労働法の“ひずみ”を解消する「7つの処方箋」とは:公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」(後編)(4/4 ページ)
前回のインタビューでは労働法のひずみが生じている背景などについて聞きました。今回は、新しい労働法の姿として、著者の倉重氏らが提唱している7つの処方箋について、詳しく伺います。
若い人には、まず何より投票に行ってほしい
眞山:いろいろなお話、ありがとうございました。本書では一般の人には耳慣れない法律用語や古い判例も載っていますが、いずれも丁寧な解説が付けられているのでとても勉強になると感じました。
最後にお聞きしたいのですが、この本を誰に読んでほしいですか?
倉重:企業に入って間もない20代の人や派遣や契約社員などの非正規雇用の人です。ハッキリ言うと、彼らは「割を食っている」人たち。本書では、必ずしも勤務態度が良くない人でも解雇や給料の引き下げが難しいという“ひずみ”を紹介していますが、そのしわ寄せは、新規採用の数を減らしたり初任給を引き下げたり……という形で、若者や非正規雇用者に来ているのです。
もちろん、労働法を無視したブラック企業のような存在を許すつもりはありません。しかし、労働法を順守していればそれだけで待遇が改善され、雇用が安定化するのかと言うとそんなことはなく、給与は下がり続けてしまうことも十分にあり得ます。その現実をまずは知ってほしいのです。
そして、その現実に違和感を持ったのなら、やはり投票に行って欲しいと思っています。今回の参院選の投票率はあまりに低すぎる。若い人がもっと選挙に行けば、がらりと結果は変わるはず。若者の声で政治が変わるということに気付けば、政治家の考え方も変わってくると思います。
眞山:どうもありがとうございました。
インタビューを終えて
このインタビューであえて私が意識していたのは「労働法以外のことを聞いてみる」ということでした。私たちの生活は、さまざまな法律や制度に囲まれたものであり、労働法だけを切り出して制度を論じることは難しいのではないか、そういう思いがあったからです。
例えば、セーフティネットは社会保障の話で、法人税率の引き下げも労働法とは分野の違う話です。しかし、倉重氏はそのいずれの質問にも正対して回答をくれました。それは付け焼刃の回答ではなく、7つの処方箋を検討するうえでいろいろな周辺事象を考慮しながら、練り上げられた労働法の将来像が、倉重氏の中にれっきと存在しているからだろうと、私は感じています。
やや専門的なところも多かったですが、いずれも私たちの生活に密着した話です。私たちは複雑な仕組みをじっくりひも解くことをつい面倒だと思ってしまいますが、それをおざなりにしていては、労働法や年金といった仕組みを変えることはできません。なお、誤解を招かないよう、本書は専門用語や判例を避けることなく使ってはいるものの、そのつどとても分かりやすい説明が付いているので、私も含め、法律が苦手な人でも十分な配慮がされている1冊であることを付け加えておきます。
インタビューの結びに替えて、本書の前書きにある、実にインパクトのある1つの疑問文を、ここに引用しておきます。
「法律は“常に”正しいのか」
(眞山徳人)
※この記事は、誠ブログの公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」:【著者に訊く】「なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか」倉重公太朗氏インタビュー 2/2より転載、編集しています。
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