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» 2009年01月30日 14時30分 UPDATE

岡村勝弘のフレームワークでケーススタディ:利益率44.83%、最強のBtoB企業「ファナック」の秘密を分析する (2/2)

[GLOBIS.JP]
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「4つの問い」で「競争優位性」と「経済的パフォーマンス」を測定

 今回は、ファナックの強さを「VRIO理論」※に基づき、説明してみよう。

※ジェイ・B・バーニー『企業戦略論【上】競争優位の構築と持続』、ダイヤモンド社、2003年を参照した。

 VRIOは、オハイオ州立大学のジェイ・B・バーニー教授が発案したモデルで、「4つの問い」によって企業の「競争優位性」と「経済的パフォーマンス」を測定する。

 企業の強みと弱みを分析するために「マネジャーのスキル」「経済レント」「企業成長」といった要素を統合する「リソース・ベースト・ビュー(resource-based view of the firm:経営資源に基づく企業観)、RBVと略する」と呼ぶ考え方が、1980年代半ばから出てきたが、VRIOはその中で最も著名なフレームワークである。

 「4つの問い」は、(1)経済価値(value)、(2)希少性(rarity)、(3)模倣困難性(imitability)、(4)組織(organization)として、以下のようにまとめられている。そして、これら4つの問いに対し、全て当てはまる場合は、競争優位性では「持続的競争優位」、経済的パフォーマンスでは「標準を上回る」としている。

(1)経済価値(value)

 その企業の保有する経済資源やケイパビリティは、その企業が外部環境における脅威や機会に適応することを可能にするか。

(2)希少性(rarity)

 その経営資源を現在コントロールしているのは、ごく少数の競合企業だろうか。

(3)模倣困難性(imitability)

 その経営資源を保有していない企業は、その経営資源を獲得、あるいは開発する際にコスト上の不利に直面するだろうか。

(4)組織(organization)

 企業が保有する、価値があり稀少で模倣コストの大きい経営資源を活用するために、組織的な方針や手続きが整っているだろうか。

 まず、「(1)経済価値」については、当然ながら「yes」である。そもそも「経済価値」がないと企業は長期的に存続できない。「(2)希少性」も、NCでは世界で数社しか競合がいないので「yes」であるが、産業用ロボットについては日本でも数十社、世界にも10社程度の競合が存在するため、必ずしも「yes」とはいえない。

 「(3)模倣困難性」については、NCではファナック製品が既にデファクト・スタンダード化していると言われている。ただ、それが何によって実現されているかというと、操作性、モジュール化、価格、販売などが考えられるが、定かではない。産業用ロボットは、顧客との親密性が重要と考えられ、自動車メーカーは産業用ロボットメーカーと長期的な取引をしているようだ。しかし、産業用ロボットメーカーは数も多く、相互に模倣を繰り返しているようにも思える。一方で、産業用ロボットメーカーは、米国では有力企業は消滅し、ヨーロッパでも数が減り、1国に1社になってきた。つまり、模倣はできるが、実は希少性は上がっているのが、現実である。

 ファナックは、NCでは「希少性」と「模倣困難性」を確保しながら、技術的なシナジーや製造管理的なシナジーが見込める産業用ロボットに参入し、自社のNCの製造に産業用ロボットを活用することで、飛躍的な生産性を実現しているのではないか、また自社のNC用の産業用ロボットの開発と製造、オペレーションにより、外販用の産業用ロボットの性能やコストにも大きな貢献が出来ているのではないか、つまり、NCを強い基盤として、さらに、産業用ロボットを加えることで、「希少性」と「模倣困難性」を強固にしているのではないかと筆者は分析している。

 最後の、「(4)組織」についても、産業用ロボットの導入が奏功している部分が多そうだ。自動化を進めれば進めるほど、人件費は圧縮される。休日・夜間に関係なく、人件費高騰や労働力調達の困難さにも影響を受けず、安定して製品を生産し続ける「組織」を構築できるわけだ。同社は1984年に山梨県南都留郡忍野村に本社・工場・研究所を移転しているが、これを可能にしたのも、自動化により人的資源への過度な依存を減らした結果だろう。自動化が進めば、研究開発や営業など、人の能力こそを必要とする局面に、より集中的に手厚く優秀な人材をあてることも可能になる。

 こうした好循環が働き始める以前についても、富士通からの独立に際し、稲葉氏が「コンピュータは銀行などが相手、コントロールは工場だけが相手で、市場が全く違う。当然、ソフトウェアも全く違う。分けたほうがファナックとしても伸びていけると判断した」※と語っているが、ここに「富士通を離れても独立した組織を構築し、伸びていかれる」という同氏の自信が垣間見られるように思う。

※『日経ビジネス』1980.1.14、日経BP、1980年を参照した。

 本分析は、情報量や分析の不十分なところもあるが、このように整理していくとファナックの長期にわたる業界支配と高い収益性の理由が、少しは明確になったのではないだろうか。これを説明するのに、「VRIO」が非常に適合しているように筆者は考えるが、皆さんはいかがだろう。

著者プロフィール:岡村勝弘

静岡県生まれ。京都大学農学部卒業。農林水産省、リクルートののち35歳で独立起業。Y&Kカンパニーズ代表取締役(ソフトウェア企画制作販売)、アクセス(iModeのブラウザ開発)、Amazon.com(日本進出)、Apax Globis Partners(ベンチャー・キャピタリスト)。現在、有限会社トレジャークエスト代表取締役。丸の内ビジネス人勉強会主催。著書に『ロンおじさんの贈りもの―30日間ビジネス・レッスン』『ビジネス・バカを極めろ』。


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