iPhoneヒットの陰で“電話機じゃないケータイ”も増加:ITmediaスタッフが選ぶ、2009年の“注目ケータイ&トピック”(ライター松村編)
正常進化した「iPhone 3GS」の登場で話題が絶えなかったiPhoneは、2009年を代表する1台として外せなかった。その一方で、「モバイル」というキーワードの変質も感じられた1年だった。
まず正直に言うと、僕が2009年に買った通信端末は、ソフトバンクモバイルの「iPhone 3GS」とNTTドコモのデータ通信端末「L-05A」(これら2台は6月27日にショップをはしごして手に入れた)、Googleの「Android Dev Phone 2」(ドコモの「HT-03A」と同じモデル)の3台だけだ。
WiMAXやiコンシェル対応機、スポーツ系端末などを利用するチャンスもあったが、2008年までのように商戦期ごとに新しい端末を手に入れることはなくなった。おそらく2010年はもっと減るかもしれない。そんな前提で話を進めていきたい。
端末、価格、アプリで市場を席巻した「iPhone 3GS」
2009年のケータイの話題も、やはりiPhoneがさらっていった。iPhone 3Gから正常進化したiPhone 3GSが発売され、「iPhone for everybody」キャンペーンで端末価格が下がったことで、iPhoneはテクノロジーに強いユーザー以外の層にも普及しつつある。
12月23日に銀座のアップルストアで開催されたiPhoneフォトコンテスト2で最優秀賞を受賞した女性は、フィルム時代からのカメラファン。フィルムカメラでも多重露光を楽しむほどの腕前の持ち主だったが、iPhoneの充実したカメラアプリを発見してすぐに飛びつき、元々の写真の楽しみをさらに広げているという。
また、子どもが通うサッカー教室でコーチを務めているお父さんは、ナイキが配信した「Football+マスターコントロール」で見られるセリエAの練習方法やスペイン代表のセスク選手のテクニックを、「子どもに見せたい」「学ばせたい」と思い、iPhoneを買ってアプリをダウンロードしたという。
家電量販店の店頭で3万円以上する電子辞書の購入を検討していた学生は、iPhoneで辞書アプリをそろえれば5000円程度で済むことから「iPhoneなら手軽に辞書を持ち運べる」と考え、電子辞書ではなくiPhoneを購入したそうだ。
2009年は端末自体の魅力からiPhoneを手に入れていた人たちに加え、App Storeが認知されたことで、「アプリ1点買い」に近い形でiPhoneデビューするユーザーが増えてきた。「端末」「価格」「アプリ」――この3つの波で市場を席巻できたことが、iPhoneが成功した大きな要因だといえる。
2010年はプラットフォームに「Android」を採用した端末が多数登場する見込みだが、Android端末もiPhoneのようにブレイクできるのだろうか。バリエーション豊かな端末の登場に期待したい。
電話機じゃないケータイ――「Pocket WiFi」「PhotoVision」
2009年のもう1つのトレンドは、“電話機じゃないケータイ”が登場したことが挙げられる。もちろん今までもデータ端末は存在しており、特にイー・モバイルが飛躍したと感じた。
その中で登場したのがイー・モバイルの「Pocket WiFi」だ。この端末は3Gの電波でネットに接続し、Wi-Fiルータの役割を果たしてくれるため、無線LAN対応のノートPCやiPod touchなどの情報端末、ニンテンドーDSやPSPなどのゲーム端末からインターネットに接続できる。
冒頭で述べたとおり、僕もL-05AをMacBook Airに接続して利用しているが、ここで問題になるのがノートPC側のバッテリー。使い始めて分かったことだが、USB接続の通信モジュールはWi-Fi接続時よりも余計にバッテリーを消耗してしまうため、料金以上に1日のバッテリー管理に気を遣わなければならない。その点、Pocket WiFiはバッテリーを内蔵しているほか、ノートPC以外の端末でも利用できるので、非常に頼もしい。
ソフトバンクモバイルから発売された「Photo Vision」も、通話機能を備えていない端末だ。パケット通信ができるデジタルフォトフレームはドコモからも発売されているが、PhotoVisionはソフトバンクモバイルの端末から電話番号でのみ、写真を送信できる仕組みを採用している。非常にシンプルで帰省土産にもちょうどよい。
ケータイ市場が飽和したことで、今後は少し視点が違った端末が契約数やARPU向上のカギを握るだろう。また、データ通信端末の多様化が、ネットワークやコミュニケーションの文化に大きな影響を与えることにも期待したい。
NECビッグローブがクラウド端末としてAndroidを採用したことにも触れておきたい。電話機としてはもちろん、インターネットデバイスとしてのAndroidにも期待したい。
身近なソーシャルメディア「Twitter」が急浮上
僕が「Twitter」を始めたのは2007年4月で、以後も細々と続けてきたが、2009年7月以降、急激にユーザー数が増加した。おすすめユーザーにリストアップされたことも一因だったが、1500人程度だったフォロワー数が半年で一気に120倍以上の18万人まで膨れ上がったから驚いている。
僕は外出先や移動中には、iPhoneアプリの「Tweetie 2」(高機能Twitterクライアント)や「BrightKite」(Twitterと連携できる位置情報SNS)を活用して投稿している。日本ユーザーの64%がiPhoneから投稿しているというアンケート結果もある(ついーたーTweeter.jp調べ)ように、Twitterを利用するのに、iPhoneは非常に相性がよいと思う。
Twitterでは、フォローした人のつぶやきが自分のつぶやきと混ざって「タイムライン」が構成されている。このタイムラインは自分で調合できる情報ソースのようなもので、自分にとって一番面白いものであり続ける。まさに人のフィードが読み取れるRSSリーダーのような存在だ。RSSリーダーは読み取るだけだが、Twitterには双方向のコミュニケーションがある。例えば自分の発言をRT(ReTweet=再投稿)して広めてくれるフォロワーがいれば、Reply(返信)して自分の投稿を勧めたり深めたりする議論も起こる。それらがすべてタイムラインの中に内包されている。
Twitterは日本では決して携帯のキラーコンテンツやサービスの地位を確立したわけではないが、携帯で利用できなければTwitterの価値は半減するだろう。2010年のTwitterは、携帯ユーザーをいかに取り込むかが、さらなる飛躍のカギを握るといえそうだ。
さまざまな人の意見やイベント情報、中継を手軽に取得できるTwitterは、最も身近でリアルタイムなソーシャルメディアだといえる。メディアとしてのTwitterに加え、個人とTwitterの関係性についても考えさせられた1年だった。
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