ポケモンGOが新ポケモンを「タマゴで追加」した3つの理由

» 2016年12月14日 06時00分 公開
[二階堂歩ITmedia]

 12月13日、Pokemon GO(以下、ポケモンGO)に「ピチュー」や「トゲピー」などの新ポケモンが追加された。特殊な性質を持っているメタモンを除けば、7月のアプリ公開以来初のポケモン追加ということもあり、あらためてポケGO熱が高まっている人も多いことだろう。

 一方で、今回のアップデート内容に少々がっかりしている人もいるはずだ。なぜなら、大方の事前予想では「ポケモン金・銀に登場する100種類のポケモン追加」が行われると見られていたからだ。しかし実際に追加されたのは、(通常通りモンスターボールを投げて捕まえるのではなく)「タマゴでかえす」ことでしかゲットできない数種類のベイビィポケモンのみだった。

追加されたベイビィポケモンたち。左から、ピカチュウの進化前であるピチュー、ピッピの進化前であるピィ、プリンの進化前であるププリン(画像は「ポケモンずかん」(http://www.pokemon.jp/zukan/)より引用)

 ポケモンGO開発元である米Nianticは、なぜこのようなアップデートを選んだのか。それには主に3つの理由があると筆者は考えている。

理由1:ゲームバランスの保持

 今回のアップデート以前、ポケモンGOの世界には「伝説ポケモン」4種類を除いた146種類のポケモンが存在していた。ここに100種類近い第2世代ポケモンをいきなり追加するとどうなるか。おそらくは、ゲームバランスを著しく欠くことになる

 登場するポケモンの種類を2倍弱にしながら、ゲーム全体のポケモン出現率を一定に保とうとすると、ポケモン1種類当たりの出現率は大幅に下がることになる。単純に、今はどこででも見かけるポッポやコラッタでさえ、現在の半分程度の出現率になってしまう可能性があるわけだ(そうでなければ、その他のポケモンの出現率が相対的にさらに低くなる)。

 ましてやこれがレアポケモンともなれば――後発のユーザーにとって、「図鑑完成」へのハードルは極めて高くなる。初期ユーザーと後発ユーザーとの間に、越えられない大きな壁ができてしまうわけだ。

1種類当たりの出現率が下がれば、図鑑完成への道のりは当然遠くなる

 それに対し、今回のようにポケモンを段階的に追加していくことで、徐々にユーザー全体の足並みをそろえていければ、こうしたユーザー間格差を運営側がある程度コントロールすることが可能になる。

 ゲーム運用サーバなどインフラ面への影響もある。ポケモンGOはアプリ公開以来、アップデートを繰り返し新規要素を追加するたびに、動作が重くなっているという指摘がある。先日も「アプリ立ち上げ時に数秒フリーズするバグ」について運営が対応を発表したばかりだ。ここに一気に大量の新規ポケモンを追加したとすると、さらなるゲーム体験の低下を招くおそれもある。

 その他にも、「バトルCPの調整」「進化コストの調整」「ユーザーが飽きてしまうことへの懸念」など、さまざまなゲームバランスへの影響を考慮し、段階的なポケモン追加を選んだのだと思われる。

理由2:最重要課金アイテム「ふかそうち」

 では、最初に選ばれたのはなぜ「ベイビィポケモン」だったのか。ベイビィポケモンは、ポケモン金・銀においてはタマゴをかえすことでしかゲットできない。そしてポケモンGOでタマゴをかえすためには、アイテム「ふかそうち」が必要となる。

 今さら言うまでもないことだが、このふかそうちはポケモンGO内における「最重要課金アイテム」だ。ユーザーにとっては野生でゲットしづらいレアポケモンを集める有力な方法であり、図鑑完成のためには“タマゴ課金”がかなりの近道となる。

「ふかそうち」。1つ150ポケコイン(約150円)で購入できるが、3回使うと壊れてしまう

 開発元のNianticは、ポケモンGOを「ユーザーに必要以上の課金を強いることのない、クリーンなゲームにしたい」と語っている。一方で、ゲームの事業的継続性を考えれば一定の売り上げは当然必要となり、「タマゴのみでゲットできる新ポケモン追加」はユーザーのふかそうち購入の大きな原動力となる。

 ただし、このゲームでは最初から「ムゲンふかそうち」(※)を1つだけ持っており、無課金でも費やす時間と運次第で図鑑完成が可能となっている。そのため、ふかそうちはあくまでも「ゲームを効率良く進めるためのアイテム」としての位置付けにとどまり、必須アイテムではない。このあたりが絶妙にユーザー心理を捉えている。ちなみにムゲンふかそうちは「レベルアップで2個目をもらえる」といったデマがたびたび流れるほどユーザーにとって魅力的なアイテムで、裏を返せば運営側がそう簡単に提供するわけがない、ということもいえるだろう。

 ※通常のふかそうちは3回使うと壊れてしまい、新しく購入する必要があるが、ムゲンふかそうちは何度でも繰り返し使える。

「ムゲンふかそうち」。こちらは何回使っても壊れない

 さらに付け加えれば、タマゴをかえすには「歩く必要がある」というのも重要な要素で、これがなければ「ふかそうち購入」→「ポケモン誕生」はただの“ガチャ”になってしまう。歩く要素を入れ、わざわざ手間と時間を掛けさせることで、ユーザーの射幸心が短期的に高まりすぎないようコントロールすることに成功している。

理由3:社会的批判への対応

 老若男女問わず、一般的なスマホゲームと比べてケタ違いに多くのユーザーに受け入れられたポケモンGOは、その影響力ゆえにこれまで何度も社会的批判にさらされてきた。お台場のラプラス騒動や、運転中のながらスマホによる死亡事故などがその例だ。

 「要請のあった場所へポケモンが出現しないようにする」「一定以上の速度で移動中は操作を不可能にする」など、問題が起きるたびに運営側も対応を発表してきたが、ここで新ポケモンを一斉に投入すれば、さらなる火種を生んでしまう可能性が極めて高い。ここまで誠実な対応で築いてきたブランドイメージが、たった数日で水泡に帰してしまうことさえ考えられるのだ。

ゲーム内の注意書きも当初に比べて増えた

 そこで今回の「少数ポケモン」「タマゴ投入」だ。タマゴからかえるポケモンは基本的にランダムで決まるとされており、入手ポケストップの場所との相関などを検証している人もいるが、決定的なデータは出ていない。

 タマゴならば、「どこどこにレアポケモンが出た!」といった情報で大騒ぎになることはない。どこで入手しても、後は本人が歩いて望みのポケモンがかえることを祈るだけしかできないからだ。もともとNianticはポケモンGOを「人を外に連れ出すゲーム」と言っており、タマゴによるポケモンゲットはそうしたポリシーにももちろん合致している。

ポケGO世界を拡張するために

 今後、第2世代ポケモンのさらなる投入は当然スケジュールに組み込まれているだろうが、上記のような複数の要因から、Nianticはアップデートに対しかなり慎重になっているのだと思われる。残りの第2世代ポケモンの追加、そしてさらに影響度の大きい「伝説ポケモンの追加」「トレード機能」「ユーザー間バトル機能」の実装に向けて、蓄積してきたデータから想定されうるユーザー行動をじっくりと見極めていくに違いない。

 現実世界に大きな影響力を及ぼすほどのゲームだからこそ、ユーザーに適切に課金してもらい、かつ社会的にも認められた形で、徐々にその世界を拡張させていく手段を取るほかない。今回のアップデートにおける「タマゴでかえる新ポケモンの少数追加」は、その両方の条件を満たす、Niantic側の1つの答えだったのではないだろうか。

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