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つくりかた
 [第11回]

“安全な”リチウムイオン電池のつくりかた

リチウムは不安定? いえいえ,ちゃんとそれを解決する方法があるんです。 今回は「自分で考える電池」賢いリチウムイオン電池についてのお話です。

【国内記事】 2001年7月18日更新

 こんにちは!もばいるのつくりかた第11回です。前回に引き続き,リチウムイオン電池について勉強していきたいと思います。ケータイ博士,よろしくおねがいしまーす!

燃える? マシンが壊れる!?

 「リチウムイオン電池が“すごい”のは分かっていたんだけど,なかなか製品として僕らの手元には現れなかった。それは,製品化するまでにいろいろな問題があったからなんだ。値段もそうだけど,一番怖かったのはリチウムがそのままの材質としては“不安定”だったということ。多くのエネルギーを貯めておけるけど,充電・放電の時には特に問題があったんだ」

 不安定な材質なため,燃えてしまう危険性があったし,それと同時に当然,搭載しているマシンを壊してしまう可能性もあったとのこと。それは大問題! というか,そんなの危なくて使えません……(前回参照)。

 「現在は,それを克服する方法が確立されたので,もう大丈夫。今回は,その仕組みについての話をしよう」

リチウムイオン電池の「燃えない」仕組み

 「実は,リチウムイオン電池の難しさは,電池の材質のことばかりではなくて“電池の使い方”にもあったんだ。そのままでは不安定な,でも強力な材質だったリチウムを物質として安定させる方法が研究され、リチウムイオン電池が作られた。それと同時に,もう1つ,安全を守る仕組みが作られたんだ。それは言ってみれば,“自分で考える電池”というところかな」

 電池自身が考えるんですか? ロボットみたいに!?(わくわく)

 「それはちょっと違うかな。詳しく言うと,電池自体にコントロール用のICを組み込んであるんだ。そのICはいつも電池の状態を監視していて,ちょっとでも異常な動き(規定外の電気的変化)を感じるとすぐにバチンって電池の動きを止めてしまう。だから,現在使われているICの入ったリチウムイオン電池は,かえってほかの電池よりも賢くて安全なんだ」

 なるほど,じゃあ,万が一のことが起こっても,電池自身が気づいてストップするんだ! かしこーい。

 「あ,でも,やっぱり電池というもの自体は,気をつけて使わないと危ないものには違いない。だって,あんな小さなボディに携帯電話を何百時間も動かすパワーが入ってるんだ。メーカーは普通に使っていたら問題ない形で出荷しているけど,無理に分解したり,熱を加えすぎたりすると破裂することもある。これはどんなものを扱うときでも同じだね。気をつけよう」

リチウムイオン電池,そしてリチウムポリマー電池

 「不安定なのを克服して,今や安全な製品になったリチウムイオン電池も,まだまだ進化しているんだ。同じリチウムイオン電池でも,素材自体もどんどん進化している。例えばちょっと難しい話になるけれど,最近では“コバルト系”といわれていた素材から“マンガン系”というものに代わってきている。これは,これまでのものに比べて過充電(充電のしすぎ)や,完全放電時の構造維持に強くて,もっと洗練された電池になってきているんだ。そして,そのほかの製品としての大きなトピックは……やっぱりリチウムポリマー電池の登場かなぁ」

 ポリマー? また新しい素材なんですか?

 「うーん,素材上の進化でもあるけれど,一番大きいのは“形がある程度自由になる”ということかな。ほら,色々な電気製品は最小軽量化を目指すことが多いでしょう? 特にモバイル系の製品は極限まで小さくしたいけれど,例えば乾電池を使用する場合,その大きさより絶対に小さくはできない。さらに言うと,その電池の形に,製品の形も影響されるよね。これは技術的にもそうだけど,デザインや商品企画面でも大きな“縛り”だったんだ。リチウムイオン電池も,その電池自体は“セル”と呼ばれる普通の電池のような形で出荷されて,それをメーカーが使用するので,その大きさにはやはり縛られる。主に箱型・筒型・板型・ボタン型のセルがあって,それを製品に組み込んでいるんだ」

 うーん,そうか,携帯電話もどんどん小さくなってきたけれど,電池の形や大きさにはまだまだ縛られているみたいですものね。

 あれ? でも最近「極薄」のケータイなども出てきていますよね。あれはどうして?(D503iの記事参照

 「そう! その話がしたかったんだ。あれはね,中には……うーん,簡単に言うと,ゼリーみたいに形状を比較的自由に変えられるタイプのリチウムポリマー電池というものが入っているんだ。これがさらに進化していくと,例えば腕時計型携帯電話の,バンドの部分に電池を入れたりすることもできるようになるかもしれないよ」

 それはカッコいい! 未来の携帯電話はそうなるのかなー。

 携帯電話以外のものでも,電池の形状に縛られないようになれば,さまざまなデザインのものが登場しそうですよね。SFに描かれた未来がもう一歩近くに来た気がして,わくわくしてしまった私なのでした。

 さてさて。ということで,前回・今回は,モバイル機器にはなくてはならない「電池」についてのお話でした。

 電池にもいろいろな種類があって,それぞれに進化の歴史があるということ。そしてさらに,未来の電池はどんなものが出てくるのかな,と楽しみにもなりました。そうそう,今回の話では触れませんでしたが,もしかしたら充電のいらない携帯電話用の電池ができるかも? というような研究もあるそうですよ(4月5日の記事参照)。期待しちゃいますよね! いつか,そのあたりのことも取材してみたいな。

 それでは,また来週!もばいるのつくりかたでした!

[絵本 智,ITmedia]

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