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つくりかた
 [第5回]

携帯ストラップ編 トップランドその1

今,巷ではすごくたくさんの種類のストラップが売られていますよね。スタンダードなものから変てこなものまで多種多様。みんなが携帯電話を持っているから,ストラップは個性的にしてみたくなったりするんですよね。今回は,携帯ストラップの作り方についてのお話です。

【国内記事】 2001年6月6日更新

 こんにちはー!「もばいるのつくりかた」第5回です。みなさんは,携帯ストラップってどんなのを付けていますか? 

 かくいう私もいろいろ付けてます。シルバーのボディにぴったりだと思って,昔懐かしメタルヒーローのマスコットを付けているんですが……ものすごく不評です。どうしてかなあ?(余談ですが, 「P503iS」って,ギャバンに似てると思いません??)

 私の趣味はさておき。ということで,今回のテーマは「携帯ストラップのつくりかた」です。ストラップ作りの現場にお邪魔して,どうやって作られているのかなどを探ってみたいと思います。今回はメカの話じゃないから分かりやすいかな? とちょっと期待しつつ……新幹線に乗ってやって来ました,ここ,静岡県のトップランド。

 では,いざ突撃―!(もぐもぐ……←駅弁食べ中)

ストラップのマスコット作り方講座(特別編)

 「最初は自動車用のスキーキャリアや,携帯電話用にはプリクラホルダーなどを作っていたんですが……」と話してくれたのは,専務の谷下勇さん(写真)とデザイナーの牧野達也さん。

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 トップランドは創業30年。最初の20年間は工業系製品(車など)の部品下請け製造をしていましたが,10年ほど前からオリジナルの商品を始められたのだそうです。

「自分たちの手で,1つのものを,最初から最後まで作りたかったんです」

 企画から,デザイン,製造,そして販売まで,物を作りお客さんの手に届けるまでの全てをやりたかった,と熱く語るのは谷下さん。現在国内で販売されているストラップのほぼ100%は海外製。でも,トップランドではあえて国内で作っているとのこと。それはなぜですか? と聞いてみると,谷下さんはニヤリと笑い一言。

「面白いからですよ」

 ……か,かっこいいです。谷下さんにはモノ作りのスピリットとプライドがあふれています。

試行錯誤からのスタート

 「とはいえ,最初は分からないことばかりでした」

 何せ初めて手がけるものだけに,全てが手探り状態だった,と谷下さんは言います。

 素材1つをとっても,塩化ビニールは環境問題等も取り沙汰されているのでウレタンという素材にしよう,など,答えを探しながらの作業の連続だったそうです。

 「例えばこれだって……」 と言いつつ取り出されたのは,日本が誇る世界のアイドル,ドラえもんとドラミちゃん……が,いっぱい!。1個1個がすごく精巧です。ほほー,こうやって一度に8個,型で作るんですねー。

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 「いえいえ,これなんか,よそさんが見たらびっくりされてしまいますよ,きっと」

 え?というと……,と,ここから作り方に関しての説明をしてもらったのですが……うう,やはり,モノ作りって難しいけど,面白い!って思えるお話でした。それでは,ドラちゃんのできるまでとは?

その1 ドラえもんは8つ子?

 「ドラえもんって,体の色は青でしょ?ドラミちゃんは黄色。だから,まずはその色で本体を作ります」(谷下さん)

 ふむふむ。なんだかドラえもんのなる木みたいですねえ。ぽこぽこっと。

「何百万個作るんだから,逆算して,1回に8個取りでいこう,と決めて作り始めたんですが,その発想が逆だったんですね」

 普通,雑貨作りの感覚でマスコットを作る場合,「1個のドラえもんをどう作るか」と考えるのだとか。だから,たいてい1回に1個取り,あるいは2個取りで作るのだそうです。もともと,トップランドには樹脂整形のエキスパートの方がいたこともあって製造を決めたものの,これまで工業用の電気メーターなどの部品を作っていたトップランドにとって「マスコット」を作るなんて初めてのこと。チャレンジや改良も数多くあったそうです。

 「うちは,工業系の技術の会社なので……雑貨系とは違うんですよね。“かわいさ”から型をおこすのではなくてロジックと数値でカタを作ります。理詰めなんですよね。その精密さがよかった半面,いま思うと“なんでこんなことまでしたんだろう”と思うような手の込んだことをしてしまった面もあります」

 ということで,工業製品作りの感覚でマスコット製造に乗り出したトップランド。一見畑違いとも思える分野へ,工業技術を駆使した試行錯誤が始まりました。

その2 ドラえもんにお化粧を

 「この本体を作るところまではよかったんですが,問題は塗装でした」

 えーと,この本体の色は元々青いから,体は塗らなくていいんですよね。でも,ドラちゃんには黒いおひげも赤いおハナも……あと,顔は白いですね??

 「それはね,えー,マスキングって分かりますか? ドラえもんの色は,大雑把にいうとほとんどが青くて,その上に顔とおなかが白くて,その顔の上には黒いひげと眼と,赤いハナがありますから……ベースの青色の上に,まず必要なところに“白色”を乗せて,その上の“ひげ”と“眼”のところに黒を,ハナに“赤”を乗せます。その際に,塗料がほかにかからないように“マスク”するから“マスキング”っていうんですよ」

 「ああ,そうか,実物を見てもらったほうが分かりやすいですね」と,登場したのがこれ。なんだかタイヤキの型みたい。

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 これは別のものだそうですが,なるほど,なんとなく分かります。耳のところとかリボンのところとか。目とおひげの形に切れ目が入っていますけど……あ,分かった! このマスクは黒い色を塗る時のものなんですね?

 大きなハサミのようになっていて,これで本体をぱたん,と挟んでその上から塗装をすると,切れ目のところから目とおヒゲだけ黒く塗られるわけです。ドラえもんだったら,「青」→「白」→「その他の細かい色」とそれぞれマスクを変えて,どんどん上塗りを重ねていきます。 ふむー,よくできてるなー! と感心しきりの私なのでした。

謎の言葉「工業系技術」の実態に迫る?

 でも,先ほど「塗装が問題だった」といわれたのはなぜなんでしょう? こんなに可愛いお顔にできあがっているのに。

 「それはね,最初に本体を8個取りで作ってしまったことに関係があるんです。例えばですね,ほら見ててくださいね」

 と,先ほどのドラえもんが8個つながっている本体を,くいっとねじって見せる谷下さん。

 「樹脂で作ったこの本体ですが,このように,どうしてもズレが出てしまうんですよ。まったく同じ形にそろえるというのは至難の業です。それは1個より2個,2個より3個,数が増えるほど難しくなります。8個同時なんて,もう,大変ですよ。 その樹脂の本体にマスクをかぶせて塗装をしなくちゃならない。8個同時に。まったくズレがなく,決まった位置に色をのせるなんて,よくもまあ,こんな無茶なことを考えたもので」

 と,谷下さんは笑いながらおっしゃいます。ですが,実際はドラえもんのお顔はちっともズレてなんかいません。器量良しばかりです。 特にこのドラちゃんのおひげ,ぴし!っとかかれていてドラちゃんも嬉しそう。などと思い「おひげ,かっこいいですよね」なんて言ったところ……。

 「あ,それも工業系の生産技術なんですよ。うちは電気メーターの表示板とかを作っていましたから」

 え……? あ,それって,もしかしてこのドラちゃんのおひげって,電気メーターの針がびゅんびゅん動いているところの,あの目盛りと同じ作り方なんですか?

 「そうそう。先ほども言った通り,8個同時にズレなくひげを描く,というのは無茶なんですよ。でも,うちには工業系で培った技術がありましたからね。それで乗り切ったわけです」

 例えば,メーターの表示板の目盛りなどを作るには,正確な位置に正確な形を精密に印刷することが求められます。それを数値で細かく制御する技術が,ドラえもんのおひげを描くのにも応用されたのだそうです。

 「普通に雑貨を作るやり方で,1個取りでやっていれば,こんな余計な苦労はしなかったでしょうにねえ。でも,うちはそれしか知らなかったからねぇ」

 うーん,「それしか知らなかった」なんて言いながら,谷下さんはなんとなくうれしそうです。横に座っているデザイナーの牧野さんもにこにこしているし……うん,これはもうちょっと掘り下げてみたいです。

 ということで,今週はまず基本的な「作り方」についてお話を伺いましたが,次回はトップランドの誇る「工業系技術」の秘密と,実際にストラップが出荷されるまでのお話です。今回は文字数も尽きてしまいましたし,それについてはまた来週!

 それではまたー!

[絵本 智,ITmedia]

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