分かりにくいけれど面白いモノたち
紙にもiPadにもそのまま書ける驚きのペン、ゼブラ「STYLUS 2WAY」開発秘話 “失敗”を逆手にとったアイデアとは?(2/6 ページ)
「単純にボールペンのチップをスタイラスにくっつけただけでは動かなかったんです。通電しないんですよ。それで、アップルペンシルとか普通のスタイラスペンとか、色々試して、内部の接触具合とかを色々変えてみたら良い具合のところがあって、動くようになったんです」と岩間さん。
ただ、その時は、ボールが転がることで、ペーパーライクフィルムのような、少しザラッとしたタブレットの表面に書いた時に、良い感触が得られることが分かったという感じだったという。その時も、「ボールが回転しているかどうかまでは検証ができていなかった」と岩間さん。ただ、その時点で、ザラッとした面とボールペンのチップの相性が良さそうだという感触が得られた。
これらの実験が行われていた20年の時点で、ボールペンのチップを使ったスタイラスペンというのは存在していなかったし、今でもそれは珍しいだろう。まだ商品化も想定されていなかった頃から、既に先鋭的なスタイラスペンではあったわけだ。
その頃から、岩間さんが他の仕事で忙しくなってしまい、その頃、同じチームに入ってきた田中義明さんに研究が引き継がれることになる。その時点では、まだ「筆記具メーカーとしてボールペンの技術を使った書き味のいいスタイラスペンを作る」という企画だった。
ただ、当時のギガスクールの状況や、コロナ禍が終わってリモートワークが減って、よりタブレットを使う機会が増えているといった状況を踏まえた企画それ自体は評価され、本格的に商品化に向かい始めたという感じだったそうだ。しかし、まだ、紙にも書けるし、そのままタブレットにも書けるというアイデアは生まれていない。
「私も最初は、確かにペーパーライクフィルムだといい感触で書けるなと思っていて、その時のボールの動きを確認するために、顕微鏡で観察してみたんです。実際に書いてるところは顕微鏡では見られないので、ボールペンのペン先を立てて、上から顕微鏡で見ながら、ツルツルやザラザラの透明のフィルムを立てたペン先にこすり付けて動画を撮ってみたんですね。すると、ボールが回転していなくて。こんなザラザラな面でも、インクなしでボールが回らないなら、インクを入れてもボールが回らず、インクは出ないのではないかと思ったんです。社内でいう“つる抜け”という現象が起こるんじゃないかと思って」と田中さん。
ボールが回らないならインクを入れてもいい?
つる抜けとは、つるつるした面でボールペンのボールがうまく回転せず、筆記ができなくなる現象の、ゼブラ社内での呼び方。その現象自体は、これまでもボールペンのチップを作ってきた田中さんにはお馴染の、ボールペンの構造上の欠点ともいえる現象だったから、すぐにピンときたそうだ。
「ボールが回っていなかったことを会社に報告したあと、いろいろ考えていて、ボールが回転していなくても書き味がいいことは分かったし、つる抜けでボールが回らないなら、実際にインクを入れたら、紙にも書けるし、そのままタブレットにも書けるというのができるんじゃないかと、そこで思ったんです」。
私が、このスタイラスツーウェイという製品のことを書きたいと思ったのは、この本来ボールペンとしてはマズイ現象を、筆記具メーカーが“面白い”と思って製品化に向かったという部分なのだ。これは逆に言うと、「転がりが悪いボールペン」になり兼ねないアイデアなのだから。
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分かりにくいけれど面白いモノたち
ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。
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