかなかα6300のAF性能をフル稼働させられて面白い。前述の走る馬の連写写真もそれで撮影した。
動画撮影機能は4K動画に対応した。全画素読み出しによる4K動画で6K相当のデータから4K動画を作る。フォーマットはXAVCで、α7やRXシリーズと同じ。さすがAPS-Cセンサーという動画を見せてくれる。これはよい。
さらにピクチャープロファイル、グレーディング前提のガンマ、タイムコード外付けレコーダーに非圧縮映像を同時記録できるレックコントロールなど、映像のハイエンドユーザー向けにも力を入れている。
EVFはミラーレス機最高とまではいわないが追従性が高くて見やすいOLEDパネル。120fpsでの表示も対応した。
背面モニターはチルト式で上に90度、下に45まで傾く。タッチパネルはなし。屋外だと暗く感じるので、そのときは晴天屋外モードに切り替えるのがよい。
背面モニターは16:9の横長タイプ。3:2でもよかった気がするが、動画をメインに使うならこの方がいいか。α6000にはなかった電子水準器も復活している。
操作系は前述したAF系以外はほぼα6000を踏襲する。
カスタマイズできるボタンは多いし、AF周りは使い勝手が上がった。だが、電子ダイヤルは上面部右上と、背面の十字キー兼用のホイールとこれもα6000と同じ。悪くはないが、具体的には右上のダイヤルを露出補正ダイヤルにし、前後に電子ダイヤルを備えるα7スタイルにする――というのはスペースがなくて難しいかもしれないが、前ダイヤルくらいなら付けられるんじゃなかろうか。α6300のハイエンド機並の高性能を考えると、操作系も進化させて欲しかったということだ。
何しろ、価格もお高めである。ソニーストアでみると、α6000の6万4571円(ボディ)に対し、α6300は13万4880円(ボディ)なのだ。
総じていえば、グリップ感もいいし、何よりAFが速くて追従性が高くて連写も快適で、動画も本格的で、スポーツ撮影もできる、総合力が高くて仕事でも使えるミラーレス一眼になった。
本格的にスポーツ撮るわけじゃないから……という人でも、このAFの快適さは魅力的だし、高性能なコンティニアスAFは子供やペットを撮るのにもいい。運動会なら下手な一眼レフより強力だ。一度触ると欲しくなるカメラなのは確かで、それだけにα6000との価格差が悩ましいわけである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR