応援上映を抜きにしても、キンプリは1度見るとしばらく余韻が残るほどインパクトのあるシーンやセリフが多い。ライブの見せ場であるプリズムジャンプの名前も「胸キュン体験(ハート)キュン×3」「絶対アイドル☆愛・N・G!」など、ユニークで一見しても想像がつかないようなものばかり。
しかし、菱田監督は「もう6年たちますが、プリティーリズム時代からやっていることは変わっていません。今回、メインキャラは女性から男性になりましたが、男女を逆転させるだけでここまでウケるのかと驚いたくらいです」とあくまで冷静だ。
キンプリを作る上で意識したことは、「新規ファンが初見でプリズムショーとは何かが分かることと、既存ファンが納得のいく展開にすることのバランス」(菱田監督)だという。
菱田監督自身が「キンプリはプリティーリズムのセルフパロディーであり、これまでの作品のいいとこ取りをしたもの」と語るように、プリティーリズムシリーズのファンなら思わずニヤリとするような小ネタが随所に仕掛けられている。
例えば、主人公の一条シンが風呂場でこけて「ぎゃふん!」と言うセリフは、「プリティーリズム オーロラドリーム」の主人公・春音あいらの口癖であり、聖というキャラがシンを見て「スタァ……」とつぶやく場面も、オーロラドリームの1話をほうふつとさせる。知らなくても物語は理解できるが、前作を知っているとより深くキンプリを楽しめるというわけだ。
また、女児向けだったプリティーリズム時代は控えていた酒やタバコ、過激なセリフ、風呂場でのサービスシーンなども解禁され、表現の幅が広がった。
表現の自由度は増したが、わずかな予算とタイトなスケジュールの中での制作は困難を極めたという。菱田監督は「今では考えられないが、当初はカヅキとアレクサンダーのダンスバトルシーンも削る予定だった」「エンディングは1週間前まで白紙の状態で、河原で自転車をこぐシーンにするか、いっそ黒背景にするかと最後まで迷った」などの苦労を語っている。
菱田監督とプロデューサーの西さんが最も意識したのは、「60分間見ている人を気持ちよくすること」。その言葉通り、「多幸感」もキンプリ視聴者の頻出ワードとなっている。どんな幸福が訪れるのかはぜひその目で確かめてみてほしい。
ライブパートを全て「3DCG」で構成しているのも、プリティーリズム時代からの特徴だ。第1作目の「プリティーリズム オーロラドリーム」では、現在「プリパラ」でCGディレクターを務める乙部善弘さんがほぼ1人で担当していたという。
ライブパートはタツノコプロのCG班が担っており、レインボーライブ時代にはスタッフは10人前後に増えた。これまでは女児アイドルを演出することが多かったが、男性アイドルをCG化する上での困難はあったのだろうか。
菱田監督は、「ライブパートは、いつも改善の余地があるなと思いながら見てます。キンプリでいうと、男性ならではのごつさやがたいの良さ、例えばのど仏、太ももや手の甲の線などをもっと表現したかったです」と話す。
依田さんも「女性アイドルだと、服装や髪型の揺れなどで女の子らしさを表現できるんですが、男性だとそういった演出はできません」と、男性キャラならではの難しさを語った。
既存ファンは言わずもがなだが、続編が出るごとにライブパートのCGは演出のリッチさを増しており、依田さんも「自分たちでどんどんハードルを上げてます(笑)」と冗談交じりに笑う。もしキンプリの続編が出た場合、さらにパワーアップした3DCGライブを拝めるかもしれない。
応援上映が既に参加型アトラクションの様相を呈しているが、さらに体感型アトラクション・シアター「4DX」での期間限定上映も本日発表された。6月18日より全国の劇場にて順次公開され、文字通りプリズムスタァたちのライブを五感で楽しむものになっている。例えば、以下のような特殊効果シーンがある。
また、ファンにとっては続編が出るかどうかも気になるところだろう。西さんによると、もともとキンプリは1クールの地上波アニメとして提案したがそれは通らず、「総集編+新作」と「完全新作」の劇場アニメに軌道修正したところ、結果的に「総集編+新作」の劇場アニメ1本分のみを制作することになったのだという。
ということは、幻の「完全新作劇場アニメ」が続編として制作される可能性もないとはいえないだろう。DVD&Blu-ray Disc(6月17日発売)や今後のグッズ・イベントの反響によっては新たなプリズムの煌(きら)めきを劇場で浴びる日が来るかもしれない。
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