モバイルにおけるブロードバンド化は始まったばかり──クアルコム ジャパン 山田純氏:ワイヤレスジャパン2007 キーパーソンインタビュー(1/2 ページ)

» 2007年07月03日 12時23分 公開
[石川温,ITmedia]

 3G携帯電話には欠かすことのできない技術を持つ米QUALCOMMの日本法人がクアルコム ジャパンだ。今年後半には、KDDIのau端末が2つのCPUコアを内蔵したEV-DO Rev.A対応チップセット「MSM7500」を搭載する予定で、BREWも大幅に進化を遂げる。

 また同社は、2011年以降に始まるとされているマルチメディア放送においても、「MediaFLO」という規格で名乗りを上げている。クアルコム ジャパンは日本市場をどうとらえ、これからどのような戦略に打って出るのか。同社代表取締役社長の山田純氏に話を聞いた。

Photo クアルコム ジャパン代表取締役社長の山田純氏

チップセットとBREWの強化が今後の注力ポイント

ITmedia クアルコムジャパンがこれから注力していくポイントはどこにあるのでしょうか

山田純社長(以下敬称略) 大きく分けて2つあります。特に日本法人として重要な点は、au向けのチップセットとBREWの能力を高めて、商品力のあるプロダクトを早く立ち上げられようにすること。これが直近の課題です。MSM7000シリーズのチップセットと、BREW Client 4シリーズで、かなり能力のある携帯電話のプラットフォームを実現していきます。それがランドマークとなって、世界のほかの事業者やメーカーにもついてきてもらえるような、フラグシップにしていきたいと考えています

ITmedia 新しいチップにはどんなメリットがあるのでしょうか?

山田 携帯電話の内部構造は複雑で、メーカーの開発負担はいまだに高いと言わざるを得ません。海外や他キャリアへ向けた端末の展開がままならない状態に陥っています。そこを我々がお手伝いすることで、メーカーの体力向上につなげたいと考えています。MSM7000シリーズはワンチップで日本市場で戦える処理能力をもっていますし、インテグレーションされたBREWプラットフォームは、日本のユーザーの要望を受け入れられるようになっています。コストパフォーマンスに優れているので、自信を持っています

ITmedia もう1つの重点ポイントはなんでしょう。

山田 日本では認識されていませんが、QUALCOMM全体でみると、3Gのローエンド端末をグローバルに展開していくことがポイントです。特に発展途上国では主な方式はGSM。そのGSMをいかに早く3Gに移行させるかが課題です。まずは端末の低コスト化を進めることが、市場拡大の鍵となります。ローエンド向けのチップセットとプラットフォームを充実させるのが、ワールドワイドの課題となっています

ITmedia BREWで共通プラットフォームの構築が進んでいますが、これにより、どのメーカー端末も操作性は一緒ということになりかねません。メーカー間の差別化は可能ですか?

山田 チップセットとBREWは、下位レイヤーである通信機能やエンジンをいかに使いやすく上位のアプリに渡すかに特化しています。クアルコムは、その立場に特化しているメーカーです。それをどう生かすかはメーカーや事業者に委ねています。

 KDDIが採用した共通プラットフォーム「KCP」(KDDI Common Platform)のように、多くの部分をインテグレートしてバンドルする方法もあり得ますし、メーカーがBREWを素のままで使ってアプリを持ってくるというのも1つのやり方です。どこまで共通化して、どこまでを自由化するかは、それぞれの市場の需要によって判断されています。そういう自由度の高いところがBREWの特徴でもあります。Symbian OSにS60が載ったものや、Windows Mobile搭載端末になると、ユーザーインタフェース(UI)も含めてかなりの部分が統合されてしまっているようですが、BREWにはそういったことがありません。そういった意味でも、BREWは差別化できる、柔軟性のあるプラットフォームになっていると思います

BREW Client 4は、富士山で言うとまだ5合目

ITmedia 先日、BREWの最新バージョンとして「BREW Client 4」シリーズが発表されました。クアルコムが理想とするBREWを頂点とするならば、新しいBREWはどれくらいのところまで到達しているものなのでしょうか。

山田 2007年の年末くらいからBREW Client 4シリーズの投入が始まりますが、我々が理想とする姿からすると、富士山に例えればまだ5合目を過ぎた程度でしょう。まだまだ上って行かなくてはならなないことはたくさんあります。険しい道だと思います。

 例えば、今までサポートされていなかった新しいデバイスを端末に新たに搭載したいとき、現状ではドライバを組み込むだけで追加するといったことがまだできません。BREWとしては、まだPCと同じ使い勝手には追い付いていないのです。これから手を加えていかなくてはならない分野と言えます。

ITmedia 現状、BREWでサポートされていないデバイスはどのように対処しているのでしょうか。もしかして、搭載をあきらめていたりするのですか?

山田 あきらめる必要はありません。ただし、端末メーカーには、デバイスと信号をやりとりするドライバを、BREWの下のレイヤーに作り込んでもらう必要があります。BREWには、拡張モジュールを追加する、エクステンションという機能があります。そこを活用することで、デバイスがアプリケーションレイヤーにさわれるようになるのです。ドライバの部分を端末メーカーが作れば、エクステンションをかぶせることで対応できるわけです。

 ただ、理想とすべきなのは、PCと同じようにドライバーをデバイスのベンダが自ら作って持ち込めるようにすることです。そうすれば今よりずっと新しいデバイスの搭載が楽になります。

BREWアプリの審査にかかる時間は短縮されている

ITmedia 一時期、BREWアプリは審査に時間がかかるといわれていましたが(2006年4月の記事参照)、現状はどうなっていますか。

山田 かなり改善されてきています。BREWそのものの成熟度が高まり、メーカーの実装技術が向上している点が理由の1つです。また、プラットフォームとしての機種の差、モデルの差がなくなってきているので、検証にかかる時間が節減できるようになりました。

 2006年くらいまでは、キャリアに持ち込んでからの時間が長く、待ち行列もあったようですが、今年に入ってからはこれも解消しています。背景にはプラットフォームとしての品質が一定化し、精度が高まってきていることもあるようです。

 米国では、BREW開発者が自身でセルフテストができるようになり、キャリアの試験は最小限になってきています。KDDIもそのスタイルに移行しつつあるようで、流れとしてはよくなってきています

ITmedia 異なる機種で同じチップを搭載することで、BREWの環境が改善されている点は理解できました。昨今、プラットフォームの共通化が話題となっていますが、プラットフォームを構築する上で、BREWのように機種間の差がないというのは、重要なことなのですね。

山田 かなり大切なことだと言えます。最終的には、メーカーと一緒になって、端末にプラットフォームが搭載され、アプリからみて同じ振る舞いをしなくてはなりません。これまでauのBREW環境は、同じQUALCOMMのチップを採用していたとはいえ、かなり苦労してきた経験があります。

 例えば、カメラのAPI 1つにしても、デバイスはそれそれ違います。ドライバがあって、BREWのエクステンションがあって、APIが定義されていても、実際にそれをアプリがたたくと、細かいタイミングなどにおいては、必ずしも同じようには動いていなかったりする。ここはとても苦労してきた部分です。

 Javaでも、ネイティブ環境のAPIでもそうなのですが、コミュニティでAPIを定義しただけでは、本当に使える安定したプラットフォームができるという保証はありません。さまざまなOSやチップが混在する中で、統一プラットフォームを作るのは大変だろうと思います

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