分かりにくいけれど面白いモノたち

紙にもiPadにもそのまま書ける驚きのペン、ゼブラ「STYLUS 2WAY」開発秘話 “失敗”を逆手にとったアイデアとは?(5/6 ページ)

 チップが油性用なら、インクも油性の方がボールに残るインクが速く乾くのではないかと思ったのだけど、そんなことはないらしい。万が一、ガラス面にインクが付いてしまったとき、ゲルインクの方が拭き取りやすいというのが、ゲルインクを選んだ大きな理由だという話だった。また、ボールにインクが残りにくいように調整したのだそうだ。チップが回らないからインクが付かないなんてことはないわけで、その万が一を考えるのがメーカーの製品作りだ。

こうしてiPadに付けると、スタイラスペンにしか見えないが、ノック式のスタイラスペンというだけでも、実はかなり珍しい

手を上げたのはエレコム

 そうして、リフィル部分はでき上がったが、ゼブラには電気を使う知見がなかった。それこそ、電気的なものとインクが相互に影響するかも知れないという懸念だってあるだろう。2年半かけて、ここまで来たところで、それは製品としてはまだ5~6割出来たかどうかという感じだったという。社内で全部作ることも検討されたらしいが、やはり難しいということで提携先を探したところ、手を上げてくれたのがエレコムだった。

 「電気的な部分はエレコムさんに作っていただきましたが、本体のデザインや筆記具としての使用感といったあたりは、こちらの提案をしっかり反映していただいているので、その辺は一緒に作っていったんです」と田中さん。

 しかし、このペンをお借りして、生活の中で使っていると、どうしてもゼブラの他のボールペンと比べてしまう。そして、ゼブラのボールペンとしては、あんまりいい出来じゃないなと、書くごとに感じてしまうのは、私がゼブラの筆記具を長く愛用していて、かなり好きなペンが多いからでもあるのだろう。ブレンを知ってるから、ペン先のブレが気になるし、サラサシリーズを知ってるからインクの出が気になる。

リフィルの交換は、付属のツールを使って、先端からリフィルを引き抜いて行う。上部にバッテリーなどが入っている関係上、このような形になった

 「我々も追いつけてないというか、理想に追いつけてない部分は確かにあるのかもしれないですけども、例えばブレンの機構でいえば、あれは、リフィルを先端から差し込まないから可能なんです。スタイラスツーウェイは、構造上、どうしてもリフィルを先端から差し込む構造なので、ブレンシステムのように、先端の穴の部分が細すぎると、お客様が入れづらかったり引っかかって不具合を起こしてしまったりという可能性があります。だから必要最低限の隙間が必要になっているんです」という田中さんの話もまた、もっともというか、そもそも、通常のボールペンとは構造が全く違うのだから、そこに従来のボールペンの性能を期待しても仕方ない。特に、これは、たぶん世界で初めての、デジタルとアナログをシームレスにつなぐ筆記具なのだ。

 つまり、これは「スタイラスペンが、紙にも書けます」という製品。「紙に書けるボールペンがスタイラスにもなります」ではないのだ。この違いはかなり大きいと思う。実際、最初のアイデアは「ボールペンのチップを使えば、書き味のいいスタイラスペンができるのではないか?」というところから始まっているわけで、紙に書けるというのは、その先に出てきた追加機能なのだ。

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ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。

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