ローマ字が日本のイメージを台なしにしている――ソニーが「SONI」だったらビジネス英語の歩き方(3/3 ページ)

» 2013年03月27日 08時00分 公開
[河口鴻三,Business Media 誠]
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自主判断でわが道を行く社名たち

 日本の役所が決めた、融通のきかないアルファベット化のルールに盲目的に従うのではなく、オリジナルの社名を独自の工夫によって海外でも巧みに維持している会社もあります。これはブランディング上、極めて大切なことです。

 クルマのマツダは、創業者の松田重次郎の姓にも由来するブランド名を、後に社名としました。何も考えないで「松田」をローマ字表記すればMATSUDAとなるはずです。しかし、ある宗教の神さまの名前にもかけて「MAZDA」として世界中に浸透しています。シンプルで力強く、しかもシャープです。

 ロボット技術で世界の最先端をいく安川電機も工夫をしています。「YASUKAWA」では、「ヤスゥカワ」になってしまうので、「YASKAWA」にしたのだろうと思われます。原音に近く、英語圏やフランス語圏でも原音を維持できる可能性が高い社名表記を選んでいるのです。見事です。

 非常に意識の高い企業の代表格は「SONY」だといえるでしょう。もしも、東京通信工業という操業時の社名をソニーに変えたとき、「SONI」あるいは「SONII」としていたら、ソニーのブランドイメージはどうなっていたでしょうか。

 実際ソニーの場合、音に関わるSONICという単語の語源であるラテン語の「SONUS」と小さい坊やを意味する「SONNY」からなる造語であり、「どこの国の言葉でもだいたい同じように読めて、発音できることが大事」という趣旨で作られたといいます。はじめから世界を相手にビジネスをすることを当然と考えれば、これが最も自然な選択です。盛田昭夫氏をはじめとする、ソニー創業時代のセンスの良さは、今考えてみてもピカイチです。

 それに比べて、150年もの間、50音にローマ字表記を1つずつあてて事足れりとしている日本の文化行政の貧寒さは、どうでしょう。日本の人名や企業名が海外で正しく発音されないのは、外国人が愚かだからではなく、日本が怠慢だからなのです。決してその逆ではないことを、グローバル化で大騒ぎする前に、落ち着いて考えてみる必要があります。

社会人の学び

著者プロフィール:河口鴻三(かわぐち・こうぞう)

河口鴻三

1947年、山梨県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学コミュニケーション学部修士課程修了。日本と米国で、出版に従事。カリフォルニアとニューヨークに合計12年滞在。講談社アメリカ副社長として『Having Our Say』など240冊の英文書を刊行。2000年に帰国。現在は、外資系経営コンサルティング会社でマーケティング担当プリンシパル。異文化経営学会、日本エッセイストクラブ会員。

主な著書に『和製英語が役に立つ』(文春新書)、『外資で働くためのキャリアアップ英語術』(日本経済新聞社)がある。


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