なぜ、“分身との会話”なのか――「CLON」のビジネスモデル(後編):行動ターゲティングの新しい形

» 2008年05月21日 08時00分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 今、ネット広告の世界では、“広く浅く”という従来型の訴求に加え、“狭く深く”というアプローチが注目を集めている。そのためのユーザープロファイリングの手段として注目を集めているのが“行動ターゲティング”だ。

 行動ターゲティングでは、ユーザーがアクセスしたWebサイトの履歴から、趣味趣向を分析するのが一般的だが、携帯向けコミュニケーションサービスを提供する「CLON」は、それを“分身との会話”を通じて解析している点がユニークだ。

 CLONで構築しようとしているビジネスモデルとは、どのようなものなのか。CLON Lab代表取締役の中山小百合氏に聞いた。

欲しい情報はそのときどきで変化する――“分身との会話”から、ユーザーの“旬”のニーズを

 行動ターゲティングによるプロファイルでは、「いかにユーザーのことを学べるか」が重要になる。これを、Webの履歴やアンケートといった従来型の手法ではなく、“あくまでユーザーが自発的に発信する”形で集めようというのが、CLONのやり方だ。「サービスを始めるにあたっては、“押しつけ”にならないようなやり方を実現したいと考えていました」(中山氏)

 CLONでは、ユーザーが端末内に住む「クロン」と交わした会話(テキストデータ)がサーバに蓄積され、そのデータをサービスの要となる「自然発話エンジン」の学習技術を使って解析し、ユーザーの趣味嗜好を分析する。「手法としてはテキストマイニングに近く、ユーザーが入力した言葉自体を解析する必要があります。その中で、“ユーザーが本当に興味を持ったものは何か”をシステム側で把握して、その相関関係でユーザーの興味を引くことを提案したいと考えています」(中山氏)。

Photo 端末の中の分身として存在するクロンは1日1回、質問を投げかけてくる。この質問に対する回答をベースに利用者の趣味嗜好を蓄積する

 つまりこのサービスは、利用者がクロンと話せば話すほどプロファイルの精度が高まり、個人に最適化した情報を配信しやすくなるわけだ。

 この会話形式のプロファイリングには、もう1つ、ユニークな点がある。それは、環境や気分、季節によって移り変わるユーザーの趣味嗜好を把握できることだ。「好みやニーズは、時間軸で変わることもあるので、常に新しい情報を(クロンとの会話を通じて)さりげなく取得するような試みが有効なのではないかと考えたわけです」(同)

プロファイルデータを元に、利用者1人1人に最適な情報を

 そして、この先にあるのが「それぞれのユーザーに適した情報の配信」だ。現状のCLONでは、全ユーザーに同じニュースや時事情報を配信しているが、次のフェーズでは、会話を通じて取得した利用者のニーズに最適化した情報の配信を目指す。

 「1000万人のユーザーに同じ情報をばらまくよりは、例えば“スポーツカーに興味がある人のみ100万人”に届ける方が意味があります。ユーザーにとっても単なる広告のプッシュではなく、貴重な情報の1つとして捉えられる可能性が高いと思います」(中山氏)

 また将来的には情報の配信に加え、ショップなどとのリアル連携も検討している。「例えば“クリスマスシーズンに本命にアタックするには、どんなプレゼントがいいのか”“どんなレストランに行くのか”など、いろいろな切り口があるような気がしています。自分で探すのもいいですが、こうした情報を自動的に集めてくれたら、それはそれでありがたいですよね。リアルの店舗との連携は、位置情報が必要になるので次の課題ですが、“便利な情報を届ける”というところで組める企業があれば、積極的に取り組んでいきたい分野です」(同)

 個人に最適化した情報配信をビジネスの軸とする考えのCLONでは、現状では広告モデルを全く考えていないという。

 「逆に、“そういうこと(広告モデル)はやりたくない”と、現状では思っています。例えば、コラム的に企業の情報を提供しているリクルートの『R25』のような形であれば、ユーザーは興味を持って見てくれる。情報配信の形がどんどん変わってくる中で、我々が“このサービスならでは”の付加価値を持たせて、新しい情報提供の仕方を提案できたら――というのが今の理想ですね」(同)

 この、“会話を通じて得たユーザーのプロファイリング情報をベースに、さまざまな情報をリコメンドする”というアプローチは、出資者を募る際の強力な武器になったと中山氏は振り返る。「業界中が新たなモバイルのビジネスモデルを模索する中、従来型の検索モデルだけではなく、違うモデルがあるのではないか――というところで評価していただけました」(同)

 この手法の課題は“いかにユーザーをサイトにつなぎ止めておけるか”。利用者にとって最適な情報を提供するのに必要なデータを集めるには、一定の時間が必要で、それを収集する前にサイトから離れられてしまっては意味がない。そのためCLONでは、クロンからの質問内容を面白くしたり、相性診断を盛り込むなどの工夫を凝らすとともに、細かなバージョンアップで対応する考えだ。

 “分身からのリコメンドサービス”にとどまらず、将来は「CLONをベースとした仮想空間を面白い形で実現したい」と話す中山氏。これまでにないコミュニケーションサービスの今後に注目だ。

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