株価に影響を与える要素は“3つだけ”週1回リアルタイム連載「誠倶楽部」

» 2007年09月10日 21時16分 公開
[高橋暁子,Business Media 誠]

第1回:持ち金100万円!超ビギナーとダメ投資家が株に挑戦

第2回:1週間が経過。超ビギナー3人が買った株はどうなった?

第3回:「誠倶楽部」に指南役が登場! 「銘柄選びは難しくない」

第4回:「リア・ディゾン銘柄は手放すな」の意味とは?

第5回:要注意! “叶姉妹銘柄”には手を出すな

第6回:“株主優待”狙いで株を買う場合の狙いとは?

第7回:逆回転が元に戻った時が“買い”とは?

第8回:9月6日に要注意――そのワケは?

8月31日までの結果。3カ月目に入り、高橋と土肥の持ち金は約20万円の差が開いた。

 7月から始まった素人集団のバーチャル株取引企画「誠倶楽部」。超ビギナーが「持ち金100万円」「期間3カ月」の制限内で株を買い、運用してみるという特集連動企画だ(7月9日の記事参照)

 いよいよラスト月、3カ月目を迎えた「誠倶楽部」のメンバーは高橋暁子、真野裕章、土肥義則の3人。高橋はIT銘柄にこだわり、モバゲータウンで人気を集めるディー・エヌ・エー(2432)を保有し続けている。7月20日から8月3日の2週間で20%ほど上昇し、念願の持ち金100万円を突破した。その後一度マイナスになったが、再び100万円を越え、3人の中でトップを独走している(8月6日の記事参照)

 真野はこれまで、好調な銘柄としてニンテンドーDSやWiiが人気の任天堂(7974)や、株主優待日確定前の値上がり狙いで吉野家ディー・アンド・シー(9861)、景気の影響を受けにくいと言われるブリヂストン(5108)などを購入してきた。友人からのアドバイスや、指南役から学んだことを活かした銘柄選びをしている(7月23日の記事参照)

 唯一株式取引経験のある土肥は、「逆張り」でテレビ東京(9411)を、「乖離率」を見てフルキャスト(4848)を、「ゴールデンクロス」狙いでエルピーダメモリ(6665)を購入したり、不安定相場を敬遠して取引を中止したりするなど、経験と知識を活かした買い方をしているはずだが、結果は出せず再下位だ(7月30日の記事参照)

誠倶楽部メンバー紹介

フリーライター、高橋暁子・持ち金106万5100円(右)、Business Media 誠の営業部員、真野裕章・持ち金88万700円(中)、Business Media 誠の編集部員、土肥義則・持ち金86万3800円(左)、いずれも持ち金は8月31日現在

企画概要

 週1回(金曜日の午後3時東京証券取引所終了後)、誠倶楽部のメンバー3人が集まり、その週に買った株の値段の動きをチェックし、翌週どの株を買うかを決める。自分が保有する株に関するウンチク、来週に向けての意気込みを語るほか、他のメンバーに対する意見も飛び交う。その議論の模様と銘柄の価格、各自の資産状況(折れ線グラフ)は、翌月曜日に記事を掲載する。期間は7月〜9月の3カ月間。

ルール

  1. 最初の持ち金は1人100万円。
  2. 1度に持てる株は、1人2銘柄まで。それぞれをどういう割合で持つかなどは、個人の裁量に任せることとする。
  3. 原則的に金曜日に清算する。翌週に同じ銘柄を持ち越すことも可能。
  4. 売る場合、終値(市場取引で最後についた値段)で売り、別の銘柄を終値で買ったことにする。そして、その銘柄を月曜日から1週間保有し、金曜日に清算する。
  5. 空売り(他人から借りた株券を用いて売却を行う取引)は禁止とする。あくまで買いだけ。信用取引(株式投資の資金を証券会社から借りて行う取引)もナシ。
  6. 実際には売買の際に手数料がかかるが、証券会社や売買方法などによって違うので、本企画では考えに入れないものとする。

日経平均株価が下落する中で、真野が保有する株価は上昇

 9月3日の月曜日は3営業日ぶりに下落、終値は前週末比44円安の1万6524円だった。6日の木曜日は午前まで下落が続き、日経平均株価は一時300円を超す大幅下落、8月29日以来の1万6000円割れになった。米国の株安と円高の進行によって多くの銘柄が売られたが、結局4日ぶりの上昇となり、前日比98円高の1万6257円で取引を終えた。7日は幅広い銘柄に売りが出たため、前日比134円安の1万6122円で終わった。

3人が買った銘柄の結果(9月7日)は以下の通り。

高橋 ディー・エヌ・エー 49万8000円×2株=99万6000円→46万6000円×2株=93万2000円

持ち金合計 106万5100円→100万1100円

先週比−6万4000円(−6.01%) 

真野 ブリヂストン 2320円×300株=69万6000円→2360円×300株=70万8000円

持ち金合計 88万700円→89万2700円

先週比+1万2000円(+1.36%)

土肥 三菱商事 3260円×100株=32万6000円→3160円×100株=31万6000円

武田薬品工業(ミニ株)7920円×60株=47万5200円→7860円×60株=47万1600円

持ち金合計 86万3800円→85万200円

先週比−13600円(−1.57%) 


これまで順調に増やしていた高橋だが、先週比−6%超の減少。持ち金100万円をぎりぎり保っている。真野は再び増えたが90万円には届かず、前回初めて持ち金を増やした土肥は再びマイナスの幅が広がってしまった

サブプライムローン問題と円高で揺らぐ相場

 サブプライムローン問題に端を発した世界同時株安は、まだ落ち着く気配がない。8月のサブプライムショックで7割以上の個人投資家が、損失を出したという調査もある(9月10日の記事参照)。厳しい相場環境が続く中で、ビギナー投資家が生き残るためにはどうすればいいのだろうか?

松井証券マーケティング部の土信田雅之氏

土信田雅之(どしだまさゆき)

松井証券・マーケティング部営業企画担当課長。1974年東京生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒、証券会社営業職を経て2005年より現職。テレビ出演のほか、雑誌等での連載活動を行う。日本テクニカルアナリスト協会会員。

土肥:今週は6日にECB(欧州中央銀行)の理事会があり、そこでの金利の発表が注目されていました(9月3日の記事参照)。ECBは金融市場の安定化を図るため、金利の利上げを見送りました。さらに驚いたのは、ECBが前日の5日に利上げを見送る声明を出したことです。

土信田:ECBは今回利上げを見送りましたが、話し合いの前に利上げ見送りを示唆することは異例です。サブプライムローン問題によって世界の金融市場が混乱しましたが、実体経済、つまり生産・消費などの経済面への影響を抑えるのが狙いでしょう。また、現在までに発表されている米国の経済指標(経済成長率、物価上昇率、失業率など)ですが、サブプライムローン問題の影響があるものの、今のところ深刻な状況になっていないと思われます。サブプライムローン問題の本質は解決していませんが、大幅に下落した株価もある程度回復し、落ち着きを見せ始めています※。

※当記事は取材当時(9月7日)のものです。その後、日本時間の9月7日金曜日の夜に発表された米国雇用統計の内容が悪く、米国株式は大きく下落。落ち着きかけた株式市場は再び荒れ始めています。

“半値戻し”――日経平均株価は1万6779円に戻すと予測

これまで堅調に推移してきた株価は、サブプライムローン問題と円高で揺らいでしまった

真野:今週(9月3〜7日)の相場はどう見ますか?

土信田:今週は、ECBの発表が6日にあったため、様子見ムードが強かったですね。発表があるまでは少しずつ下落し、5日の異例の声明によって一度下げがストップしましたが、その後また下げています。

 ただ、為替はまだ一波乱ありそうですね。現在の状況は、株価と為替が連動する傾向にあるので、為替を見た方がいいです。これまでの日本株は「好調な米国経済」と「円安」を背景に、株価が堅調に推移していました。この株価を押し上げてきた要因が、サブプライムローン問題と円高によって揺らいでしまったのが、ここ最近の相場展開です。

高橋:なるほど。そうなると、今後の相場はどうなるでしょうか?

土信田:もう一波乱あると見ています。そもそも相場は下落した後、下落幅に対して3分の1、2分の1、3分の2ほど上昇することが多く、2分の1ほど上がる(=戻す)を「半値戻し」と言います。今年3月の大幅下落でも、一旦半値戻しの水準まで回復してしばらくもみ合った後、下げる前の株価に戻ろうとする動きを見せました。そして、1回底を打ってまた上がるだろうと思われた時に、結局上げきれませんでした。このように過去に大きく下げたケースと、今回の株価は同じような動きをするのではないかと見ています。

真野:すると、今回はどのくらい戻るのでしょうか?

土信田:半値戻しだと思います。9月中旬の日経平均株価は、6月20日の高値1万8297円と8月17日の安値1万5262円の中間、つまり1万6779円に戻すと予測しています(8月22日の記事参照)

株価に影響を与える3つの要素とは?

土肥:このような相場で個人投資家ができることは何かありますか?

土信田:不安定な相場では、個人投資家は基本に返った方がいいですね。今は原油価格や金利、企業の業績、チャートなど、たくさんの情報が入手できます。しかし、株価に影響を与える要素は3つしかありません。

株価に影響を与える要素はたくさんあるが、その中から3つに分類することができる

高橋:え、たったの3つですか?

土信田:まず「企業の中身と将来性」で、決算や業績見通し、新製品、同業他社動向などです。次は「外部環境」で、経済指標や景気動向、為替相場、金利などです。サブプライムローン問題はここに当たり、今は「外部環境」に振り回されている状態ですね。最後が「需給・テクニカル」で、売買高(市場全体の売買株数)や信用残(信用取引残高。記事末のコラム参照)、チャートなどになります。

1〜3が個別にも複合的にも株価に影響を与える

土信田:情報をこの3つに分析すると、ストーリーが描きやすくなります。よく「相場のシナリオを作って臨め」と言われますが、シナリオを作るためにはこの3つを見ておくといいです。3つが個別にも複合的にも影響を与えます。全ての情報を網羅するのは不可能なので、自分なりの注目ポイントを持つといいですね。例えば外部要因に振り回されて、業績はいい銘柄なのに株価が下落している銘柄は買い時かもしれません。やはり業績がしっかりしている銘柄から買われる傾向があります。決算時期は企業の中身や将来性などが注目されることが多いのですが、今は外部環境が注目されている時期だということを理解してください。

勝負に出た高橋と土肥、静観の真野?

楽天の株価チャート楽天の株価チャート(1年:縦軸の単位は1000円)エルクリエイトの株価チャートエルクリエイトの株価チャート(1年:縦軸の単位は円)

土肥:8月9日に新規上場したばかりの、東京と神奈川のマンション開発業者エルクリエイト(3247)にしようと思います。60〜75平方メートルのコンパクトファミリーマンションをコンセプトに、地中海風建築をモチーフとした外観を取り入れるなどデザイン性を重視したマンションを建てている会社です。9月5日には、値幅制限の上限となる前日比3万円高の18万9000円まで上昇してストップ高となっています。8月21日には一時、公開価格を36%下回る12万8000円まで下げていたこともあり、買い戻しが入ってきているようなので株価が上がってほしいですね。

真野:土肥さん、一気に勝負をかけてきましたね。

土肥:誠倶楽部は9月いっぱいで終了です。ここで勝負をかけないと勝てませんよ。勝負は終わるまで分かりませんからね。

高橋:それでは私は、第3回からずっと持ってきたディー・エヌ・エー(2432)をここで売ります。あくまでもIT銘柄にこだわるという意味で、楽天市場や野球の東北楽天ゴールデンイーグルスで知られる楽天(4755)にします。

 ピーク時の株価から3分の1ほどに下がったことが懸念材料です(8月8日の記事参照)。しかし、楽天に対する買収防衛策発動の是非を検討していたTBSの企業価値評価特別委員会は、「発動の必要なし」との結論に至っています(9月7日の記事参照)。これで悪材料が少し出たのではないか、ということを期待して買います。

真野:2人とも勝負に出てますね。最終月だからと言って無茶なことをしてもうまくいきませんよ。僕は狼狽せずにブリヂストン(5108)を保有して、2人が落ちるのを待ちたいと思います。9月3日には、ゴム製品株は業種別値上がり率トップでしたし、また上がってほしいですね。

高橋 楽天 4万3450円×23株=99万9350円

真野 ブリヂストン 2360円×300株=70万8000円

土肥 エルクリエイト 18万2000円×4株=72万8000円


 果たして3人が買った株はどうなるのか。いよいよラストスパートに入り、土肥と高橋は勝負をかけてきたが、吉と出るか凶と出るか。対する真野の安全策の勝利となるか? 9月14日金曜日の結果をお楽しみに。今回3人が買った銘柄や、買い方についてご意見・ご感想はこちらから。また記事へのトラックバックもお待ちしています。

今回学んだこと

土信田さんからのアドバイス

  1. 3つのポイント「企業の中身と将来性」「外部環境」「需給・テクニカル」をバランスよくチェックせよ。
  2. 過去の買い残、売り残に注目してプラスまたはマイナス要因かを判断する。

コラム「信用取引」とは?

 投資家が「株式を買いたいが資金が不足している」ケースや、「株価が値下がりそうなので売却したいが株式を持っていない」場合などに、投資家が株式の売買を行えるよう証券会社が買付代金を立て替えたり(融資)、株式を貸し付けたり(貸株)することを「信用取引」という。信用取引は、6カ月の期限内に決済しなければならない。手元にお金が少ししかなくても取引が可能で、うまく儲けを出せれば資金効率よく運用することができる(7月19日の記事参照)

 信用残とは、信用取引の未決済のままの売りと買いの残高のことを指す。信用買いの残高を買い残、 信用売りの残高を売り残と言う。「買い残」は将来の株式の売り注文予備軍が増えることになるので、買い残の大幅な増加は株価にとってマイナス要因だ。逆に「売り残」は将来の株式の買い注文予備軍が増えることになるため、売り残の大幅な増加は株価にとってプラス要因となる。

 「外部環境」が落ち着いてきたら、買う前に買い残と売り残を調べた方がいいだろう。ちなみに、買い残と売り残の確認は、過去の推移を見るのが1番だ。「昔に比べて増加しているかどうか」というように比較してみよう。

 信用残に対応しているツールもある。例えば、Yahoo!ファイナンスの多機能チャートでは信用残のグラフを表示することが可能(Windowsのみ)。

Yahoo!ファイナンス→銘柄コードまたは企業名を入力→関連情報の「チャート」をクリック→「多機能チャート」をクリック→「領域3」を「出来高+信用残」に変更する。

 また元々のデータは東京証券取引所より発表される。(東証のサイト(銘柄別信用取引週末残高))

Yahoo!ファイナンスの「出来高+信用残」

※同企画は株式投資に当たっての参考情報です。投資判断は自己責任でお願いします。

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