端末も販促も、これまでにない挑戦〜「Lechiffon」開発の舞台裏(1/2 ページ)

» 2005年02月03日 13時03分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 スペック競争で端末が売れていた時代も今は昔、最近の端末には、スペック以外の付加価値が求められるようになってきた。auの「INFOBAR」、ドコモの「premini」の注目度の高さがそれを裏付けている(1月25日の記事参照)。

 こうした背景の中、ドコモが投入したのが一連の「コンセプトモデル」(2004年10月の記事参照)。ユーザーのライフスタイルからニーズをすくい上げ、デザインや付加機能に反映させた端末だ(1月25日の記事参照)。

 ドコモがコンセプトモデルの第1弾として発表した端末群。左から「premini-S」「prosolid」「Music PORTER」「Lechiffon」

 中でもユニークなアプローチを図ったのがパナソニック モバイルコミュニケーションズ製の「Lechiffon」(1月31日の記事参照)。柔らかい素材を使った端末の製品化例はこれまでになく、また男性陣が気恥ずかしくて手を出せないくらい“女性向け”を意識した端末もあまり例がない。

 Lechiffon登場の背景には、どんな狙いがあったのか──。パナソニック モバイルコミュニケーションズの開発陣に聞いた。

 柔らかい手触りを携帯に採り入れたLechiffon。着信ランプのレイアウトやキラリランプ周りのアクセント、裏地に至るまで可愛さにこだわった

“P”の新境地に挑んだLechiffon

 「きっかけは、ドコモからのオファーだった」と話すのは、商品企画グループで主任を務める周防利克氏。ドコモはFOMAへの移行を進める一方、技術的に成熟したPDCで“何か新しいことはできないか”と可能性を探っていたという。

 そこでパナソニック モバイルが提案したのが異なるアプローチの2つの端末だった。1つはお家芸ともいえる薄型軽量化技術に素材の持つ高級感をプラスした端末。「大人が持って、かっこいい携帯を1つ作ろうと」(周防氏)。“P”に求められるものを素直に生かそうというというコンセプトから「prosolid」(11月30日の記事参照)が生まれた。

 もう1つは「“P”の新境地に挑んでみよう」というものだ。「誰も手がけたことがないようなものを作ろうと。好きな人はむちゃくちゃ好き、いやな人は『え?』っていうくらい、ぶっ飛んだものを考えてみよう」(同)

 そんな端末の候補に挙がったのが、柔らかい素材でくるまれた財布のような携帯電話。社内のアイデアディスカッショングループの1つ、“女子プロジェクト”(女子プロ)が提案したものだという。「新しい市場を開拓したり、新しい価値を提案したり──といった役割を果たせるのではないか」(同)。ここからLechiffonの開発が始まった。

新しい“物作り”は、紆余曲折

 Lechiffonは、これまでの携帯電話と異なる点が多い。折りたたみ型ではあるものの、折り曲げ部分にヒンジは使っていない。また外装も固いプラスチック樹脂ではなく合成皮革を採用している。「女子プロのコンセプトを形にした結果、このような製品になったが、完成形に至るまでには紆余曲折があった」(周防氏)

 苦労したポイントは、大きく2つだと周防氏。1つは外装に使う素材選び、もう1つはヒンジを使わない折り曲げ構造だ。

 「普通の折りたたみ端末に、ただ柔らかい布をかぶせただけでは新しさが出ない。折り曲げ部分がプラプラした状態では文字入力時に使いにくい……。伸ばしたときは普通の電話のように使えて、折りたたんだらコンパクトな形になる。なおかつアンテナが飛び出さないものを作るにはどうしたらいいのか──が議論された」(同)

 素材選びは、機構設計者が布素材を扱うショップに行って、どんな種類の素材があるのかを勉強するところからスタート。「いいと思う素材があっても、耐燃性の問題や汚れに強い素材かどうか」(同)など、携帯電話に使う素材として適切かどうかも問われる。これらをクリアした合成皮革を使うと決まったあとも、「モックアップ製作の段階で、革素材が伸び縮みしてサイズが合わなかったり……」と、これまでにない苦労があったという。

 普通の合成皮革では分厚くなってしまうため、革自体の薄さが0.5ミリと薄いものを使っている。「芯材の上に縫いつけている」(周防氏)

 ヒンジを使わない折り曲げ機構は、弾力性を持つ樹脂素材のエラストマーに薄い板状の金属製板バネを組み合わせた新機構を開発した。「保持力がありながら、反発力が強すぎないようにするため、板バネの形状はいろいろと工夫している。バネ1つとっても相当なノウハウが入っていて、それが開閉の自然さにつながっている」(第一モバイルターミナルディビジョン プロジェクトマネジメント室の大蜘蛛篤氏)

 折り曲げ部分だけでなく、ボディ全体にエラストマーを使っている。「ソフトな素材の端末を開いていきなりABS樹脂が出てきたら興ざめ。端末全体をソフトな雰囲気にしようと、ボディにもエラストマー素材を使った」(周防氏)

 アンテナの位置も難しかったと大蜘蛛氏。ファッション小物を意識した端末からアンテナが飛び出しては、可愛さが半減してしまうため、アンテナは内蔵が必須。しかし多くのアンテナレス端末で内蔵アンテナを装備する場所になっているヒンジが、この端末にはない。そこでLechiffonでは、折り曲げ部分に薄いアンテナを入れることで対応した。

 折り曲げ部分の左に薄いアンテナを装備。バネやアンテナがあるこの部分はシリコンゴムのカバーで覆われている
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月07日 更新
  1. KDDIのローミング縮小でも「やめる理由にはならない」 楽天モバイルユーザー4人が語る本音と“経済圏”の囲い込み (2026年10月05日)
  2. 注目点は“可変絞り”だけじゃない! 「iPhone 18 Pro」のカメラは思った以上に変わっている (2026年10月05日)
  3. KDDIのローミング終了で楽天モバイルはどう変わる? 心もとない700MHz帯、独り立ちのカギは5Gにあり (2026年10月03日)
  4. モバイルSuicaのコード決済「teppay」10月20日開始 2万円を超えたチャージが可能に (2026年10月06日)
  5. 2万mAh搭載で「世界最小」うたうモバイルバッテリー、半固体電池採用 MATECHから (2026年10月06日)
  6. Suica、JRE POINTのキャンペーンまとめ【10月6日最新版】 モバイルSuica利用で600ポイント、交換レート35%オフも (2026年10月06日)
  7. 楽天ドライブに不正アクセス 1万5382件の保存データ閲覧、313件のパスワードも (2026年10月06日)
  8. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  9. ドコモがほぼ全ての料金プランを値上げ それよりも端末の値上げが気になるこの頃 (2026年10月03日)
  10. JALモバイルはなぜIIJに加え「ahamo」を選んだのか? JALとドコモが明かす“ホワイトレーベル”の狙い (2026年10月05日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー