SNSという「人のネットワーク」が地球を覆う――脳とコンピュータ遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(3/3 ページ)

» 2011年06月29日 12時15分 公開
[遠藤 諭,アスキー総合研究所]
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二次元生物には三次元の世界のできごとは分からない

 『プラニバース』(A・K・デュードニー著、工作舎刊)という本がある。二次元宇宙があったらこんなふうに動いているだろうと、ビジュアルも使ってあれこれ考察した本だ。その二次元宇宙に住んでいる二次元生物には、三次元の世界で起きていることが分からない。三次元という概念すらも理解できない。BASIC言語を使っているだけでは、JavaScriptで何ができるか想像もできない、みたいなお話だろう。

 つまり、もし仮にネットですでに相転移が起きているのだとしても、二次元生物が三次元のことが分からないように、相転移のこちら側にいる我々には、それをうかがい知ることはできない。動物が人間になったようなことが起きていたとしても、我々にはサッパリ気が付きようもない。

 脳の進化とコンピュータの進化が、少しばかり似ている。ならば、コンピュータの世界で相転移が起こることだってあるだろう。

SNSにおいて、人間は、情報を入力して情報を出力する素子だ

 今ネットで何が起きているかといえば、SNSという「人のネットワーク」が地球を覆いはじめていることだ。日本のFacebookの利用者数は350万人程度だが、増加を続けていると言われている。年内にはビジネス向けのSNSであるLinkedInも日本でサービスを開始するといわれている(参照記事)。これらプラットフォーム系のほかに、今話題の音楽共有ソーシャルの「Turntable.fm」※など専門変化球系もある。

 どれも怖いほどの力を持っていると思うが、それの本当の意味は、我々には見えないようなところにあるように思えるのだ。人間は、もはや情報を入力して情報を出力する素子というべき存在になっている。ソーシャルとはいわば回路のことであって、それで生まれる関数のことが、もうひとつ見えていない――そんな気分の今のネットの変化ではありませんか?【遠藤諭、アスキー総合研究所】

※編集部注:Turntable.fmは6月末現在、米国外からのアクセスを遮断しているため日本からは利用できません。音楽のライセンス上の問題が理由だとのこと。

遠藤 諭(えんどう さとし)

ソーシャルネイティブの時代 『ソーシャルネイティブの時代』アスキー新書および電子書籍版

 1956年、新潟県長岡市生まれ。株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所 所長。1985年アスキー入社、1990年『月刊アスキー』編集長、同誌編集人などを経て、2008年より現職。著書に、『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書および電子書籍版)、『日本人がコンピュータを作った! 』、ITが経済に与える影響について述べた『ジェネラルパーパス・テクノロジー』(野口悠紀雄氏との共著)など。各種の委員、審査員も務めるほか、2008年4月より東京MXテレビ「東京ITニュース」にコメンテーターとして出演中。

 コンピュータ業界で長く仕事をしているが、ミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』の編集を手がけるなど、カルチャー全般に向けた視野を持つ。アスキー入社前の1982年には、『東京おとなクラブ』を創刊。岡崎京子、吾妻ひでお、中森明夫、石丸元章、米澤嘉博の各氏が参加、執筆している。「おたく」という言葉は、1983年頃に、東京おとなクラブの内部で使われ始めたものである。


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