分かりにくいけれど面白いモノたち

紙にもiPadにもそのまま書ける驚きのペン、ゼブラ「STYLUS 2WAY」開発秘話 “失敗”を逆手にとったアイデアとは?(3/6 ページ)

 もう随分長い間、筆記具メーカーは“書き味の良さ”を追求してきたと言っていい。ゼブラも「サラサクリップ」の製品名からも分かる通りのサラサラした書き味や、「ブレン」のもしかしたら言われなければ気がつかなかったかも知れないノック式ボールペンのペン先の小さなブレを抑えることで、心地よい書き味を実現するというアイデアなど、筆記具メーカーの最先端を走る存在の1つだったりしている。先日発売された、5万4000円のボールペン「ハモン」は、その集大成といってもいい製品だ。そこに、このスタイラスツーウェイだ。

ライターとしては、ゲラのPDFに赤入れしつつ、メモを取るといった使い方がメインになるけれど、案外、校正はiPad上で完結するので、やはり学習用途に一番向いている気がする

 「紙にもタブレットにも書けるというのは、社内でも最初、かなり驚かれました。チームのみんなに見せびらかして、書いてみてよ。どっちもいけるんだよみたいな感じで、かなり盛り上がりましたよ。これに気がつくまでも結構時間がかかっていて、ここまで来たのは、2011年の秋くらいです」と田中さん。

こんな風に、iPadをメインに使いながら、メモ用のノートや紙を横に用意するという使い方だと、本当に便利

 この、いい意味での柔軟性みたいなものが、ブレンやハモンなどを生み出すゼブラというメーカーの面白さなのだ。ただ、当たり前だが、ペン先ができそうという段階では製品化はまだまだ先の話。どういうチップなら紙にもタブレットにも快適に書けるのか、インクはどういうものがいいのかという部分が解決できないと、スタイラスの開発のスタートラインにも立てないのだ。

 そもそも、タブレット上では転がりにくく、紙の上ではスムーズに転がるというのは、絶対両立できない。それをどうバランスを取るのか、それはインクでどうにかできるものなのか、などなど、解決せねばならない事は多い。

 田中さんの話では、70種類くらいのチップとインクの組み合わせを試したところ、油性ボールペン用のチップが具合が良いことが分かったというのだが、では、そもそも、油性ボールペン用のチップと、ゲルインクボールペン用のチップでは何が違うのだろう。

 「油性のボールペンのインクの出し方は、インクをボールにまとわりつかせて、そのボールが回転することでインクが出ます。逆に、ジェルの水性インクは、ボールが後ろに引っ込む量が油性に比べて多いので、その分隙間がしっかり空いて、そこからドバドバインクを出すんです。流し出すのはジェルのチップ、まとわりつかせて出すのが油性のチップという感じですね」と田中さん。

 つまり、今回の製品の場合、インクが沢山流れ出てほしくはなかったため、油性ボールペン用のチップの方が向いていたということなのだ。油性とゲルのインクの特性の違いは文具好きにはお馴染の話題だが、案外、そのインクの特性からくるチップの構造の違いは知られていなかったのではないかと思う。また、そう聞くと、ボールとそれを支える部分の隙間が小さい油性の方が、iPadではインクが出にくくなるのだろうと腑(ふ)に落ちる。ただ、今回の製品のように、油性のチップでゲルインクを使うというのは、理屈からいえば、紙への書き味を損ねるということにもなるのだ。

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ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。

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