ある携帯ゲームのコンテンツプロバイダ(CP)が、こんなセリフをもらした。「携帯アプリ開発には大変なことも多い。飲み会でグチるテーマはいろいろあるが、トップ10の1位はやはりBREWだ」――。何を、それほどグチることがあるのか。コンテンツ開発の、現場の声を聞いた。
そもそも、au向けのBREWアプリをコンシューマ向けに公開するには、審査に時間がかかる。ドコモのiアプリはコンテンツプロバイダ側である程度自由に開発・配布できるのに対し、BREWアプリはKDDIの承認を得なくてはエンドユーザーへ配布できないのだ。このあたりの仕組みや、理由などは過去記事に詳しい。
あるCPがアプリを企画したとして、それをKDDIに持っていったとする。まず企画を通すかどうか、KDDIの審査に一定期間がかかる。その審査を通ってから開発がスタートし、完成したら再度KDDIの検証手続きが始まる。この検証にまた時間がかかる。
KDDI側では審査機関を「短くても2〜3週間」、検証が「早くて1カ月を切るくらい」とコメントしているが、このセリフは現場の感覚からすれば、控えめな表現らしい。「審査に1カ月。開発が2カ月として、完成後の検証にまた3カ月かかってしまう」。つまりアイデアが上がってから、半年後にアプリが世に出ることもあるという。
KDDIに企画を提出して、審査待ちの間に開発を始めてしまえば、トータルの開発期間を短縮することもできる。だがこのコンテンツプロバイダによると「昔は企画がすんなり通っていたが……今ではそうでもない。通らないリスクを考えると、見切り発車は怖い」。実際にKDDIも「審査に応募してきたアプリのうち、上位半分くらいがパスする」とコメントしている。審査落ちのアプリも相当数あるようだ。
KDDIには、「有料検証」といって特急料金を支払うことで、審査・検証手順を短縮できるという仕組みがある(2005年8月30日の記事参照)。「3キャリア向けにアプリを提供しているが、こんなシステムはほかのどのキャリアにもない」(苦笑)。その検証システムを利用してさえ、期間は「3カ月が1カ月になる程度」だという。
開発に時間がかかるということは、CPから見ていろいろなデメリットをもたらす。アプリの世界にも流行りすたりはあるもので、例えばサッカー日本代表が激戦の末にPK(ペナルティーキック)戦で勝ち上がった直後は、「PK戦のミニゲームアプリが目に見えて多くダウンロードされた」(別のCP)。これは極端な例だが、特定の話題が盛り上がっているときにタイムリーなアプリを開発すると、ヒットする……ということはままある。
最近では、携帯アプリが商品プロモーションに利用される事例も増えている。例えば特定の話題の映画が封切られる際に、合わせて映画関連の携帯ミニゲームを提供する、といった具合だ。これも、時期が決まっていることだけに審査に手間取るとアプリの企画が難しくなる。
KDDIに、審査と検証の期間を短くするための施策はあるか聞いてみた。
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