きれいなLEDのつくりかた
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【国内記事】 | 2001年5月23日更新 |
「智から電話がかかると,このライトが赤く光るんだよ,いいでしょ〜」
と,友人が見せてくれたのは,着信相手によって着信ランプの色が変えられる携帯電話。小さいライトが7色に変わるんです。いいなー!
……でも,これってどうしてなのかな。こんな小さいところに7つの電球が入っているのかなあ? 不思議不思議。(ところでなんで私の色は赤なの? 赤信号の赤? 爽やかな水色とかにしない? ねえねえねえ……)。
と,いうことで今回も始まりました「もばいるのつくりかた」。今回は,色の変わるライトの不思議についてです。ちょっと前までは,携帯電話に使われているライトの色って,1色か2色しかなかったですよね? でも,ここ最近はとってもカラフル。今回はそのヒミツについてを探ってみたいと思います。
やってきましたはここ,神奈川県にあるスタンレー電気の横浜技術センター。お話をしてくれるのは,光のことなら任せておけ!なおじさま,技術企画課課責長の濱田直仁さん(写真)と経営企画課係長の會田利之さんです。
早速ですが……この小さいところに,7つの電球が入っているんですか??
「いえいえ,そもそも電球ではないんですよ。Light-Emitting Diode(ライトエミッティングダイオード),略してLED,を使っています」
ライト,ライトえみっ……なんですか,それ??
「(苦笑)いわゆる発光ダイオードですよ。電球と違って熱くなりませんし,切れたりもしませんし,何よりとても小さいんです」
と,見せてくれたのはサンプルのLEDが入っている箱。ちっちゃな粒みたいなものがポツポツと並んでいます。なんだか宝石みたいだなー。
「えっと,LEDはこんな風に光ります」と,濱田さんが手馴れた感じでパチっとスイッチを入れると,その小さな粒が,ぱーっと赤く光りました。小さいのに,すごく明るいんです。びっくり。
当初LEDは「豆電球」の代替品として開発されたのだそうです。小さくて,よく光って,熱くならなくて長持ち! というメリットがあるので,色々な機械に組み込むのに非常に適しているとのこと。たとえば,家の照明などの電球ならいざしらず,携帯電話とか自動車とか組み込んでしまうと「あー,切れちゃった」って簡単に交換できませんものね。確かに「携帯電話のライトが切れちゃった,交換しなきゃ」なんて話,聞いたことないですよね。そうかー,それは電球じゃなくて,LEDだったからなんですね。
「さて,絵本さんはLEDってどういう構造だか知っていますか?」
と,濱田さんに聞かれたのですが当然分かりません(えっへん)。ということで,ホワイトボードにきゅきゅきゅー,と図を書いてもらいました。
「簡単にいうと,こんな『サイコロ』があってね,これがLEDチップ。素子ともいうね」
その「サイコロ」はものすごく小さくて,横幅はおよそ250〜350ミクロン,高さは180〜250ミクロンくらいなのだそうです。そのサイコロに,ボンディングワイヤーという金線を,ぴっ,と上から付けて電気を流すと光ります。その全体をエポキシ樹脂というもので覆って,1個のLEDのできあがりです。
それにしても,小さいなんてもんじゃないです。だってミクロンて,えーと,1ミリの1000分の1ですか? さらに,ボンディングワイヤーの太さは25ミクロン。想像の限界を超えてます。くらくらくら……。
「単色のLEDの構造はそんな感じですね。で,LEDの色の違いはどこに関係するのかというと,そのサイコロの中に混ぜる材料によります」
というと,電球みたいに,もともとの光に色のついたカバーを被せて,いろんな色にしているわけじゃないんですね。LEDは電球と違って,材料によって,もともとの光る色が変わるんだ!
「そう,電球とは,光自体が違うんですよ」
サイコロの材料を組み合わせることによって,さまざまな色に光らせることができるとのこと。たとえば,Ga(ガリウム)・As(ヒ素)・In(インジウム)・P(リン)を組み合わせた場合,赤から黄の色に光るのだそうです。むむ,化学の授業みたいになってきましたねー。そして,赤外線もこの材料の組み合わせを変えて作られるとのこと。テレビのリモコンなどから出る赤外線は,このLEDチップを使っているのだそうです。
「で,問題は青系の色だったんですよね。これは一般的な話ですが,かれこれ10年以上前から開発していて,約5年くらい前に世の中に出始めた商品です」
そのやっとこ発見された材料の組み合わせとは,In(インジウム)・Ga(ガリウム)・N(窒素)の3つだとのこと。これで青から緑の色の明るい光が作れるようになって,ほとんどすべての色が明るく揃ったことになりました。
「ちなみにIn・Ga・Nで紫外線も出せるんですよ。これからはインガンですよー」
インガン?? あ,InGaN,ですね。この技術は最近注目のトピックなのだそうで,覚えておけば,これであなたもLED通! そうですよね,これからはインガンですよねー。(知ったかぶり)
さてさて。赤系の光と青系の光が作れるようになって,ということは,もうどんな色のLEDでも作れるようになったんですよね?
「えーっと,そうですね,LEDとしては全ての色が作れます。ただ,LEDチップ単体では,出すのが難しい色というのはあります」
LEDチップ単体というのは,つまり,前のお話でいうところのサイコロですよね。
「そう,そのサイコロの材料調節だけで色を作る場合,『白』という色を作るのは,とても難しいんです」
LEDチップの光というのは赤から黄,そして青から緑。つまり図でいうと円の外周の色にあたります。だから,円のちょうどまん中にあたる白色は,作ることが困難なのだそうです。
「なので,現在作られている白色LEDというのは,一般的に青色に光るLEDチップに蛍光材を被せて,白色の光に見せたりしているんです」
そんな白色LEDの携帯電話での需要が,ここ最近,ぐんと増加しているとのこと。というのも,液晶画面のカラー化が進み,以前は緑やオレンジのバックライトが主流だったのに代わり,白のバックライトが必要になってきたからなのだそうです。
「ただ,先ほど言ったような作り方の白色LEDだと,『赤』の波長が抜けてしまった白い光になるんです。これをね,カラー液晶のバックライトに使うと,カラー液晶の赤い色の表示が,なんとなく“あせて”見えてしまうんですよね……難しいところです」
自然光というのはすべての色の要素が入った光なのですが,LEDチップの光は,単体ではどうしてもいずれかの色の波長に偏った光になってしまうのだそうです。
……あれ? でも,今回の疑問の発端になった7色LEDは,どんな色にでもくるくる変わってましたよね?? 確か赤にも白にも光ったような……。むむ,謎が謎を呼び,次回はいよいよ7色LEDの謎,解決編です! キーワードは「光の3原色」,みなさん,ちゃんと予習しておいてくださいねー!……って,勉強が必要なのは私のほうですか?? が,がんばりまーす!
[絵本 智,ITmedia]
連載バックナンバー
第1回 iアプリのつくりかた コネクト(1)
第2回 iアプリのつくりかた コネクト(2)
第3回 きれいなLEDのつくりかた──スタンレー電気
第4回 7色LEDのつくりかた──スタンレー電気
第5回 携帯ストラップ編 トップランドその1
第6回 携帯ストラップ編 トップランドその2
第7回 俺色にそまれ!特製ケータイのつくりかた(1)
第8回 俺色にそまれ!特製ケータイのつくりかた(2)
第9回 ケータイのアンテナがぴかぴかするとカッコいいのだ!
第10回 ケータイの電池は強くて長持ち! そして燃えない??
第11回 “安全な”リチウムイオン電池のつくりかた
第12回 “電波がいっぱいになる? 回線を確保せよ〜携帯電話の通信方式〜
第13回 通信方式の進化は止まらない! 国際派ケータイへの道
第14回 君はアキハバラを知っているか!?〜夏休みお出かけガイド〜
第15回 液晶ってなんだろう?「液晶=イカ墨」説の謎
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