HuaweiがAndroid 4.0+クアッドコアの「Ascend D」シリーズ発表――日本でのLTE版展開にも期待:Mobile World Congress 2012
日本でもデータ通信端末やモバイルWi-Fiルーター、Androidスマートフォンを積極的に投入するHuawei Technologiesが、Mobile World Congress 2012で最新ハイエンドモデル「Ascend D」シリーズを披露した。
今年も2月27日(現地時間)から、スペインのバルセロナでMobile World Congress 2012(MWC 2012)が開催されている。それに先立つ26日、中国のHuawei Technologiesが、同市内のCCIB(Centre de Convencions Internacional de Barcelona)でプレスイベントを開催し、新製品のハイエンドAndroidスマートフォン「Ascend D」シリーズ3モデルを発表した。
高性能かつ高品質のハイエンドスマートフォン
ネットワーク機器ベンダーとして急成長を遂げるHuaweiは、同時に世界有数の携帯端末ベンダーでもある。米Gartnerの最新の調査報告によれば、世界のスマートフォン市場における同社のシェアは2.9%で第6位となっており、携帯電話ユーザーの多い中国市場を拠点にしていることがそのシェアを後押ししていると考えられる。一方で端末ベンダーとしてのブランド力はいまだ弱く、ネットワーク業界での存在感とは裏腹に一般コンシューマーユーザーの認知度は高くない。プレスイベントで登壇したHuawei Device会長兼チーフストラテジー&マーケティングオフィサーのRichard Yu氏は「われわれの端末ベンダーとしてのブランド力はまだ弱い」と認めつつ、「技術力や品質の面で競合他社と比較しても優れており、さらに競争力の高い販売価格で勝負していく」とその意気込みを語った。
そんな同社が今回リリースするのは業界でも最先端クラスのハイエンド端末だ。Huaweiは比較的上位のスマートフォン製品に「Ascend」のブランド名を冠しているが、その中でもハイエンド中のハイエンドにあたるのが今回の「Ascend D(Diamond)」シリーズとなる。
Ascend Dシリーズは、Android 4.0 Ice Cream Sandwich(ICS)を搭載し、上位モデルには同社の独自SoCである「K3V2」を採用。クアッドコア+16コアGPUというハイパフォーマンスな構成となっている。K3V2について詳細は不明だが、Yu氏によれば「QualcommともTexas Instruments(TI)とも異なる独自のプロセッサ」としており、おそらくはARM Cortex-A9をベースにして複数のIPを組み合わせたSoCだとみられる。独自プロセッサを採用した理由について同氏は「ハイパフォーマンス実現のために必要だった」とコメントしており、その結果独自仕様にこだわったというのが見解だ。事実、同社が提示したベンチマークテスト結果では競合他社と比較しても高い水準であり、通常の操作で49%ほど高速、GPUにいたっては2倍の速度を喧伝している。特にクアッドコアプロセッサ「NVIDIA Tegra 3」を搭載したタブレットのASUS Eee Pad Transformer Primeとの比較結果でも高いスコアを実現している点を強調しており、「ハイエンド中のハイエンド」な端末であることが最大のセールスポイントとみられる。
またデザインや品質面でも高い水準を実現していることを強調しており、例えば同じ4.5インチのスマートフォンと比較してもコンパクトな筐体を実現していること、Dolby Digital 5.1chサポートやearSmartと呼ばれる音声通話時のノイズキャンセリング機能、iPhone 4/4Sより細かいDPIを実現した1280×720ピクセルのHDディスプレイと、さまざまな面でハイエンド端末に相応しい特徴を有している。
Yu氏がAscend Dシリーズで強調するもう1つの特徴として、省電力性とバッテリー駆動時間が挙げられる。例えばインテリジェントなコア制御や、ダイナミックなリーク電流コントロールを採用し、アプリケーションプロセッサで従来比で30%程度のアプリケーションプロセッサにおける消費電力低減を実現しているという。さらに低温での動作を実現することで、高温時にプロセッサを駆動させるのに比べて電力消費効率が高くなると同氏は説明する。パワーゲーティングなどの技術も組み合わせ、トータルでの消費電力削減を実現しているようだ。
またクアッドコア搭載モデルでは通常のスマートフォンに比べて比較的大きい3.7V 1800mAhのバッテリを搭載しているほか、さらに大容量の2500mAhバッテリを搭載した「D quad XL」というモデルも用意され、前者の場合で1~2日、後者の場合では2~3日程度、充電なしでの連続運用が可能だという。ハイエンドスマートフォンの使用はとかくバッテリー残量との戦いとなることが多いが、その点で標準で大容量バッテリーオプションが用意されている点は大きい。
LTE対応と日本市場での展開
今回のAscend Dシリーズでは、クアッドコアプロセッサのK3V2を搭載した「Ascend D quad」と、その大容量バッテリー版である「Ascend D quad XL」、そしてデュアルコアモデルの「Ascend D1」の3種類のバリエーションが用意される。K3V2では1.5GHzと1.2GHzの動作クロックに応じて2種類のバリエーションがあり、デュアルコアモデルはTIのOMAP4460 1.5GHzプロセッサを採用している。Android 4.0 ICS、8GバイトROM+1GバイトRAM、4.5インチの1280×720 HDタッチパネルディスプレイ、800万画素のメインカメラ/130万画素のサブカメラが共通仕様となっている。ボディサイズがD quad/D1で129×64×8.9ミリ、D quad XLで129×64×10.9ミリ。バッテリー容量は前述のようにD quadで1800mAh、D quad XLで2500mAh、D1で1670mAhとなっている。製品の投入時期についてはAscend D1がまず4月から、D quadが第2四半期に世界市場で順次投入されていく計画だ。
発表会場で展示されていた実機にはAndroid 4.0.3 Ice Cream Sandwichが導入されていた。カーネルバージョンに今回Huaweiが採用した独自プロセッサ「K3V2」の表記が見られる
ネットワークの仕様はIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0に対応し、HSPA+のサポートで下り最大21Mbpsに対応する。UMTSは850/900/1700/1900/2100MHzの5バンド、GSMの4バンド対応となる。だがHuaweiによれば、DシリーズでのLTE対応を予定しており、今年後半にも市場に投入する予定だという。
同社では特にハイエンド端末市場として、中国、米国、日本、欧州の4市場での展開を重視しており、ハイエンド端末+LTEを米国と日本で投入するとYu氏が明言している。具体的なキャリアや投入時期についての言及は避けたが、日本でLTEサービスを展開するいずれかのキャリアから発表されることになるだろう。また2012年内のスマートフォン出荷台数は6000万台を見込んでいるとYu氏は説明。そのうちの3割が中国市場のシェアであり、Ascend Dシリーズについても同国での展開を見込んだ製品ラインアップの拡充が行われることになるとみられる。具体的にはChina Mobile(中国移動通信)が展開するTD-SCDMAやTD-LTEサポートについても計画があるとしており、将来的には日本でTD-LTE互換の「AXGP」サービスを開始するソフトバンクでの展開が注目される。
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