過去最高益を達成したKDDI――収益指標は「ARPU」から「ARPA」へ(2/2 ページ)
KDDIが2015年3月期決算を発表した。ユーザー数拡大と、スマホ移行に支えられ、過去最高益を達成した。2015年度はサービスのマルチデバイス利用を推進することで、ユーザーアカウントあたりの平均収入「ARPA」拡大を目指す。
海外事業は順調な面がある一方、特別損失も
海外事業では、ミャンマーで共同運営するMPTにおいて、サービス開始から7カ月でSIMカードを800万枚発行し、販売網の拡大やネットワークの改善なども順次実施している。
一方で、海外事業においては、香港に拠点を置く連結子会社のDMX Technologiesでの不祥事に関わる特別損失を計上している。田中氏によると、DMX社の前CEO、CFOが2008年の取引に関して香港警察に逮捕されたことに加え、2008年、2009年の不適切な会計処理が発覚したことが要因だという。KDDIがDMXに出資したのは2009年12月で、不正が行われた後になるが、将来発生する損失を見込み、特別損失を計上している。5月12日付で外部調査委員会も発足、DMX社とKDDIで行っている調査に加えて、原因の究明や再発防止策の策定を行う。
なお、KDDIは2016年3月期から、国際会計基準のIFRSを採用している。これよって、2016年3月期には754億円のマイナス影響があることが予想されている。一方で、ARPAの拡大や販売手数料の削減、その他の収益を向上させることで、全体としては2桁成長を維持。8200億円の営業利益予想を見込んでいる。
質疑応答:SIMロック解除は「まずやってみてから」
質疑応答で田中社長は、競合他社も強化しているポイントサービスや、光コラボレーションモデルの影響、SIMロック解除についての見通しなどを語った。
田中氏によると、au WALLETは「ちょうど1200万を超えたぐらいのところにきている」という。「当社はなんでやるのと疑問視もされたが、他社が追従してきていることを思うと、それなりに認知は高まっているのではないか」と改めて意義を強調した。
一方で、ソフトバンクはTポイントと提携。一部報道では、ドコモがPontaと連携するとも報じられている。これに対して田中氏は、「提携については現時点では急きょ動くことは予定していない」とコメント。「もっともっと流通額を大きくしたあとに、やっとウォレットの果実を取れると思っている」と語り、既存のポイントサービスとの連携は考えていないことを明かした。
NTT東西から光回線の提供を受け、卸販売する「光コラボレーション」については、「緒戦の影響はほとんどなかった」と静観の構えだ。ただし、「全体として市場が少しずつ小さくなってきており、MVNOの影響も出てきている」といい、楽観視はしていないようだ。MVNOへの流出については「先行きが不透明。予想よりMVNOは増えていて、トピックとして挙げられている。あんまり増えないといいな(笑)」と本音をのぞかせた。
また、5月1日から始まったSIMロックの解除については、「現時点では(実際の解除が)始まっていないので、何とも言いがたいというのが本音。とは言え、ドコモさんが先行してやられている事実があり、業績にはそれほど大きな影響は与えていないが、実際に始まってみないと見通せない」とコメント。その上で、「SIMロック解除については徐々に影響が出てくるのではないか。まずは中古市場が広がり、新規端末の数が減ってくる。そうなると、最初にインパクトが出るのがメーカーさん。そのあと、『端末ってそんなに変えなくてもいいじゃん』となっていくと、いわゆる端末の総販が減ってしまってあまりよくない」と、決して楽観視できないという考えを示した。
6カ月間、SIMロックが解除できない期間が設けられた点については、「とりあえずは総務省のガイドラインに合わせた。今後は、状況の変化で考えていなかなければいけない」と語り、詳細な理由については言及を避けた。一方で、「当社についてはニューなことなので、まずはスタートしたい」と手探り状態であることも明かしている。
過去最高益を達成したKDDI。田中氏が就任当初に掲げた「3M戦略」を着実に実行しており、それが業績にも結びついているようだ。一方で、田中氏の話を聞くと、MVNO拡大の影響が徐々に出てきていることもうかがえ、予断は許さない状況だ。MNOとして、ユーザーにどのような価値を提案できるのか。2日後に迫った発表会を、期待して待ちたい。
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